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ホームズ&ワトソンへの愛を語る
こんにちは。
先日の記事で、松竹さんが海外ドラマ『SHERLOCK』について語ってくれました。『SHERLOCK』に興奮した一人として、私もホームズ・シリーズについて語らざるを得なくなりました。
松竹さんの記事はこちらから……⤵︎ ⤵︎
http://note.com/noted_ixia6192/n/n52eccb1e23ae
私が『SHERLOCK』を見たきっかけは、原作のホームズ・シリーズを中学生ぶりに読み返し、その面白さに目覚めたからです。
ホームズ・シリーズを発売された順に並べると、
・『緋色の研究』(長編)
・『四つの署名』(長編)
・『シャーロック・ホームズの冒険』(短編集)
・『シャーロック・ホームズの思い出』(短編集)
・『バスカヴィル家の犬』(長編)
・『シャーロック・ホームズの帰還』(短編集)
・『恐怖の谷』(長編)
・『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』(短編集)
・『シャーロック・ホームズの事件簿』(短編集)
こんな感じです。先にことわっておくと、私はホームズ・シリーズを全て読んだわけではなく……
今回は『緋色の研究』と『四つの署名』メインに語っていこうかと思います。
私がホームズ・シリーズに目覚めたのは、なんといってもホームズ&ワトソンの関係性であり……!
魅力的なんですよねえキャラクターがねえ。
第一作『緋色の研究』は、ホームズとワトソンの出会いの巻であり、事件を通じて互いを理解しあう巻です。
原作のホームズは、とくに『緋色の研究』のホームズは、意外とただの自分の興味と好奇心が強すぎる変人だったりします。冷静で理知的なイメージが強いですが、なんてお茶目な変人なんだと私は思いました。
その好奇心のエネルギーは、推理に注ぎ込まれます。独自の理論で推理について研究し、ワトソンの言葉を借りていうなら、「探偵術を極限まで科学に近づけ」ています。ホームズの観察力には恐るべきものがあります。
そんなホームズの魅力が光るシリーズですが、相棒ジョン・ワトソンを忘れてはなりません。私はホームズが大好きですが、同じくらいワトソンのことも大好きなのです。『緋色の研究』の魅力は、この2人の関係にこそあると私は信じて疑いません。
最初こそ、ホームズの超人的な能力をデタラメだと疑っていたワトソンですが、ホームズの推理力が本物であることに納得すると、素直に感嘆しています。ワトソンはホームズの良き理解者であり、それが読んでいる側としてはとても嬉しくなります。『緋色の研究』では、ホームズの手柄が警察のグレグスンとレストレードの手柄になってしまいますが、最後、ワトソンは完ぺきにホームズの味方をしているのがほほえましいです。
「僕は事件をみんな日記につけているから、やがて世間の人に発表してやるよ。それではまあ、成功したんだという意識だけで満足しておきたまえ。──世間の奴らは我を非難する。だが我はわが家に秘した多くの財宝を眺めつつ自らを讃えよう(訳注 ホラチウス)といったローマの守銭奴みたいにね」
このワトソンの視点があるからこそホームズの魅力が見えているのかもなぁと思います。良き理解者ワトソンの視点がなければ、本当にホームズはただのよく分からない人になってしまうとも思うし……。
次巻、『四つの署名』は、また違った意味で好きな巻です。この巻での魅力は、なんといってもワトソンとモースタン嬢との出会いです。のちのワトソンの配偶者です。モースタン嬢に恋をしたワトソンは、ちょっとポンコツになります。そのことでホームズにからかわれた描写もあります。
そのときわたしが蓖麻子油は二滴以上のむのはきわめて危険で、鎮静剤にはストリキーネを大量にのむのがよいと教えたのを耳にはさんだといって、ホームズはあとで冷やかした。
ここほんと笑いました。気になる人はヒマシ油とストリキーネをググッてみてください。
『四つの署名』は何より終わりに名ゼリフがあります。ワトソンの結婚が決まり、ホームズとの同居を解消することになった際、ホームズは「だが、僕はおめでとうとは言わないよ」と言います。
「しかし恋愛は感情的なものだからね。すべて感情的なものは、何にもまして僕の尊重する冷静な理知と相容れない。判断を狂わされると困るから、僕は一生結婚はしないよ」
