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小説

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主にカノウソウスケ名義で投稿ないし発表した小説を投げます。
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#原稿供養

彼女は森の暗がり(4/4)

(承前)

 <四>

 さて。
 端的にいえば、それからは何もかもつまらなかった。ほとんど卒業まで時間がなかったこともあって、転校先の高校で何か別段目新しいことがあるわけでもなかった。適当に受験を済ませ高校を卒業すると、都会の大学に入った。適当な偏差値の、適当な学校だった。
 それから、つまらない生活の中で知り合ったつまらない女の子たちとつまらない付き合いを何度かした。当然のことながらそれらはひ

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彼女は森の暗がり(3/4)

(承前)

<三>

 夏乃は僕の知っているタイプの人間ではなかった。
 これまで女の子と付き合うということも何度かあったが、夏乃はその誰とも違っていた。女の子たちは自分の話をすることを好んだし、自分に関心を持たれることを何より欲していた。付き合うということすら、そこにいない誰かの関心を惹くことの一手段であったのではないだろうか。だから、一緒にいて僕が安らぐということはなかった。僕はいつだって、彼

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彼女は森の暗がり(2/4)

(承前)

 <二>

 それからの一週間は、何も起こらなかった。
 彼女の父親を森に埋めたなどというのはすべて夢の中のできごとだったのではないかと思われた。
 夏乃は夏乃で、いつも通り他の人々とは位相の違う生活を送っていた。
 そんな彼女の姿を眺めていると、ますますあの晩のことは夢だったのではないかという疑いが増すばかりだった。あの湿気った森の空気、なまぐさい土のにおい、汗の香りといった、そんな

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彼女は森の暗がり(1/4)

 <一>

 茅井夏乃(かやい なつの)のことが気になるのか、といえばたぶんそうだ。可愛いと思うか、と聞かれたら僕は首を横に振る。だが彼女は綺麗だ。
 綺麗といっても、どこか背徳感のある、正面からまじまじと見つめることがなんとなく後ろめたくなるような、そんな美しさだ。魅力といっても普通の女の子の持つそれとは違ってどこか非人間的な得体の知れなさみたいなものがあって、危険な感じがする。だからいわゆる可

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窓の向こう側(後編)

<承前>

 それからの一週間はすぐに過ぎた。ただでさえ速く過ぎていく時間がさらに速度を増したかのようだった。それゆえ、過ぎていく日常はぼやけた遠景のようで、読み流す英文の一節一節が、あるいは数学や国語の問題の一問一問が、確かに頭の中を通り過ぎ処理されていくというのに、何もかもが他人事のようで、自分自身ではない誰かが機械的にこなしているみたいだった。理科や社会の問題を解けば、記憶装置が要求された知

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窓の向こう側(前編)

 きっと、惚れた異性に初めて告白するときにはこんな気分になるに違いない。
 絵のモデルになってくれないか、ただその一言を絞り出すのに随分勇気が要った。
「モデルって……」
「いや、ヌードとかじゃなくて、普通に座っているだけでいいから」
 慌てて早口で付け足した言葉は空回りした気がした。俺はさぞ滑稽な顔をしていたのだろう。そんな俺の様子が可笑しかったのかもしれない。斉藤ははにかみ半分、微笑んで言った

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