![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65275673/rectangle_large_type_2_686831ee3cc873fb7d7792916eade42a.png?width=1200)
アボジの作品 #4
このエッセイは、2017年、約4か月にわたり韓国の有機農家さん3軒で農業体験取材を行い、現地から発信していたものです。これから少しずつnoteに転載していきます(一部加筆、修正あり)。
2017/05/12
今朝、トマトのハウスに行くと、作業の前にトマトさんのアボジがこんなものを見せてくれた。
1年前からタンクの中で発酵させてきたトマトだという。上からギュッと押すと発酵液がジュワッと染み出してくる。この発酵液と水を混ぜ合わせてトマトの根元にかけていくそうだ。
「トマトの中で1番栄養があるのはどこだと思う?」と聞かれ、はっとした。トマトの実、そのものだ。ひび割れして販売できなかったトマトをこうしてタンクに貯め、翌年のトマトを育てるための栄養分にするというのは、無駄がなく、とても理にかなっている気がした。
昨日、農園を訪問した人たちに、トマトさんがこんな話をしていたのを思い出す。「“これは自分の作品だ”と思って作物を作っている農夫は、ほとんどいないんじゃないでしょうか?」
トマトさんはハウスの中で作業するアボジの背中に目を向けて、「うちの農園にはそんな方がいますよ。あそこに」と笑った。
アボジは多くを語らない人だが、研究熱心な姿や農園での仕事の様子を拝見する限り、熟練した職人であり、遊び心を持ち続けているアーティストのようでもある。
4年前に作ったという家の庭は、アボジがデザインしたそうだ。いつどの時期に何の花がどんな風に咲くか。計算しつくして、木や花が植えてある。
下の写真の植木は、韓国の地図をイメージして作ったんだとか。オモニは濃いピンクの花を指さして「この辺が済州島ね」とにっこり。
ジミンさんが「これはハートの花」と教えてくれた。韓国では금낭화、日本ではケマンソウと呼ばれているようだ。
今日はトマトを収穫するほか、山盛りのビーツを洗い、ひたすら細かく切っていった。ビーツはピクルスやサラダで味わう他、リンゴと一緒にミキサーにかけてジュースにすることもあるという。今日細かく切ったビーツは、砂糖をまぶして漬けるそうだ。
16時半頃「チジミ(부침개)を焼いたので食べよう」と誘われ、アボジ、オモニ、ジミンさんと4人でひと休み。Cassというビールと共に、セリやタマネギの入ったチジミをいただいた。
トマトさんちのご飯は、何を食べても本当においしい。これまで、韓国に来たら常に外食で、それでも毎回「おいしい」と感じていたけれど、やはり家庭料理の味にはかなわない。しかも、すべて自家製の有機野菜。食べることが豊かである生活は、体も心も潤してくれる気がする。今日もチャルモゴッスムニダ(ごちそうさまでした)!
▲エッセイ『韓国で農業体験 〜有機農家さんと暮らして〜』 順次公開中