彼女は森の暗がり(2/4)
(承前)
<二>
それからの一週間は、何も起こらなかった。
彼女の父親を森に埋めたなどというのはすべて夢の中のできごとだったのではないかと思われた。
夏乃は夏乃で、いつも通り他の人々とは位相の違う生活を送っていた。
そんな彼女の姿を眺めていると、ますますあの晩のことは夢だったのではないかという疑いが増すばかりだった。あの湿気った森の空気、なまぐさい土のにおい、汗の香りといった、そんな記憶とは無縁の人間のように思えるのだった。
だから、学校では声をかけづらかった。第一かける機会もなかった。
何度か、森に埋めた死体のことを考えた。
警察のことは不思議なほど頭に登らなかった。
あの光景はあまりにも突拍子がなかったし、それを誰かに告げるだなんてことはうまく想像しようにもできなかった。
同級生の父親を一緒に森に埋めたんです、とでも言うのだろうか。あまりにばかばかしくて取り合ってもらえないだろう。
それに、彼女が言っていたこと。
確認してどうなるという話でもないけれど、父親が帰ってくるというのが彼女の妄想でないのなら、いったい警察のような組織に話してどうこうなる類の事柄でもないように思えるのだった。
彼女が嘘をついているようには思えなかったし、かといって、事実でないような気もしなかった。ただひとつ、実感だけが欠けていた。
次の満月の夜を待つことにしよう。そう思った。
ひと月はあっという間に経った。
僕は再び夏乃の家にいた。彼女の父親の書斎で画集を眺めていた。
部屋全体を眺める。悪くない趣味だと思う。虐待、といった乱暴な言葉とは無縁の人間に思えた。こんな人が娘に暴力を振るったりするのだろうか。しかし、見た目と振る舞いというのはしばしば一致しないものだから、そういうこともありえるのだろう。
そうして、いつか見た光景が繰り返された。床には彼女の父親らしき男性が転がっていた。死んでいるはずだった。
今度も、倒れた死体のことは意に介さずに彼女は言う。
浅田君。今日は夕飯、食べてくでしょう?
うん。
僕と彼女で囲む食卓は、静かだ。焼き鯖に、おひたし、煮物、じゃがいもの味噌汁、ちゃんとしたおかずが並ぶ。
足りなかったら言ってね。おかわりあるから。
うん。
食べ終わったら、僕らは森に死体を埋めに行くのだ。
気が付いたのは、父親を埋めに行くときの彼女は、いつも学校で見かけるときとは様子がちょっと違うということだった。
いつもの彼女の事務的な様子に比べると、挙動が少しばかり生き生きとしているようだった。
あるべきものがそうあるように、何もかもてきぱきとこなす。
それに、饒舌とまではいわないが、普段の寡黙な姿とは裏腹によく喋った。
どちらが本当の夏乃か、という問いは意味をなさないように思えた。
父親を殺して森に埋めに行くというのは確かに異常な状態なのだし、異常な状態で普段と違う振る舞いを見せるのはむしろ普通のことではないだろうか。前回は確かに彼女の平静さが異様に見えたけれど、それは一般と比べての話であって、彼女にとってそれなりに特別なことなのだろう。だとすれば、やはり人間的な反応だ。
それでも、淡々と作業をこなす彼女がいったい何を考えているかははかりかねた。
どんな気分か、彼女に聞いてみたかった。
だが、どうだろう。そのまま素朴に疑問を口に出せるほどの勇気は僕にはない。どうやって聞くというのだ。何度も何度も帰ってくるお父さんを殺して埋めるのはどんな気分、とでも?
その答えがどんなものであれ、後悔しかしないだろうと思った。
世の中には知らなくてもいい類のことはあるものだ。
全行程がわかっていると、比較的気分は楽だ。
やるのは、とどのつまり穴を掘って埋めるだけのことなのだから。
浅田君は、と彼女は口を開く。懐中電灯で森の奥に続く道を照らしながら。
何か、ご両親の思い出はある?
