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#小説 記事まとめ

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2023年6月の記事一覧

「おにぎり研究家」(4546字)

 神童、非凡、天才、鬼才、私。  幼い頃から人並み以上に料理が得意だった私は、本気で自分のことをそんな風に思っていた。  物心つく頃には、料理上手な母の背中越しに調理のイロハを習得していたし、小学校も半ばを過ぎる頃には、自分のスパイス瓶のスペースを台所に持つほどに成長していた。当然手際も良かったけれど、何よりも味の足し算引き算に関しては、我ながら天性のものを感じていたほどだ。  圧倒的な全能感。何者の追随をも許さぬ、絶対的な才能。  小学六年生にして、私は料理人としての自分の

銀河売りと涙の宝石

銀河売りさん、銀河売りさん。 背中から声をかけられて、その男の人は振り向きました。 夜より黒いシルクハットに、闇より黒いロングコート。 ものすごく背が高くて、とってもとっても痩せています。 何ですか、こんな夜中に、慌てて私を呼ぶなんて。 男の人に声をかけたのは、灰色の服を着た女の人でした。 若くも年寄りでもない、太っても痩せてもいない人。 顔がまんまるに腫れているのは、夕立よりたくさんの涙を流したせいです。 銀河の2か所を、私に売って欲しいんです。 女の人はそう言っ

麦本三歩は続きが好き

前書き:住野よるです。僕が趣味で書いてる小説に「麦本三歩の好きなもの」というのがあり、第一集と第二集が出版されてます。いずれ次も出すと言いながら時間がかなり空いてしまったので今回、皆さんに三歩が生きてるのお知らせするため短めのを公開してみます!急に平日の真昼間に!いつまでかは分かりません!これはいつか出る第三集の最初に収録予定ですので、第二集の後の話です。趣味だし誤字脱字あるかと思います&本になる時に変更点あると思いますが、もしお暇でしたら三歩のとある一日を覗いてみてください