拘縮肩に対してのアプローチ 〜前面の疼痛に対して〜
おはようございます(^ ^)
本日も臨床BATONへお越し頂き、ありがとうございます。
450日目を担当するのは理学療法士のゆーすけです。
拘縮肩における可動域制限、拘縮肩における肩前面の疼痛に対してのアプローチで悩む人。
「肩前面の疼痛に対してどのような原因があるかわからない…。肩前面の疼痛に対してどのように治療展開したらいい??…。」
こういった疑問にお答えします。
★はじめに
肩関節痛と可動域制限を主訴に来院され、肩関節周囲炎の診断でリハビリ処方されるケースは多いと思います。
肩関節周囲炎の診断はおりていても、疼痛を発生させている責任組織が特定されていないことがほとんどで、リハビリ場面で評価していくことが求められます。
その中でも、肩前面に疼痛を訴える患者様を比較的多く経験してきました。
今回は肩前面の疼痛の考えられる要因とそのアプローチについて考えていきたいと思います。
★肩前面の解剖
肩前面の疼痛は安静時痛、外旋時の伸張痛、挙上時のつまったような疼痛などが挙げられます。
どのような理由が考えられるでしょうか?
肩前面の解剖をみていきましょう。
肩前面の最も表層部分です。
外側から三角筋中部線維、三角筋前部線維、大胸筋鎖骨部線維の順で並んでいます。
次に、三角筋前部・中部線維をとり外した図です。
三角筋前部線維の深層には上腕二頭筋長頭腱があります。
次に肩前面における筋組織以外の組織をみていきます。
肩周囲の靭帯は、上腕骨・鎖骨・肩甲骨の骨をつなぎ、肩関節の適切な動作を支える機能を果たします。
もう一つ、腱板疎部という部位もポイントになりますので押さえておきましょう。
腱板疎部とは、棘上筋腱の前部線維と肩甲下筋腱の上部線維の間隙をいい、表層を烏口上腕靭帯、深層を関節包によって構成されています。
★肩前面の疼痛を探る
診断名=疼痛の原因となることは少なく、リハビリ場面で責任組織を追求していくことが臨床の中では大半です。
まずは肩前面の解剖を整理することで、どんな組織が責任組織になり得るかを把握することが重要です。
最も表層にある筋肉、三角筋前部線維・大胸筋鎖骨部線維は両筋を触り分けることがポイントになります。
触り分けのポイントは、大胸筋三角筋三角から内側を大胸筋鎖骨部線維、外側が三角筋前部線維となります。
肩関節伸展・外旋位で両筋に軽く圧を与えて、疼痛の有無を確認していきます。
上腕二頭筋長頭腱は、肩関節伸展・肘関節伸展位から肩・肘屈曲させた際の疼痛の有無で確認します。
烏口上腕靭帯は腱板疎部とほぼ同部に位置しています。
烏口上腕靭帯や腱板疎部周辺部は滑膜が豊富で炎症が波及しやすい、瘢痕化に伴って物理的特性が変化しやすい、疼痛閾値が低いと言われています。
腱板疎部が瘢痕化すると、上腕下垂位(1st)での外旋が著しく制限されます。
逆に内旋では緩むので、内旋と外旋での疼痛の有無、三角筋前部線維や大胸筋鎖骨部線維での圧痛が無い場合か、もしくはより深部での疼痛が強い場合はこの腱板疎部による疼痛が考えられます。
★前面の疼痛を伴う拘縮肩へのアプローチ
三角筋前部線維や大胸筋鎖骨部線維が責任組織である場合は、疼痛の程度によりますが、いわゆる炎症期のような疼痛が強い場合は負荷を極力少なくした中での反復収縮・弛緩をオススメします。
肩関節軽度伸展・外転・外旋位から屈曲・内転・内旋方向へ筋収縮を促します。ここでは抵抗をかけず、自動介助での運動から開始します。
拘縮期以降ではストレッチを行っていきます。
上腕二頭筋長頭腱が責任組織である場合は、上腕二頭筋に負担を与えないことが重要となります。
肩関節内旋位で肩関節を屈曲させると上腕二頭筋長頭がインピンジし、かつ重量物の重みが上腕二頭筋にかかり負担となります。
具体的にはADLの中で物を持つ際に、肩関節を内旋位で持ち上げないことを指導しています。
腱板疎部が責任組織である場合は、癒着していると著明な外旋制限となります。
下垂位(1st)外旋では0°から強い抵抗を示す症例様も珍しくありません。
そのような場合は、腱板疎部のストレッチを行います。
方法としては、肩甲骨の前傾を抑制しつつ、外旋を加えながら伸展方向にストレッチしていきます。
注意点としては、腱板疎部周囲は受容器が豊富に存在しており、同部への刺激を入れる際には繊細さが求められます。
疼痛が強い際は、強いストレッチではなく軽いストレッチで留めることをオススメします。
★最後に
いかがでしたでしょうか?
肩前面の疼痛は比較的多く経験しますが、解剖学的な特徴を知るまでは大胸筋鎖骨部の短縮・過緊張としてのアプローチをしていることが自分自身多かったように思います。
アプローチに至るまでの責任組織を特定していくことが重要と考えています。
その中でアプローチした後の疼痛の変化から、責任組織の妥当性を評価し場合によっては責任組織の見直しをすることもあります。
その過程がアプローチの精度をあげていくことに繋がります。
今回の内容が少しでも臨床へのヒントになれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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