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『茜(tipToe.)』の歌い出しの話:追記 (2023/2/11 ukka 茜空生誕ソロライブ「20 -星雲之志-」より)
以下の文章は、昨年12月にあげたブログのあと、
”tipToe.『茜』を、ukka茜空が生誕ソロライブでカバーしたよ"
ただそれだけのことを、書きなぐったものです。
生誕ソロライブのことについては、いつか、いつか…必ず…
(※すべて敬称略で失礼します)
■代官山 UNIT(2023年2月)
2023年2月11日。
茜空ハタチの誕生日までちょうどあと30日。
すっきりと晴れ渡った空のもと、今年の生誕ソロライブは行われた。
(※ukkaの生誕ライブは、誕生日が近い2人のメンバーの、おおよそ中間くらいの日程で、それぞれが1部2部として行うのが通例となっている)
昨年の生誕グッズ(ロングスリーブTシャツ)の上に、ukkaの新作パーカーを羽織ると、ほんの少しだけ汗がにじむような陽気。
昨日、金曜日は雪模様だったというのに。
2017年6月の桜エビ~ず時代のワンマンライブ以来、かなり久しぶりとなる代官山UNIT。
隣のビルのセブンイレブンを目の前にして、歩道をふさがないようファンが車道沿いにだらだら並ぶ様子は、昨年(神田のどこかしらスマしたビル)とは違う、あの頃の「ライブハウス」の雑踏に”戻ってきた”という気分を高揚させてくれる。
ukkaが主催するライブとしては、久しぶりに、座席なし/オールスタンディングで行われるということもあって、整理番号とにらめっこしつつ、さてどこに潜り込もうか、そんなことを考えながら開場を待つ。
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今回の生誕ソロライブは、事前に何度も配信でファンに語りかけた昨年とは異なり、殆ど内容は明かされなかった。
かつてグループとして披露したカバー曲を歌うということと、ライブ演出の協力として「赤」「青」のペンラを用意しておいてほしい、ということだけが、インスタのストーリーでひっそりと告知された。
ここまでのお膳立てがあって、さあ、今年は『茜』は歌われるのか? それをどういう表情・どういう感情で茜空は立っているのか。
開場して、早足でフロアへ向かう階段を降りながら、思いをめぐらせる。
『茜』が歌われるとしたなら、その歌い出しを腕組みでもして、真正面から見据えてやろうじゃないか! そんな妙な意地を張って、ステージ真正面、ゼロズレに立ち位置を決める。
開演を待っている間、客入SE曲を聞きながら、ふとスマホの画面に目を落とす。
この週の月曜日、たまたまこのタイミングで、tipToe.宮園ゆうかから送られてきた、メッセージカード(昨年12月の生誕特典)の一節を、ふと読み返してみる。
1期さんが大切にしてきた繊細な曲だったから、2期の魅せる茜をファンの方がプラスに捉えてくれるだろうかと思ったこともあったんだ。
表現が難しい曲だと思っていて、切なさの中に想いの強さをバランス良く込めないといけない曲だし、自分の表現の振り幅にそれが備わっていないとすら感じたの。だから沢山曲聴いたし、表情や踊り方も、本番でしっかりと出すために練習したんだ。
今でこそ2期の歌う茜を素敵だと言ってくれるし、みんな良いねと言ってくれるから、自分の今できる表現を自由にすればいいんだって思えるんだよ。
ほどなくして開演時間となった。
そして、2曲めだった。
「君のことが好きなんです」と
夢の中でなら言えるのに
今日も明日も君に会えない
アイスクリームは溶けてしまった
正面から見据えていたにもかかわらず、ほんの一瞬、目線を下に落とした。
それがなぜだかはわからないけど、あれだけ待ち焦がれていたのに、ただただ無警戒だった自分に気づいた。
「夢の中でなら言えるのに」で顔をあげた。
ほんの少し苦しそうな表情で歌う姿が目に飛び込んでくる。
思わず右手をステージに向かって突き出す。
客席はただただ静まり返っている。
歌い出しのフレーズのあと、遅れて奏でられるイントロで、ほんの一瞬だけ、茜空と目があった気がした。
「ふ」の形に口元が緩んだように見えた。
それは、去年7月の渋谷duoで
「この会場、さっきまでのライブはtipToe.さんだったんだってね」
と声をかけてきたときと同じ表情、ステージを通じて共犯をいざなう悪い表情だった。
19歳の茜空は、赤く照らされた照明の中で、ただただ自分の表現の振り幅をいったりきたり試している最中のように見えた。
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『茜』に揺らされる感情が、ライブハウスの空気に少し馴染んだころ、曲は2番にさしかかった。
放課後のグラウンドの声と
茜色に染まる教室
下手舞台袖に立ち、まっすぐ前を見据えて、丁寧に一音一音をはっきりと歌う姿に、そこに、もう苦悶の表情は浮かんではいなかった。
いつものように自由に歌い、感情の波をフロアに伝えてくれる茜空の姿がそこにあった。
本間翔太によると、『茜』は、2年生の2学期を想定して作られた曲だという。
茜は、
— 本間翔太 (@btrstaff) April 15, 2019
1年生1学期の"秘密"(回想として出てくる)
1年生2学期の"クリームソーダのゆううつ"
に続く2年生2学期の話で、恋愛三部作の最後の話です。
是非この順でプレイリスト組んで聞いてほしい。
『秘密』『クリームソーダのゆううつ』から続いてきた淡い恋心は、この曲とともに成就することなく、その後のことは一切語られていない。
この日、自身が編集した映像で、インタビュー形式で過去を振り返りながら、コロナ禍の中でむかえた2020年、高校3年生のときに、それまでのグループの勢いが急にストップしたことを淡々と語った茜空。
彼女にとっての高校2年生、高校3年生の2年間は、「君」は、青春を彩るものになっていただろうか?
