「名探偵」(410字)【#毎週ショートショートnote】
「ようこそ」
恰幅のいい紳士は、品よく僕を招き入れた。
口元に髭をたくわえたその人は、三つ揃えのスーツに身を包み、丸みのあるハットを被っている。そう、まさに。
「……ポワロ」
ぼそりと僕がこぼすと紳士探偵はぱあっと嬉しそうに相好を崩した。が、ハッとしたようにもとの紳士然とした顔つきに戻る。
僕は依頼内容を説明した。
探偵は、ふむ、と頷いて目を閉じた。
それから、10分、20分。
探偵は家のさまざまな場所を歩き回りながら、なんとも深い考察を巡らせている様子を見せる。けれどどれだ