【ネタバレ有り】『ラストマイル』感想
公開初日にラストマイルを見て来ました。
実写の邦画映画を初日に観たのはいつ以来だろうか、庵野作品は積極的に初日に行って記憶があるがそれを除くとSPECあたりまで遡ることになるかもしれない。
本作はアンナチュラル、MIU404に続くシェアードユニバース作品の3作品目にあたる。
シェアードユニバースとは洋画で言うとMCUみたいなもの…基本これで通じる世の中になったのはありがたい。
漫画だとかぐや様は告らせたいと【推しの子】、アニメだと東のエデンと攻殻機動隊SACとかが一例になるかと思う。TBSドラマだとケイゾク、SPECシリーズがある。
シリーズによって作品同士の結びつきの強弱に差があるが、本作は別シリーズからキャラが登場する結びつき強めでありつつ今回はメインキャスト同士の絡みはほぼ無いので問題は無い。
私はシリーズを初期から追っている熱狂的なファンではない、リアルタイム時には見てないし両作品とも観たのは今年のGWになってからの新参者です。
・あらすじ
・感想
率直に言うと滅茶苦茶面白かった。
シェアードユニバースという字面が好きなスタッフがいるのか(絶対にいる)、全面に押し出すプロモーションだったが関連作品は見て無くても問題ないと思う。
もっとライトに見てもらえるようなプロモーションでもよかった気もする。アンナチュラルとMIU404のキャストに関しては匂わせるだけで出演自体はサプライズでもよかったかな、何か口コミでカメオ的に出てたよで広がった方が面白かったような気がする。実際重要ではあるが出番が多いわけでもない。
繋がりを強調することで若干視聴ハードルがあがってるのは少々勿体ない気がする。
シェアードユニバースプレミアイベントってなんだよ!!!!!
見るにあたって困ったのが一つ、意外と満島ひかりを全然知らない。いや、テレビでも見るし滅茶苦茶知ってるはずなんだけど見たことある出演作が愛のむきだしと悪人くらいしかないことに気が付いた。
悪人から14年も経ってるし最近の演技についてピンと来てない点は少し困った。まぁ良かったので過去の出演作も見てみようかと思う。ことがない。
5~8月までの4カ月間コードギアス奪還のロゼのEDで歌声だけは毎月3回、計12回も聞いていたのでだいぶ肩は温まってましたけど。
毎月奪還のロゼ見てたのは謎の満島ひかり熱を上げる要素はあったな。
・デリファスと羊急便とHinomoto電機
ここから本作に出てくる企業の話をしようと思う。
感想と言うかモデルになってるであろう実在の会社との比較などを行っていく。
物語に大きくかかわってくるのは主人公たちが勤務するデイリーファースト(デリファス)とその商品の配送を行っている羊急便の2社である。
見た人は分かると思うがモデルはAmazonとクロネコヤマトだろう。後者に関しては物流会社全体とも捉えられるが前者は外資の大手ECサービスとのこともあってAmazonで間違いないと思う。
・デイリーファースト
最初の爆弾として運ばれる商品はデリファスの自社製のスマホである。
Amazonが約10年前に自社スマホでズッコケたことを考えると本作のデリファスの方が全体的に成功しているように思える。
Amazonモデルと考えるとデリファスにもクラウドサービスのAWSならぬDWSとかありそう。
スマホ事業も成功してるんだから現実のAmazonと同等かそれ以上の業績でも何らおかしくはないし、ここでは実在の会社と並べて語りたいのでDWS(仮)があるものと仮定する。業績も規模も現実のAmazonとほぼ同じとする。
Amazonの利益の75%はAWSをはじめとするクラウドサービス事業であり、ECサービスは25%にとどまっている。
一般的な利用者からすると通販サイトだと思うが現実は世界最大レベルのクラウド基盤を支えるクラウド屋がメインの仕事である。
本作ではECサービスがメインのように描かれていたが会社全体から見るとメインの事業では無いかもしれない。
事件が原因で薬や医療用品を配送するメディカル便に遅れが出る事態となるがAmazonは公開のちょうど1ヵ月前からネットでの処方箋の受付と処方薬の配送を開始していたのでなかなかタイムリーなネタだったと思う。
トラスコ中山の倉庫では2022年の年末頃撮影されたとのことだったので2年前くらいに脚本化されてると思うとアンナチュラルの1話を思い出す予言的な映画。
しかし、これアマプラで配信出来るんだろうか……
・羊急便
社名に動物が入ってることからクロネコヤマト、西濃運輸(カンガルー宅配便)あたりがモデルだと思う。まあ、この場合は前者だろう。