もう二度とやっては来ない、一瞬の風景。
オレンジ色の照明が舞台奥から照らされる中で、いま、茜空は何を思いながら歌っているのだろう? そして、この夢の続きはまたいつか語られるときは来るのだろうか?
後日の生誕ソロライブを振り返るブログで、茜空は、セトリ前半が「茜色(≒赤)」を、後半が「空色(≒青)」のイメージで配置したと振り返っている。
そして、これまで「太陽のような存在でありたい」と言ってきた自分が、いまは「月のような存在になりたい」と思っているということも明かした。「月は昼にぽっかりと浮かんでいるときもあるから」
「ぼんやりと浮かんでいることで、みている方角を指し示す道しるべになることもあるから」
そんな人にもなりたい。
blue moon rising.
『茜』を作詞作曲した彼方あおいは、その5ヶ月前に、同じように“2年生"へ向けて提供した『blue moon.』の中で、夢の中でしか会えない「君」についての想いを、月夜のプールをモチーフに描いている。
ダンスを踊った
ダンスを踊った
僕らダンスを踊った
君がきれいすぎるから
この3年間、“とにかくよく泣いた”とMCで語った茜空。
それでも、この3年間ダンスを止めなかった。
いつかみた教室の夕日の記憶がおぼろげなものに変わって、じっと空に浮かびつづける月が、弱いけれどはっきりとした光を照らすころ、それでもきっと踊り続けている茜空は、どんな表情を浮かべているだろうか。
「いま」を一番大事にしている茜空が、「過去」を振り返ること。その中には、やっぱり、なんらかの事情でお別れしなくちゃいけなかった人や、いまこの場所にはいない人への眼差しが向けられている。
3年間。
それはtipToe.メンバーの活動期間として定められた期間でもある。
『茜』は、感情の大きなうねりとともに終盤にさしかかる。
「君に届かない僕のメロディ」と、右手を精一杯のばす茜空。
どこか、でも届かないことをあきらめたように、のばした指先から、砂がこぼれ落ちていくような、そんなように見えた。
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後日の振り返り配信で、(”記憶違いかもしれないけど”、と前置きした上で)はじめて明かされたこと。
「(2019年12月の)tipToe.さんとの対バンのとき、たしか楽曲交換で、私が『茜』を歌いたいです、てお願いしたんじゃなかったかな? 自分の名前がタイトルに入っている曲って、やっぱり特別じゃない? そしたら『いいですよ』って」
(※ここに記すにあたり、先日、tipToe.の物販エリアに立っていた本間翔太に手が空いているときに聞いてみたところ、どうやらこの茜空の記憶は正しかったようで。楽曲交換に「茜」をと聞いて、本間翔太は「ぜひ」と即答したという。)
この配信で、また、次々にメンバーに歌い継がれることこそが、自分にとっての『茜』の魅力だと語った上で、1人で歌うためにはと、かぶせや音の編集などの加工を行ったことを明かした。
「君のことが好きなんです」と
夕焼け空に溶かしてみる
6人で歌い継がれるステージを、2期tipToe.で何度も繰り返し見てきた自分にとって、1人で「誰そ彼」どきのオレンジ色の照明とともに歌い終わる立ち姿は、そして、少しずつ暗がりに誘われる演出は、逆にまぶしすぎるようにも感じた。
そうして、音が止まって、最初のMCが始まった。
これまでのテンションがまるで嘘かのように、表情を崩しながら、首を少しかしげながら客席に《てへっと》語りかける茜空。
(あ、緊張していたんだろうな…)
このライブが、すでに脈を打ち始めていることに、そこではじめて気づいた。
その後の話については、またいずれ。