いかにもホームズですね!そうやってしばらくワトソンとやり取りし、じゃあ何を得るのかと問いかけたワトソンに、ホームズは「僕か、僕にはコカインがあるさ」と答え、白い手をのばす。この巻はそこで物語が締められます。終わり方カッコよすぎ!洒落すぎ!原文の英語だと余韻もひとしおでしょう。
やっぱりホームズ&ワトソンの関係とキャラクターが好きだと再認識させられました。ちなみに私はジョーンズ巡査も好きで、ハイテンションなホームズが手料理を振るまってワトソンと3人で食事するシーンも好きでした。
はい。完全にキャラクター小説として楽しんでいます。
ここからは、ドラマ『SHERLOCK』について語るだけになります。
『SHERLOCK』のホームズはより変人らしさがあり、このホームズも好きだと思いました。ドラマのワトソンのキャラクターも好きでした。ドラマだと相棒感が増していてよかったです。
『SHERLOCK』の魅力は会話のかけあいにもありますよね〜。とくにホームズとワトソンが打ち解けていくところは最高でした。レストランで、ホームズがタクシーを追いかけるところで、ワトソンが杖を忘れたシーンは手を叩いて喜んでしまいました。
ホームズの「仕事が恋人」発言に、ワトソンが「気にしないってことさ」とナイスなフォローを入れて、ホームズが短く「Thank you.」と言ったあとに、ちょっと間を空けて「…Thank you.」と言い直した、あの初々しい(?)シーンがあったからこそ、あの杖を忘れるシーンは感情がクライマックスになります。こんなヒューマンドラマ原作では見られません。
私は正直、ホームズ・シリーズのどこが一番好きかと言われたら、事件や推理よりホームズ&ワトソンと答えます。
ワトソンの「気にしないってことさ」発言は、原作のワトソンの立ち位置をよく表しているかもしれないとも思いました。シャーロックは変人で、半分畏敬、半分軽蔑のような目をよく向けられますが、ワトソンは彼に腹は立てても、変なところをそれほど気にしていないというか。理解、という言い方をすると、ワトソンがホームズの全部をわかっているような感じになりますが、決してそうではなく、わからないけどそういうものだと思っている感じ?、そして、すごいところはすごいと素直に感嘆して、推理の才能をリスペクトしているのが、本当に良き相棒です。うおお。
そういえば、会話のかけあいですが。
職場を探して病院の面接に行ってきたジョンが、「とても魅力的だったよ」とホームズに話すんですよね。そしてこんなかけあいをしました。
シャーロック「She?(彼女が?)」
ジョン 「“It”.(仕事が。)」
ここ、作中随一のコミカルなシーンだと思ってます。シャーロックとジョンの関係性でやるから面白いんですよね。からかうときのローな温度感が最高です。この微妙なテンションのユーモアがたまらないくらい好きで、巻き戻して2回くらい見ました。ジョンが“It”をめちゃくちゃ強調して言ったのがツボでした。
会話するたびにユーモアが出てくるのでほんと好きです。
海外だとよくあるユーモアなのかもしれないけど、日本語話者からしたら切れ味が鋭くてセンスあってお洒落でいくらでも面白がれます。字幕では「悪い奴」と出てるけど、ジョンがタチの悪い連続殺人犯をさりげなく「Nice Man」て言ってたりとか。こういう言い回し大好きです。
私からは、ヴィクトリア朝のロンドンの写真集を見るのもオススメします!ホームズの世界が解像度高くなっていいですよ。
大学図書館にヴィクトリア朝ロンドンの写真録があります。物足りないって方は市立図書館まで行けば、ホームズの世界に沿ったヴィクトリア朝ロンドンの写真録もあるので是非是非。ちなみに後者の本では、ホームズシリーズの過去のドラマ化作品の写真が並べられており、最新の『SHERLOCK』も載っていました。いろんなホームズ&ワトソンがいます!女性版ワトソンまで……。
中年のヒゲを生やしたホームズとワトソンは、本音を言えばがっかりしちゃうので『SHERLOCK』が完璧だと思うんですが、辻馬車が走るホームズの世界も見てみたいですよね。私は『SHERLOCK』を現代版と知らずに見たので、ロンドンのビルが立て続けにカットインされてぶったまげました。現代版だけど、ものすごく原作リスペクトを感じて良かった……。何より相棒であるところに焦点をあてたのが天才としか言いようがないです。
書いていると、ホームズシリーズを読み返したくなりました。途中で他の本に浮気しちゃったので、シリーズを最後まで読み通すのもいいかもしれません。
(野崎)