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結城りなのことを大好きになった日④【結】 (2024.10.7 #SASUKEアイドル予選会 現地観戦記)
(以下、グループ名・メンバー名については、全て敬称略で失礼します)
結城りなは、いつから会場に戻っていたのだろう?
YouTubeの映像を見返すと、この種目10人目の白石まゆみ(SWEET STEADY)が挑戦している際に、結城りなが横になっている姿がほんの少し確認できる。そのそばで芹澤もあがしゃがんで付き添っている様子も映っていた。
ただし、結城りながいる場所は、応援席[赤いシャツを着ている一角]からは物理的に視界に入れるのが難しい位置だった。
(「SASUKEアイドル予選会」の現地観戦記③です。今回はYouTubeで順次公開されている全6回<予選会>シリーズのうち、第6回後半の観戦記となります。)
前回の観戦記も、よろしければ↓
■主人公
正面スタンドから大きな拍手が起こり、その数秒後、スタートラインに向かう結城りなの姿がゆっくりと視界に入ってきた。
周りの仲間たちと長い沈黙を破るように声を張り上げようとしたが、最初の一瞬、どう声を出せばいいのか分からなくなっていた。
結城りなは、まるで何事もなかったかのように《少なくとも自分にはそう見えた》、第1種目に挑むときと同じような満面の笑みを浮かべていた。この風景が楽しくてしょうがないというように両スタンドを見上げていた。
黒いヘルメットと膝のサポーターを着用すると、より一層、かけっこが大好きな少年のようにも見える小柄な彼女に、総立ちで声を限りに叫んだ。
赤Tシャツを作ろうと言っていた仲間も、立ち上がっていた。いつものような野太い声は、涙に邪魔されていたけれど。
正直なところ、順位がどうということは頭になかった。
ただただ、クライマックスの『そりたつ壁』にチャレンジする姿を間近で見ることができる機会がありがたかった。
一瞬だった。
目の前をあっという間に駆け抜けていった結城りなは、本当にあっという間に壁を登りきった、やっぱりまるで何もなかったかのように。
彼女の記録は19秒75、12人中2位という記録だった。
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”普段はあまり声をあげない”結城りな推しが、「りな!」なのか「ukka!」なのかすら、もはやわからない雄叫びを響かせていた。
キミたち、そんなに大きな声を出せたのね。
第1種目の優勝以来だから、かれこれ2時間ぶりにインタビューを受ける結城りな。もうずいぶんと前の記憶。
やはり、とにかく楽しくて仕方ないという満面の笑顔でモニタ越しに映る彼女。
それと対照的に、すすり泣く声すら聞こえる応援席。
こういう感情になにか名前がついていたっけ?
(※「り」「な」のボードを振り回して、結城りな応援席に合図を送ってくれた<前回noteをご参照ください>オタク仲間に、このときの一部始終を後日聞きましので、ここに書き記しておきます。)
”第4競技が始まって、もあちゃんは、しばらく他の選手と応援メンバーが待機しているエリアのあたりにいたんですけれど、ふと見るといなくなってて…”
” そうこうしているうちに、おそらく控室につながっているであろう(体育館入口に近い)扉ではなく、反対側の扉から、もあちゃんとりなちゃんが入ってきたんですよ。”
”そのふたりの様子とは関係なく競技は続いていましたけど、その奥で体育館の壁際をゆっくりと歩いている彼女の姿は、まさに静かなヒーロー? わいら大興奮! たぶんそっち側(結城りな応援席)スタンドでは見えないだろうと、一生懸命手を振りましたよ!<笑>”
”しばらく待機場所の椅子の横に立って、もあちゃんや付き添いのトレーナーと話してたけど、そのあとは壁際にいって座り込んだり寝そべったり。もあちゃんや他の選手の陰になって、具合悪いのか休んでるのかストレッチしてるのかは見えない。”
”遠目に見えるのは、カメラマンとメディカルスタッフ? あと、横でヘルメットとプロテクター持ったスタッフも居て、ギリまで走るかの判断待ってるみたい。”
”あと残り選手が2人?3人?ってタイミングで、りなちゃんがプロテクター装着! うおおおおおおおおお~!最後の出走?佇まいはまさにヒーロー!!満身創痍の最終決戦!"
