打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(ロケ地を訪ねた日のこと)
私がまだ映画の学校に通っていた頃、同級生の友人とこの映画のロケ地に行ったことがある。
授業が終わり友人とカフェでおしゃべりしているところ、ふと映画の中の飯岡町が明日花火大会があることを知ったのだ。
すぐに行ってみよう!と言うことになった。
だけど何となく一抹の不安があった。
その友人である。
いつもつるんでいた3人の中の一人ではあったがこの子が私はちょっと怖かったのだ。怖いと言うと変だけど、不気味な感じで気を許せないのだ。
私より4歳くらい年下であったが、クラスでは落ち着いていたし、友人もたくさんいた。
でも私には気まぐれに声を掛けてきてはプイッとどこかに行ってしまい何となく嫌な気持ちにさせられることがよくあった。
なのにこの友人はしょっちゅう私の家で泊まったりご飯を食べたりしていたのだ。
私がそんなことを思っているのだから彼女だってそれなりに私に何かしら感じてはいただろう。(分かんないけど)
それでもお互い岩井俊二が好きでこの映画が好きなもんだから世田谷から千葉の飯岡町まで行ったのだ。
学生で暇な二人だったからいつでもどこでも行けたのだ(今も変わらないけど)
遠かったが久々に自然豊かな風景を見るのは気持ちが良かった。
花火大会があるにも関わらず電車の中は空いていた。いろんな車両に移動して気に入ったところに座ったりまた移動したり。
少し停車時間があれば外に出て二人でキャッキャとふざけてもいた。
空気が美味しかったし、空が広かった。
緑の葉がいちいち美しかった。
現地に着いたらミチノリの家やバス停、学校を見て回った。
『この場所であの映画を撮ったんだなぁ』感慨深い気持ちになった。
多分感動もしていたと思う。
でもそれより何となく彼女との距離が難しくなってきたような気がして気持ちがそちらに向いてきたのだ。
何となく、何となくは時間とともに大きくなってきた。
気がつけばお互い一緒に行動していなかった。
初めは道の反対側をお互い並行に歩いていた。
まだ何とか見えるとこにお互いいたのに、灯台あたりで彼女がどこに行ったのか分からなくなったのだ。
小さな町で彼女を見失ってしまったのだ。
当時多分携帯なるものはあったと思うから連絡すればいいのだけど、結局私は一人でまわることにした。
一人が気が楽だし、花火大会の海岸で会えば良いと思ったのだ。
そんなわけでやっぱりと言うか何となく微妙な距離感があって気持ちが悪いのだ。二人でいると。一緒にいたくないのに、(多分彼女も気づいているのに)なぜかいつも一緒にいるのだ。
長くなるのであとは帰りの話になる。
その日花火大会も半分はおざなりで二人で見て、夜の8時過ぎには飯岡町を出たと思う。
でもそこから世田谷まで帰るのに3時間以上かかるのだがなんだかんだと東京周辺の駅に着いたら終電になっていた。
そして忘れもしないのだが、そのホームに立っているとほとんど人がいないのに私の後ろに中年の男がピタッと立っていて今にも線路に落とされそうな気がしたのだ。
殺気すら当時は感じた(殺される)
もうびっくりして電車に飛び乗ったら、その男が追いかけて来るような近づいて来るような…恐ろしい思いでガラガラの電車の中を走って逃げたのだ!
何だアイツは!
目がイッてたよね?
変だよねアイツ!
次の駅で飛び降りて後ろも見ないで出口に走った。
それは今では夢の中の出来事のように感じる。
蒼い電車の中で誰かに追いかけられるような…。不気味だけど幻想的にも感じるような…。
そしてその日は飯岡町でかなり歩いてクタクタだったけれど、品川か新橋あたりから家がある世田谷まで夜中じゅう歩いたのだ。途中かなり迷い、コンビニで休憩したりパンを食べたりした。
ゆっくり歩いた。二人で。
もう最後は笑うしかなかった。足はガクガクで、ボロいアパートの階段が上がれなくて彼女と爆笑した。
そして風呂もないアパートだったので水道水で頭をじゃぶじゃぶ洗って、お互いに臭い、臭い、と言って昼過ぎまで寝たのだ。
彼女とはそれ以降いろんなことがあって二度と話さない関係になってしまった。
入学式に後ろに座っていた日から仲良くなって一番一緒に過ごした子だった。
松たか子に似ているなぁと思った。
似ていると本人に言ったかもしれない。
『打ち上げ花火下から見るか横から見るか』
を観る度その夏の日を思い出す。
そして彼女のことを思い出したくないのに思い出してしまう。
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