いい思い出はあんまりないね、と僕はリアカーを曳きながら答える。
父親が酒飲みでね、飲むと僕のことをよく殴ったんだ。面構えが気に食わないとかなんとか、適当な理由でね。で、母親がそれを止めようとして、しまいには刃物まで持ちだしてさ。ひどかったな。
でも母親は母親で、ひどいんだ。僕のことを殴りはしないんだけど、何か自分が嫌なことがあると僕に愚痴を言って聞かせるんだ。朝から晩まで、始終いやみったらしい恨み言さ。僕にはこっちの方がつらかった。頭がどうにかなりそうだったな。
親族の中では、叔父は、悪い人じゃないね。僕を引き取ったのが父方の叔父なんだけど、まあ良くも悪くも人間に関心がないっていうのかな。自由にさせてくれるし、余計な気を遣わなくていいっていうのは楽だよね。
なんだか、僕も口が軽くなるようだった。森の暗闇の中では、喋らなくてもいいようなどうでもいいことまでつい喋ってしまうのだった。
叔父様は、私の父に似ているみたい。
ぽつり、と夏乃は言った。
あの人も生きてる人間には関心がなかったみたいだから。
私、母を随分前になくして、ほとんど記憶が残ってないの。
父がまだやさしかったころ――私を殴ったりしなかった頃に、よく母の話をしていたわ。懐かしそうに、お前のお母さんはとても美しい人だったんだよ、って。
まるで人形みたいだったって。人形の方が美しい、みたいな言いぐさ。変よね、父の話を聞いていると、死んでしまった母の方が生きていたときの母よりずっと美しいみたい。
僕は頭の中でつぶやく。
――だったら君は、死んでしまったお父さんと生きていたときのお父さん、どっちが好きなんだい?
だけれど、その問いを口に出すことはない。
下手なことを口にして、機嫌を損ねるのは避けたかった。
彼女という人間のことは、まだまったくわかりかねていた。断片的に口にする内容も、どこかとりとめがなく、つかみどころがなかった。
ひょっとしたら茅井夏乃という人間に実体はないのかもしれない。
何も感じないのかもしれない。何も考えないのかもしれない。
実体を持たない綺麗な虚像。それが夏乃という人間なのかもしれない。それが彼女に常につきまとう実感のなさの正体なのかもしれなかった。
もちろんそれはただの空想に過ぎない。しかし一面の真理を衝いているような気はする。
浅田君、どうかしたの。
振り返らないまま、彼女は僕に尋ねる。今その瞳は、何を映しているのだろうか。
いや、なんでもないよ。
――そう。
その瞳は、きっと黒々とした森の暗闇を見つめているに違いなかった。
ふとした拍子、なんでもない瞬間に垣間見える、どうしようもない違和感。
そうだ。彼女は普通ではないのだ。
僕らは前回に比べてだいぶ手際よく作業を終わらせた。
ところが、さあ帰ろうというときになって、思い出したように夏乃は言った。
せっかくだから、オヤシロを見ていかない? そんなに遠くじゃないのよ。
とうに零時を過ぎていた。
返事を渋っていると、夏乃は言った。
もしかして、怖いの。
少しね。
いつもあんな暗い絵ばっかり見てるのに。
それとこれとは別だよ。
そういうものかしら。
そういうものだよ。
でも、行くでしょう?
なぜ?
行きたくないの?
そんなこと言ってないよ。どうして行かないといけないかを聞いただけ。
私は、浅田君が行きたいかどうかを聞いてるのよ。
どうして僕が見に行きたいと思うのさ。
私は見に行きたいわ。
僕は行きたくないね。
怖いの。
怖くなんかないよ。
じゃあ別に行っても構わないでしょう?
そういう問題じゃない。
じゃあ、どういう問題?