■最小得点差
会場からは、紛れもなくこの時間帯の主人公に、惜しみない拍手が送られている。
その直後の場内アナウンスで、第3種目までの累計ポイントで、結城りなは暫定4位だった事を知る。
「青Tシャツの子が失格で0ポイント…?ということは、もしかして、逆転の可能性があるのでは?」
人間って強欲なもので、結城りなが無事に戻ってきた安心感で満たされていた心に、自然と「もしかしたら…」という期待までもが芽生えてきた。
ずいぶんと進行が押しているのだろう。
慌ただしく、選手が体育館真ん中に並べられて、結果発表が行われる。
まず3位の選手名が読み上げられた。4種目めで脅威のタイムを叩き出した清司麗菜(NGT48)だった。
150ポイントというアナウンスを聞いて、頭の片隅に「おおよそ同じくらいの獲得ポイントのはずだ」という計算が走った。
1位なのか2位なのか――会場が静まり返る中、ためにためたアナウンスで告げられたのは「第2位、ukka 結城りな!」という言葉だった。
応援席のみならず、会場中からふたたび大きな拍手と歓声が送られ、心からの敬意が捧げられた。
結城りなは、満面の笑みとともに、両手を合わせて「ごめん」という表情で我々の方を向き直った。
このあとに発表されたトップの伊藤実希(SKE48)との差はたったの5点だった。
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■このままおわりじゃ なんかぜんぜん
慌ただしく閉会式が終わり、会場には終会が告げられた。
ファンたちは三々五々体育館を後にし、外では集団で記念撮影をする姿もちらほらと見られた。
そんな姿を横目で見ながら、心に湧き上がる想いをうまく言葉にできず、ぽつりぽつりとしか話せない自分たちがいた。
写真は一枚も撮らなかった。
暗がりの中、「じゃあ、あっちに車停めてますから」と遠征でやってきた若いオタク集団がいなくなった。
その場にいた残った3人で、駅まで20分も歩く気力はもうなかった。
神奈川方面まで帰りつける終電の時間も迫っていた。
タクシーを拾って駅まで向かうことにした。
「なにかの大会ですか?」という運転手に、詳しく何かを説明する気力は残っていなかった。
駅のコンビニで、缶ビールを買った。
この時間帯の上り(東京方面)の電車は、思いのほか、運転間隔に開きがある。
がらんとした柏駅のホームで、なんともいいようのない乾杯をした。
「5点差か…」
缶を半分ほど飲み干したとき、結城りなのXの投稿通知が来た。
画面に真っ先に飛び込んできたのは、屈託のない笑顔…ではなくて、小学生が徒競走で1番にゴールを駆け抜けたときに見せるようなポーズと…ドヤ顔だった。
本人は真剣なつもりなんだろう、きっとと思えば思うほど、吹き出してしまった。ごめんよ、結城りな。
上野行きの常磐線快速に乗り込む。
まだ少しだけ残った缶ビールを片手に持って、ガラガラの車内でドッカと腰を下ろす。
めったに向こうから連絡なんてない、風見和香の応援に来ていたエビオタ友達からきたLINEの通知が、画面に表示された。
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ほろ酔いだったせいからか、その日はじめて涙が出た。
たぶん思い描いていたものとは違うものを見ることになったけれども…いい一日だったな。
日暮里で仲間と別れて、ひとり京浜東北線に乗り換えた。
さっきの結城りなのXのポストにリプライを送った。
かけられる気の利いた言葉なんてなかった。
ただ、「お疲れ様」と「最後まで笑顔を絶やさなかったことに対する感謝」だった。
多摩川を越えて、川崎に差し掛かろうとする頃、リプライに見慣れない「いいね」の通知があった。
結城りなからだった。
今日はここまで。