「たそがれ」を書けるようになる日まで
読み終わった瞬間、「ああ、これは私には書けない」と思った。
若松英輔の『悲しみの秘儀』を読了したあと、一番はじめに持った感想だ。
「書けない」とは、技量の問題ではない。
自分の中に存在するものは、訓練さえすればいつか書ける。
逆に言えば、自分の中にない感情は書けない。絶対に。
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「人生には悲しみを通じてしか開かない扉がある。」
第1章に書かれたこの言葉を皮ぎりに、私たちは彼の悲しみの扉を開く。
このエッセイ集は、若松英輔が妻を亡くした悲しみとの伴走の軌跡である