農業ブランディングの参考例「男気トマト」 - 元営業マンが仕掛けるブランド戦略の真髄
私たちの食卓に彩りを添える野菜。その中でもトマトは、多くの人々に愛される定番食材です。
しかし、今回ご紹介する「男気トマト」は、単なる野菜を超えた、新しい農業のあり方を示す象徴とも言えます。
今回のブログは手島孝明氏の著書『人に届く オンリーワン ブランド』は、農業とマーケティングの掛け合わせの重要性とその成果をまとめた一冊から執筆していきます。
1. 「男気トマト」誕生秘話:偶然が生んだブランドの力
元営業マンの農業への転身
手島氏は、大手食品メーカーで13年間のキャリアを積んだ後、江戸時代から続く農家の18代目として就農しました。
この経歴が、後の「男気トマト」ブランドの成功に大きく貢献することになります。
ブランド名の意外な由来
「男気トマト」という名前は、手島氏が退職時に同僚から贈られた言葉がきっかけでした。このエピソードは、ブランディングにおける重要な教訓を含んでいます。つまり、自分たちが思いつくネーミングよりも、他者からの視点で生まれた言葉のほうが、時として強力なブランド力を持つということです。
これは、プロダクトアウトではなく、マーケットインの発想の重要性を如実に示しています。消費者の声や外部からの視点を取り入れることで、より魅力的で記憶に残るブランドを作り上げられます。
2. 独自の栽培法:技術革新がブランドを支える
無かん水栽培という挑戦
手島氏は、独学で「無かん水栽培」という独自の栽培方法を確立しました。これは、トマトにストレスをかけることで、より濃厚な味わいを引き出す栽培法です。
品質へのこだわりがブランドを強化
この栽培法は、収量は少ないものの、品質の高いトマトを生産することができます。品質へのこだわりが、「男気トマト」というブランドの価値を高め、他のトマトとの差別化を可能にしているのです。
3. マーケティング戦略:大手企業の経験を農業に活かす
直接販売にこだわる理由
手島氏は、JAや市場を通さず、直売所とオンラインショップ、そして地元スーパーとの直接取引に注力して販売しています。これは、彼の大手企業でのマーケット経験が活きた戦略です。基本的には自分から売り込みはせずに、SNSやメディア活用で問い合わせがくる仕組みづくりに尽力しています。
直売所とオンラインショップは4〜6月の3ヶ月間のみの営業です。この限定性が、商品の希少価値を高め、消費者の購買意欲を刺激しています。
SNSを活用した情報発信
Xのフォロワー約10万人、Instagramのフォロワーが1万人を超えるなど、SNSを効果的に活用した情報発信も「男気トマト」の成功要因の一つです。
これにより、ファンとの直接的なつながりを維持し、ブランドロイヤリティを高めています。
4. 個人経営にこだわる理由:規模拡大vs質の追求
家族経営の維持
手島氏は、現在も家族経営を貫いています。法人化や規模拡大ではなく、個人経営の限界に挑戦する姿勢を見せています。
規模を拡大せずに利益を上げるために、手島氏は常に効率化と工夫を追求しています。これは、大規模農業とは異なるアプローチですが、個人農家ならではの強みを最大限に活かす戦略と言えるでしょう。
5. 未来への展望:農業の新たな可能性
観光農園への挑戦
手島氏は、トマトの観光農園を検討しています。これは、農業を単なる生産業ではなく、体験型のサービス業としても捉える新しい視点です。
音楽イベントとの融合も構想中とのこと。これは、農業を文化や芸術と結びつける革新的なアイデアであり、新たな顧客層の開拓にもつながる可能性があります。
結論:農業におけるブランド戦略の重要性
『人に届く オンリーワン ブランド』は、農業におけるブランド戦略の重要性を明確に示しています。手島氏の事例は、以下の点で非常に示唆に富んでいます:
消費者視点の重要性:ブランド名の由来に見られるように、外部からの視点を取り入れることの重要性。
マーケティング戦略の活用:直接販売、季節限定販売、SNS活用など、戦略的なアプローチ。
個性の追求:規模拡大ではなく、個人経営ならではの強みを活かす姿勢。観光農園や音楽イベントとの融合など、常に新しいアイデアを追求する姿勢。
これらの要素が組み合わさることで、「男気トマト」は単なる農産物を超えた、強力なブランドとして確立されています。
本書は、農業従事者だけでなく、ブランド戦略に興味のある全ての人にとって、貴重な洞察を提供してくれる一冊です。農業とマーケティングの融合が、いかに革新的な成果をもたらすかを示す好例として、ぜひ一読をおすすめします。
農業の未来は、このような創造的なアプローチにあるのかもしれません。
手島氏の挑戦は、日本の農業に新たな可能性を示唆しているのです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。