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色の名前を訳すのって難しいよなぁ

翻訳しているときのお困りごとって色々あると思うけれど、
その中に色の翻訳がある。
色の認識って人それぞれだけれど、作品に書かれている色は主人公が見ている色だから、読者になるべく同じ色を認識してもらうために、
訳語は慎重に選ばなければいけない。

前に趣味で訳した作品の中に、「Une mer d'un bleu noir」というフレーズがあった。直訳すると「夜の青の海」といったところだろうか。
「夜の青の海」だとなんだか野暮ったいし、詩的な文体の作品だったので、
これをなんとか別の日本語にしようと考えて、色彩図鑑をパラパラとめくった。

「藍色」がなんとなく近いような気がするけれど、自分の色感覚だけで決めるのは危険。

しかも、原作は黒人奴隷にされた女性たちが主人公。このbleu noirは明らかに、彼女たちのメタファーである。なるべく原文にある「noir」を訳し出したい。

なんて、うんうん悩んだ挙句、いきついた言葉が「ぬばたま色」だった。
恥ずかしながら知らなかったのだけど、和歌などで使われてきた言葉らしく
元々は「ヒオウギという植物の漆黒に熟した実をいう」のだそうで、そこから歌の中で漆黒を表す表現として闇、海、髪などの枕詞として使われるのだそうな。

檜扇(ヒオウギ)の実


海の枕詞だって?ビンゴやん?
これだと「青」の要素がでないのでは?とも思ったけれど、
「海」と言った時点で読者は青っぽいものを想像するだろうし、敢えて原文に忠実に訳し出す必要はないだろう、ということで紆余曲折あり、
「ぬばたま色の海」で決着をつけた。

ただ、「ぬばたま」は非常に日本の伝統色が強い言葉だから、海外作品に使うのは適切なんだろう、しかも字面に「黒」が出てこないので、言葉の意味を知っている人はいいけれど、そうじゃないとイメージがしづらいかも、なんていう悩みもあり、ベストな訳を今も探し続けています。




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