放っておくと朝までこの問答が続きそうだった。
結局僕が折れて、見に行くということになった。
少し歩いたところに、それはあった。
古い小屋だった。あばら屋といってもよかったかもしれない。想像よりも、なんというか、ずっとちっぽけでみすぼらしかった。
これが、オヤシロ?
そう。全然怖くないでしょう?
怖いだなんて言ってないよ。
入ってみましょうか。
なんで?
あら、怖くないんでしょう?
小屋の戸はがたついて、なかなか開かなかった。苦労して開けて中に入ると、ほこりとかびのにおいでむせそうになる。
懐中電灯で中を照らす。
狭い小屋の中には畳が敷いてあった。どれもひどくかびて、腐っていた。これがにおいの原因だなと思った。そのまま、土足で上がる。
奥に、何かが落ちていた。近付いてみる。文様のついた、円盤状の何か。
これは?
僕が尋ねると、夏乃は拾って確かめる。
銅の鏡ね。これがきっと祀られてたんでしょうね。
錆びているからわからないけど、魔鏡かもしれないわ。
魔鏡?
特別な鏡でね、一見普通の鏡なんだけど、光を壁とかに反射させると文字や図像が浮き出るの。でも、これだけ錆びてたらわからないわね。
そっと、元の場所に戻す。
これだけ?
これだけよ。
さすがに何か化け物が出るとまでは思っていなかったけれど、あまりにあっけらかんとしていて、拍子抜けしてしまった。
本当に、何もないんだね。
何かあると思った?
まさか。
本当に何もないのよ。なーんにも。
つぶやくように、彼女は言った。
さ、戻りましょう。
帰り道、夏乃が言った。
知ってる? 月って、みかけの大きさよりずっと小さいのよ。
どういうこと?
私たちが見てる月があるじゃない、これって眼に映ってる大きさはどれくらいだと思う? こうやって、百円玉を手でかざしてみるより大きいかしら。
え、それは大きいんじゃないかな。
じゃあ、五百円玉だったら?
うーん、大きい、かな。
……ところが比べてみるとね、実際には五円玉の穴よりも小さいのよ。通して月が見えるくらい。
それ、本当? ちょっと信じられないな。
本当よ。帰ったら試してみるといいわ。
別段、特別なところのない会話だった。
みかけの力、って言葉、物理で習ったでしょう。慣性力とか、遠心力とかね。
そういえば、あったね。それが?
色んなものが、私たちに見えている通りにはできてないのよね。地球が太陽の周りを回っているといったって、こうやって暮らしている以上は太陽が地球の周りを回っているようにしか見えないでしょう。
時折考えるの、そうやって見えることと、そうあることを区別する理由ってどこにあるのかな、って。
なんだか、難しい話だな。
そうでもないわ。
普通に生きている限りは、別に太陽の方が回ってるのか地球の方が回ってるのかなんて、気にしないじゃない。だって、それまで人類が生きていく上で何の支障も無かったわけでしょう。だから本当はどう、とかいうことなんて考えないで、ただ見えるだけのものを受け入れて暮らしていってもいいのかもしれない。
でもたまに、気になるときがあるわ。
私が鏡を見ていないとき、いったい鏡の中の自分は何をしているのかしらって。
鏡の中の自分?
鏡の中の私って、私が鏡を覗いているときしか見えないじゃない? もし私がいなかったら、鏡の中の私がいるかどうか、っていうのは私自身にはわからないでしょう。
おかしいでしょう。そんなことを考えても意味なんてないのにね。
なんだろう。こうやって夏乃の言葉を聞いていると、彼女を取巻く普通ではない状況よりも、他でもない彼女自身のことをもっと知りたいような気がした。
家の明かりが見えてくる。
浅田君、今日も泊まっていく?
