自宅での移動は歩行だけではない〜床上移動を見る為のポイント
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臨床BATON266日目を担当します脳外臨床研究会 触診講師・触診アシスタントの橋本一平がお送り致します。
僕自身は臨床経験13年目の理学療法士です。今まで急性期、回復期、訪問、老健、デイケア、デイサービス、そして、現在は生活期の病院で日々臨床に向き合っております。その中で、患者様が自宅に復帰する為に何が必要かを考えた時に基本的な動作に加えて、応用動作や応用歩行の必要性を感じております。
そんな私が今回お送りするブログは自宅での移動は歩行だけではない〜四つ這い移動を見る為のポイント 基礎編〜としていたのですが、題名にもあるように自宅での移動は歩行だけではない〜床上移動を見る為のポイントに変更してお届けしていきたいと思います。
前回のブログでは家に帰りたいを叶える為に必要動作を考える〜坂道歩行をみる上で必要なポイント 臨床編〜を書かせてもらっていましたので、ご興味があれば一度覗いて下さい。
*気になったブログには「スキ」や「コメント」もお待ちしています。
私自身、訪問リハビリで勤務していた時に、患者様や家人様に言われたことがあります。
私自身、病院での歩行練習を思い返してみると、担当患者様が自宅復帰する為の歩行練習をしているつもりでした、、、しかし、その歩行練習に問題がありました。
実施していた歩行練習というのは、広いリハビリ室内で直線的な歩行練習ばかりを行っていました。
では、ADLの中での歩行や動作というのは、
このADL歩行や動作を駆使して、自宅内での動作が行われています。無意識で行っているので、ほとんどの方があまり意識していないことが多い動作であり、意識するとADLの中での多さにびっくりすると思います。
その中で今回は自宅での移動は歩行だけではない〜床上移動を見る為のポイント
についてブログを記載させて頂きます。
はじめに
皆さんは移動と聞くとどのような移動手段や動作を思い浮かぶでしょうか?
すぐに思い浮かぶものとして、歩行や車椅子自操があります。しかし、そのイメージは病院や施設の中をイメージしていることが多くないですか?私自身、新人の時にはそのように思っていました。
しかし、実際に自宅生活していく為の移動となると、特に日本家屋での生活では、床上移動も生活していく上で必要な動作となります。
特に身体に何かしら障害があり、歩行が困難になった際には床上移動動作は歩行に代わる屋内移動手段として重要であり、獲得しないといけない動作となります。また、歩行を行う上でも上下肢・体幹の機能を高める為にも大事になってきます。
では、床上移動にはどのようなものがあるのか??
四つ這い、膝歩き、いざり這い、臥位移動さらに、片麻痺にみられる麻痺側上肢を接地しない三つ這い移動などとなる。そして、これらの動作を行う為には、十分な身体能力、すなわち体幹ならびに四肢の運動能力が必要となります。
1、床上移動動作の種類
二点四つ這い:上下肢を交互に同時に出す四つ這い
四点四つ這い:1肢ずつ出す四つ這い
三つ這いとは片麻痺患者などの障害により一側が実用的に使用できない場合に使用する移動方法であり、一側上肢と両下肢での移動動作ことを言います。
二点一点三つ這い:非麻痺側上肢と麻痺側下肢を同時に出す三つ這い
三点三つ這い:1肢ずつ出す三つ這い
いざり動作:上肢、臀部、足部の順に進行方向へ進める動作
それぞれの床上動作を上肢・体幹・下肢に分けてそれぞれに活動性をみていきましょう!
2、上肢活動について
必要な筋肉としては上腕三頭筋、三角筋(前部)、三角筋(中部)、大胸筋があります。それぞれの筋活動を見ていきます。
全体的には、一番活動している筋肉としては上腕三頭筋の活動が高くなっており、役割としては、体重を支持することと前方移動をコントロールすることに使用される。臨床においても、歩行と違い、床上動作では上肢の活動が必要になり、その時に上肢の支持性が必要になると考えられます。
次に、三角筋(前部)は重心の前方移動をコントロールと上肢の振り出しの役割があります。床上移動においては、上肢で前方への推進力を確保するために体重を移動して進んでいくことが必要になリます。
三角筋(中部)では、バランスを保つために必要な要素になります。その中でも特に側方へのバランスに必要なります。
大胸筋においては、前方への推進力に使用し、上腕三頭筋や三角筋(前部)を使用する際に安定させるために必要な要素になると考えられます。
上肢においては、四つ這いよりも三つ這いやいざり動作のように一側上肢に負担がかかる動作の方がより、強い活動が必要になると考えられます。移動動作として使用する際には、非麻痺側の評価、そして治療が必要になリますので、是非、着目してください。
3、体幹活動について
体幹においては、全体的に姿勢を保持するのに必要な活動です。非麻痺側を右側、麻痺側を左側と想定しているので、四つ這いよりも三つ這いで麻痺側での活動性が高くなったのは、左右への重心移動時に非麻痺側での支持しているために不安定な状態になり、その姿勢を保持する為に麻痺側体幹の大きな活動が必要になります。
4、下肢活動について
下肢の筋活動については、大腿二頭筋では四つ這い、三つ這いで活動性が高くなっており、下腿や足部の床への衝突を避ける為の役割を行なっています。
大殿筋では、体幹の安定性と前方への推進力に関係しており、特に三つ這い時に活動性が高くなっている。大腿筋膜張筋では、側方への安定性に関与しています。また、四点四つ這いよりも二点四つ這い、三点三つ這いよりも二点三つ這いで活動が高くなっています。
大内転筋では全体的に下肢の安定性に必要な要素になります。大腿直筋は、全体的にそこまで大きな活動は少なく、床上移動動作の中で前方への推進力として関わっているように感じますが役割としては少ないと考えています。
まとめ
ここまで、床上移動動作の種類から上肢・体幹・下肢の活動を見てきました。床上動作は歩行以外の移動手段としては知っておくべき手段であると私自身は考えています。どうしても移動と思うと歩行や車椅子時操などが思い浮かべるのみになりがちです。私もそうでした。
しかし、自宅での移動を考えるといろんな動作の可能性や特性を知っておく必要があり、知って、理解しておくことで患者様が自宅に帰る可能性を広げることができます。自宅内での移動に悩んでいる患者様がいたら視点を広げて床上移動動作を一度考えてみて下さい。是非、今回のブログを参考に床上移動動作を見るための参考にして頂き、患者様の生活の範囲を広げてもらえると幸いです。
参考文献
床上移動動作の筋電図学的分析 理学療法学 第16巻号111~116項(1989年)
日常生活活動の分析~身体運動学的アプローチ~ 第2版 医歯薬出版株式会社
次回の記載するブログは自宅内での歩行だけが移動ではない〜四つ這い移動を見るためのポイント 基礎・臨床編〜で記載していきますので、是非、購読していただければ幸いです。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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