Hookah Hazeとランダムウォーク
最近プレイした、シーシャを通してヒロインたちの心に触れてゆくアドベンチャーゲーム:Hookah Haze(フーカーヘイズ)の感想です。
筆者はシーシャどころかたばこもやったことありませんが、発売前情報をチラ見して引っかかっていたタイトルだったのとキャパ的にやるゲーム一個挟めそうだなとかいうふらっとしたクッソテキトーな理由で手に取りましたが、我ながらファインプレー。やってよかったなというゲームでした。
ランダムウォーク
=(ROUND(2*(RAND()-0.5),0))+A1
エクセルでこんな感じの数式を2列に書いて、そのまま下にダーしてグラフを書くと、次のようなランダムウォークのグラフが書ける。(n=3000くらい)
エクセルの更新ボタン押しているとこれが次々に変わっていって、あと1回、あと1回変化させたらなんか面白い形になるかも。と、飽きない姿を見せてくれる。
これをさらに細かく連続的にしたブラウン運動は、煙の動きを表すのによく用いられる。
頭の中である程度補完をする余地のある本アドベンチャーゲームを遊びながら、キーとなってくるシーシャの煙を思い浮かべつつこんなことを考えていた。
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ゆらめく焚き火をずっと眺めていられる人、波打つ海岸をずっと眺めていられる人、空をずっと眺めていられる人、それぞれいると思います。なんか見ちゃうとか、落ち着くから、動きとかが適度にランダムで飽きないから、といったことが、強力ではないにしても理由としてあげられるのではないでしょうか。
そこにきてこのHookah Hazeですが、同じような効果をもたらしてくれて、ここにいるのが心地いいと思えるものが挙げられると思います。
例えばシーシャを吸ってはく煙の動き、アクアリウムの音、さかなの動きを想像してみる、外で降っている雨の音…
こういった激しくない偶然性が、心のどこかでぼんやり(次どうなるんだろう)と思わせてリッチな時間を過ごさせてくれるのかな、と考えています。
まあそもそも偶然性に一切任せず計画的にチルするやつなんていますかっていねーか、はは(いるかも?)
アートワーク
このゲームを手に取ったのも偶然的なところがありますが、その偶然のおかげで、芸術的なドットイラスト、個性的で弱くて魅力的なキャラクター、そしてなにより素晴らしい聴覚的な効果を体験することができました。
シーシャやアクアリウムのゴポゴポいう音、炭カンカン、そしてシーシャフレーバーを選ぶ時の透明感のある打楽器的な音が非常に楽しく、BGMのテンポに合わせてDJプレイ的に暫くSEを楽む、なんてこともしていました。
そして、テーマソングの「Hookah, whoo!」、「フーカー」っていう、水タバコのゲームだけに吐息音にも聞こえるフレーズを効果的に使っていて音的に面白かった。
悩みや弱さを「吐き出し」て煙のように「軽く」するっていうテーマとピッタリだと思えました。
赤面銀髪ショタ推進委員会(性癖丸出しだけの章)
まあ、あのですね、主人公の炭木トオルくんちゃん、最初っから整った顔と長いまつ毛、きれいな銀髪でかわいいとは思っていたんですがね、、、その全体的に色素の薄いところに頬を赤らめられたときのかわいさといったら…ね…
あとは多くは語るまい
願い;アドベンチャーゲームにおけるプレイヤーの立ち位置(ネタバレ度・高)
ヒロイン3人にはそれぞれハッピー・ノーマル(ビター寄りに思う)・バッドエンドが用意されていて、通常だと3人のうちハッピーエンドにできるのは1人だけ。
ほんまにとおるつみぶか
トゥルールートの存在を知るまでは、ヒロイン3人のうち誰か一人しか幸せにできず、他の2人の行く末がいたたまれない、歯がゆい、渇望感の残るゲームだなと思っていました(まあそれはそれで味があるのかもしれない)。
ヒロイン3人それぞれのハピエンルートを見ると、通常モードとは別にメニュー画面にトゥルールートが出現するようになるのですが、そのルートをゲーム的にわざわざプレイヤーの操作で選ばせていることがちょっと意義深いなと感じました。
ヒロイン3人だけでなく、今まで主人公トオルくんちゃんを操作してるからって盲点になっていた、プレイヤー自身が彼の幸せを願うことでルートが開けたのかなと思っています。
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助かる見込みの低い病床の主人公:「炭木トオル」くんちゃんの最後の願い、シーシャとアクアリウム、彼の「好き」が詰まった空間をつくる。
ーそれだけなら一人だけで楽しむこともできただろうに、お店を開いて同好と触れ合うことを選んだ。
まあ、お店の店長を提案したのは医者の先生だけれど、それを聞いて、「わずかでも何か変えたい」と無意識に思っていたのかもしれないし、「最後くらいやってみてもいいか」という気まぐれだったのかもしれない。
痛み止めを処方されて病院から外の世界に出るものの、そこには様々なランダム要素がついてくる。開店初日の、ヒロイン「愛上あむ」とのアクシデント的な出会いに象徴されるように。
けれども、「好き」を明確に持ち出してそこに飛び出していったのがポイントで、偶然だろうがなんだろうが一度「好き」で繋がったのなら、それだけで他人から好かれる・幸せを願われるっていう生きる意義があるのかなと感じた。
やっぱりね、通常ルートでの3人のヒロインとのやりとり見てて、プレイヤーがトオルちゃんを好きになるように構成されているような気がします。
最後に
ゲームそのものにはプレイに関わるランダム要素はほとんど存在しないが、プレイヤーのゲームプレイ時の感性だったり、ストーリーの受け取り方だったりにはランダムの概念(というか、不定形みたいな感覚)は無意識的には存在していて、やっぱりそういう点を踏まえてランダムの概念は価値を生むなあと思えるゲーム体験でした。
また、プレイヤーがキャラクターを好きになることで、彼・彼女らを救うことができるというアドベンチャーのインタラクティブを改めて意識することができて意義深い体験になりました。