うん――、と言いかけて、やめた。
いや、今日は帰るよ。自転車(チャリ)もあるし。
そう。気をつけて。
疑問を抱くことは難しい。浮かんだ疑問を口にするのも難しい。
夏乃に聞きたいことは山ほどあった。だけれど、それをちょうど問いとして発する適切な瞬間、というものがどうにも訪れないのだった。
彼女に何かを聞く資格というものが僕にあるのかどうか疑わしかった。
もちろん、興味本位で聞くことはできるだろう。だけれど、それが方法として適切だとは思えなかった。もう少しいうなら、そうやって不用意に質問を投げかけてしまうことで、彼女という人間を知ることからむしろ遠ざかってしまうのではないかと思うのだった。
とはいえ、他に手立てがあるかどうかもわからなかった。
正しい近付き方、みたいなものがあれば、苦労せずにすむのに。
また、夏乃の父親がやってくる日が来た。
僕は書斎にいた。はじめてではないというのに、なんだか落ち着かない感じがした。
ふと、白い布のかかった額が気にかかった。
そういえば、夏乃にまだ聞いていなかった。
布を取ってみた。
出てきたのは、油絵、それも森の絵だった。
陰鬱な絵だった。
描かれていたのは、あの見覚えのある森の入り口だった。道の先は暗闇に続いていた。
夕暮れの、森の奥へと続く薄暗い道。そして、所狭しと生い茂る草木。
ただそれだけの絵のはずなのに、なぜか不快感を覚えた。風景画、それもただの自然を描いたに過ぎないものにそこまで厭な感情を抱いたのははじめてだった。
僕はすぐに布をかけ直した。
ねえ、何か僕にできることはある?
僕が言うと、夏乃は意外そうな顔をした。
ありがとう。でも、いいのよ、別に。
慣れたことだもの。
だけど、と食い下がると、夏乃は言った。
だったら――と、夏乃はいつもの物入れではなく居間の隣の部屋に僕を案内する。
ここで待ってて。
なんだったらふすまの隙間から、覗いてもいいわ。でも、約束してね。お父さんが動かなくなるまで、絶対に出てこないって。
いつものように、乱暴に戸が叩かれた。
おかえりなさい、お父さん。
戸を開けた彼女のその口調は、やさしくすらあった。
父親の声も聞こえた。はっきりと、明瞭に。同じ空気の中にいるのだ、という気がした。だけれど、その言葉は何ら意味をなさなかった。獣の咆吼のように、空気を震わせることにしか意味がないようだった。
のそりと、居間に入ってくる。
動いている状態の夏乃の父親は、違っていた。
人間の袋を着た何か別の生物ではないかと思った。
その眼は、ここではないどこかを見ていた。確かに何かを見つめているのだが、この世の物体に焦点があっているようには見えなかった。
一歩ずつ、夏乃の父親は足を進める。慎重というのでもない、不自由があるというでもない、何か獰猛な生き物のような印象を僕は覚えた。
巨大な爬虫類があの身体の中に入っているような気がした。ゆっくりと、機械的に動く手足、常に動くものを探す冷たい眼。
ぐるぐると、猫が威嚇するように、空中の見えない何かに警戒している。低い声だった。とても人間の声帯から発せられる音とは思えなかった。肺よりもっと深い、もっと暗い器官からその音はきているに違いなかった。まるで、地の底へとつながっているかのようだった。
夏乃は、座布団に父親を座らせると、言った。
お疲れでしたでしょう。お茶、淹れるわね。
何の前触れもなかった。低い唸り声とともに、夏乃の顔を撲った。力任せに、しかし力のこもらないような奇妙な動きで。
夏乃は、何も言わなかった。
撲たれたところを抑えもせず、黙って台所へと向かった。向こうで、がちゃり、とガスコンロを点ける音が聞こえた。
はい、お父さん。お茶。
夏乃がお茶を台所から運んでくる。
父親の横に座り、湯呑みを座卓に置く。
彼は気に留めない。目の前に何か置かれたことにすら、気付いていないのかもしれない。
夏乃の表情は、翳になって見えない。
