<読書感想>人を好きになるって、けっこう自己中で一方的なこと?(チッチはかわいいけど)
ネタバレしています。ご了承ください。
『小さな恋のものがたり』
わが家の本棚にあった。
初めて手にとったのはいつだったか、もうおぼえていない。
ただ、1巻から最後まであるわけではなく、確か、2、3冊しかなかった。
何巻だったのかもおぼえていない。
最初に持った印象は、漫画なのにポエムがあることへの新鮮さだった。
最終巻が出ると知って購入し、さらにその後を描いたもう1冊も出て、買って読んだ。
すると、母が珍しく興味を示したので、その2冊を貸した。
でも、読んだのかどうかはわからないし、それっきり「また貸して」とも言ってこなかったので、別に、この漫画がすごく好きというわけではなさそうだった。
なにしろ、その3冊も、巻数が飛び飛びだったし。この漫画へのファンとしての熱意は無いのがわかる。
大人になってから読み直すと、子どもの頃に読んだときとは別の感想が出てきた。
まず、チッチは盲目過ぎるな、ということ。
「恋は盲目」というけれど、そこまでまわりが見えなくなるのか、というほど。
いや、そこがこの漫画の核というか、中心だと思うんだけど。
第10集でチッチがサリーとうまくいかなくなって、学校を休むようになってしまう。チッチを心配した母親は、岸本さんの提案で、田舎にチッチを行かせる。
そこまで恋に引っ張られなくても……、と、冷静にツッコミを入れてしまった。
昔、初見の頃の自分だったら、こんな風に思わなかったんじゃないかな。
例えば、修学旅行で、朝食を食べていたサリーの隣に女の子が座っているのを見て、チッチがその2人の間に割って入って座るシーンに、
「うわー……」
と少々嫌悪感のようなものが出たり。子どもっぽいよな、とも。
この、語尾に「……」の付く感じ。
おそらく、自分はチッチと同じ女性で、だからこそわかる、誰かを好きになったときに出てくる一方的な感情。それに、何か嫌悪感のようなものがあるのだ。あ、自分にもそういうところあるな、と。
美輪明宏さんが言っていた。恋は自分本位で、愛はそこから、自分本位ではなくなったものだと。
チッチ、かわいいんだけど、自分本位なんだよな。
でもそこが一途でかわいいところでもあるんだけど。
ところで、読み直して気づいたことがある。
サリーのお母さんが、ちょっと「ヤバい」人だった。
サリーからハガキが来たチッチ。
そのハガキを、サリーのお母さんに見せるチッチ。
でもサリーのお母さんには、息子から何も届いていなかった。
すると、チッチをじっと見たあと、
なんで息子は自分にはくれなかったのかと感情をあらわにする。
嫉妬。
母親なのに、息子と仲がいい女子に対し、生々しい感情を見せる。
そこにホラーを感じた。
そうか、サリーのお母さんは、毒親だったのか。
留学だけど、もしかしたら、母親から離れたいっていう気持ちもあったのかも。
(漫画の中でサリーがそう言ったわけではないので、あくまでも私の勝手な想像ですが)
サリー、チッチと縁を切りたいの? どっちなの?
あと、サリーは、「はっきりしなさいよ」と思ったのは私だけではないと思う(笑)。
留学先のスウェーデンから、チッチにハガキを出したサリー。
ハガキにあったのは、ダーラナホースという、幸運を運ぶ馬。
まったく会えなくなってから、チッチの幸せを願っている(らしい)サリー。
ん? サリーがチッチに
「ぼくたちはぼくたちのままではいられない」
と言ったけど、あれって、どういう意味だったのだろう。
この言葉じたい、「別れよう(付き合うのをやめよう)」と、はっきりと言ったように思えないし。
あと、留学するとチッチに告げるとき、日本を出る直前だったっていうのもなぁ。言いにくいから先延ばしにしちゃったのかもしれないけど、チッチの気持ちをもうちょっと考えてあげなよ。
でも、サリーはサリーで、自分がすごくチッチから「思われてる」ってことに気づいてなさそう。
そもそも、チッチとサリーは「付き合ってる」って言えるのだろうか?
いまどきの少女漫画だったらあり得ないほど、2人はプラトニックな関係だしな。ちょっと触れ合っただけで、顔真っ赤になってるし。
人前でベタベタするチッチを、うっとうしそうにするサリー。
チッチは、女の子にモテるサリーを独り占めにしたい。
サリーは別の女の子に気持ちが向いたあと、
「やっぱりチッチのほうが」と、チッチの良さを思いだすのか、チッチのところに戻っていく。
2人とも、この、くっつきそうでくっつかない、っていう距離感がちょうどいいんだろうな。だとしたら、このまま「付き合ってる」のかどうなのか、第三者にはわからない状態がいいのかもしれない。
ただ、数冊しか読んでないので、情報量が少なすぎるけど。
(ちなみに、全部で第46集。
アマゾンを見たら、タイトルに「その後のチッチ」とついてるものが第3弾まで出ているそうです)
『小さな恋のものがたり』は、一人の女の子が恋をした物語として素敵なんだけど、その一方で、人の嫌な部分も目に入ってくる。それは私が大人になり、いろいろと気づけるようになったから、なのかもしれない。