Amazonの当日配送から撤退以降、劇中の親子のような二次受け業者的な人が配送に来るようになったことが増えたなと思う。
あまりAmazonの配送についての詳細まで把握できてないががっちりマンデーの記事を見る限りではこの通りなんだと思う。
出てくる図の運送会社を羊急便に変えれば大体つじつまが合う。
・Hinomoto電機
本編と大きく関わるとも言えないが重要な役割をになったのが羊急便の配達員の息子の元勤務先がHinomoto電機である。
私自身が10数年、総合電機メーカー勤務なので家電メーカーの元技術者がドライバーになってるシーンには現実にありえそうという意味でかなり驚きました。
洗濯機を製造していて倒産(事業売却)となると真っ先に浮かぶのは三洋電機かと思う。
電機メーカーの中でも白黒問わず家電分野は倒産と買収がつきものだと思う。特に海外メーカーが参入し始めた2010年代からはかなり事業撤退のニュースを見ている気がする。
つい1ヵ月前の日立の空調事業がボッシュに買収されたし、TVや液晶にいたってはブランド自体は残ってるが生産まで行っているのは残り僅かになった。インフラ系、重電機系は頑張って残しているが軽電機事業は結構切り離されることが多い。
この流れを加速させたのがデリファス(Amazon)などのECサービスであるとも言えそうなあたりもこの映画の上手いところだなと思う。
まさに本作内のデリファスのスマホのように外資の電化製品のヒットで国内企業が徹底したり、ECサービス自体が海外製品の普及の手助けになっていると思う。(別に海外製アンチではない)
ここに正確な因果関係があると断言出来ないがAmazonの洗濯機のランキングを見てもハイセンス、ハイアールなどの海外メーカーの上位にランクインするのを見るにやはりECサービスの影響力は強いと思う。
国内シェア自体はこのランキングほど海外メーカーには偏ってなく洗濯機やエアコンなどの白物家電は圧倒的に国内メーカーが強いが、ことECサービスにおいては海外製品がかなり強いのは確かだし、それが国内企業に影響を与えてないかと言うと否定はしづらい。
しかし、三洋の売却の理由は別に海外製品に劣ったとかそういった理由ではないので、ここは一概にこうとは言い切れない歯切れの悪さもある。
Hinomoto電機にはもう1社モデルがあると思ってる。それが先ほど空調事業の買収話で出した日立です。
まぁ単にイニシャルがHなのでそんなイメージを受けた。
あとは家電の信頼性みたいなところも日立製は壊れなくて替え時がわからないとか言われたりするし。
日立はさっきのAmazonの話と近くて、一般的なイメージは白物家電を始めとする家電メーカーであるが、実際は売り上げの10%にも満たない。
洗濯機だけを取ると1%あるかないかだろう、日立などの総合電機メーカーのなかで家電部門はそこまで大きな収益をあげている部門でもない。
現実の会社とリンクさせた仮定が入ってるが外資複合企業におけるECサービス、個人配達事業者、電機メーカーにおける家電部門はどれもいわゆる「じゃない方」の事業と言っても良いかと思う。配達事業者にしわ寄せが行ってるような描写が多かったが実際はそれぞれの企業がそれぞれ持ってる社会問題を取り扱っていたのではないだろうか。
・がらくた
ちょっとだけ主題歌のがらくたの話をしようと思う。
個人的にHinomoto電機に近い業種で働いているので事業撤退して、旧ブランドとしてサポートは続き、そのうち修理部品が無くなりサポートが終了。
最後はその生涯を全うして粗大ごみや廃品回収に出されるのを待つみたいな電化製品を見てきた。といっても家電部門ではないので語れるほどではない。社内リリースで○○のサポートが終了しますとか見る程度。
主題歌のがらくたは廃品回収のアナウンスの「壊れていても構いません」という言葉からインスピレーションを受けてるとのことだった。
本作で最後に人を救ったのがもうサポートが切れて壊れるのを待つだけだった洗濯機が活躍して、不用意な形で製品としての生涯を終え修理も出来ない。行く先は粗大ごみか廃品回収なわけだがそれを「壊れていてもそれでも構わない」と肯定する歌詞の主題歌で締めてくれる作品になっていたのはとてもおさまりが良かったと思う。
・まとめ
まだパンフレットもインタビューもほとんど読んでない段階で感想と言うか企業考察みたいなことになったが思ったことは大体書いたので一旦ここまでとします。
本筋の事件に対しての感想は私以外の人が書いてくれるだろうし、まかせます。
余談
ラストシーンとか、アメリカ時代のエレナとか結構SPEC感を感じました。
何が言いたいかと言うと好きってことです。