お茶が冷めてしまうのではないかと思えるぐらいの時間が過ぎた。
ぼそりと彼女が言った。
飲んで。
お茶、淹れたのよ。
その言葉が通じたのかどうかはわからなかった。しばらくして父親は、ぎくしゃくとした動きで湯呑みを手に取ると、中身を少しずつ飲んだ。
夏乃は、父親から離れて立ち上がった。
変化は、緩やかだった。
少しずつ、身体が震えだした。やがて遠目から見てもわかるほどひどい震えになった。まるで寒くて仕方がないとでもいうように、がくがくと身体中が震えているのだった。あまりにひどい震えのために、握りしめた湯呑みの中身が飛び散った。
湯呑みをテーブルに戻そうとして、手からうまく放せずに、倒してしまう。そのまま手は胸を押さえる。言葉にならないうめき声が聞こえる。立ち上がろうとして、倒れてしまう。倒れたまま、手足を動かす。それは、アスファルトの上でもがく昆虫の動作を思わせた。
そのまま、動かなくなった。
夏乃は、父親をすぐそばで見下ろしている。
ふすまを開けて、僕は夏乃の方に歩いていく。
しかし、かける言葉が見当たらなかった。
夏乃は、そのときはじめて僕の存在を思い出したかのような顔をした。
待って、まだ――
次の瞬間、足に激痛が走った。何かに足をつかまれた。もの凄い力が僕の足首をつかんだかと思うと、すぐにこときれた。
夏乃の父親は、もう動かなかった。
浅田君、大丈夫?
指を一本一本引き剥がすのに苦労はしたが、怪我にはなっていなかった。ただ、手でつかまれたところが赤黒くあとになった。それと少し痛みが残った。
お腹空いたでしょう。ずっと待ってたんだもの。
問いに答えるかわりに尋ねる。
君は?
そのときはじめて自分のことに気付いたかのように、夏乃は答える。
私も空いてないわ。
……でもね、何か食べないと力が出ないじゃない?
そうだね。
僕は静かにうなずいた。
そうして、僕らは森に向かう。
彼女が道を照らし、僕がリアカーを曳く。荷台には彼女の父親の死体が乗っている。裏の森に、埋めに行くのだ。
今晩、泊まっていってもいいかな。
夏乃は振り向かない。
もちろん、構わないわ――
道の先の暗闇を見つめながら、彼女は言う。
――ねえ、一緒の部屋で寝てもいい?
変な気分だった。
こうして床を並べて寝ているのも変だったし、昂揚とはまったく違った平静さが支配していたのも妙だった。だからだろう、僕はなかなか寝付けなかった。
ふいに、夏乃が口を開いた。
浅田君、起きてる?
うん。
手をつないでも?
うん。
彼女の手は、ひんやりと冷たかった。
冷え性なのよ。
何がおかしいのか、くすくすと笑う。
男の子って、もっとがつがつしてるものだと思ってたけど。
――人によるね。
憮然として答えた。どこか馬鹿にされている気がしたからだ。
そうね、浅田君は違うみたいね。
夏乃は天井を見つめながら言う。
ねえ、浅田君――?
なに?
浅田君が来てくれて、本当に助かるわ。
夏乃の意図をはかりかねて、僕は黙ったままだ。
指と指が絡まる。冷たい、温度のない指が、僕の指に。
そして最後に付け加えた言葉は、本当は聞こえるか聞こえない程度の囁きだった。だけれど至極明瞭に聞き取れた。
目が醒めると、昨夜のことはまるごと全部夢だったのではないかと思われた。
ただ、夏乃の、ほとんどぬくもりのない、なめらかな膚の感触だけが残っていた。
おはよう、浅田君。朝ご飯、できてるけど。
障子越しに夏乃が僕に呼びかける。僕は答える。
食べる。支度してから行くよ。
まるで何もなかったのではないか、という気もする。何もなかったことにするための会話だったのかもしれない。ときに会話というのはそういうものだ。
僕は、夏乃の家に通うようになった。
<続>
狩野宗佑「彼女は森の暗がり」第二回 2018/10/19
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