【森がいく!!#3】水堀からお城を眺める新体験!~「名古屋城水堀における舟運事業社会実験」を実施しました~
名古屋を代表する観光スポット名古屋城。では、名古屋城と言えば皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。天守閣?本丸御殿?それとも金シャチ?
入口からは見えませんが、じつは名古屋城の西から北にかけては、ほぼ築城当時のままの広大な水堀が残されています。この貴重な水堀で今月、ある社会実験が行われました。
今回は、当社も企画運営に携わった「名古屋城水堀における舟運事業社会実験」の様子をご報告します!
1.名古屋城の水堀を活用したい
この社会実験は、名古屋城の魅力向上を目指し名古屋市が実施したもの。江戸時代、名古屋城の水堀は人や舟の移動に使われていたことが、文献に記録されています。そこで、水堀の遊覧を、名古屋城の新たな魅力発見や歴史をさらに知ってもらう機会とするため企画されました。なんと、50名の募集枠には約1200名の応募がありました。期待の高さがうかがえますね。
2.計画~歴史を体感できる舟運を考える~
当社は、この舟運事業の企画段階から携わっています。名古屋城の絵図や尾張藩役人の日記、古写真といった歴史資料の調査からはじまり、船着き場の設計、運行ルートの検討、社会実験のお手伝いなどをさせていただきました。
今回の社会実験で重要だったのが、歴史を感じさせる舟運事業にすること。そこで、名古屋城の水堀で舟を利用していた記録を調査しました。江戸時代後期に名古屋城の情報をまとめた『金城温古録』などから、水堀には舟を泊めるための波渡場がいくつかあり、名古屋城勤めの役人が日常的に舟で移動したり、客人をもてなす際に舟を浮かべていたことがわかりました。
そのため、水堀ならではの体験ができるルートを考え、舟運の際には石垣や水堀の歴史についても紹介することにしました。
今回はあくまで社会実験ということで、岸には仮設の船着き場を設置しました。設置した場所は辰之口といって、江戸時代に水堀の水を堀川に排水していた地点です。現在でいうと名古屋城水堀の西側、大幸橋の付近です。
舟にもこだわり、使用するのは日本で昔から使われている和舟の形状にしました。10人ほどが載れる小型なもので、底が平たくなっており、川や池などで使われる平舟(川舟)です。
3.社会実験開始!
そして、ついに本番当日です。社会実験が実施されたのは、3月21日・22日の二日間。青空が広がり、舟でお堀を遊覧するにはもってこいの天気でした。名古屋城正門前に受付テントも設置し、準備万端です。
参加者は抽選で選ばれたのですが、小学生から高齢者まで幅広い方々が参加していました。
受付では参加者に、水堀の歴史や遊覧のポイントを知ってもらえるように、みどころガイドを作成・配布しました。江戸時代の文献や明治時代の古写真が掲載されているので、水堀の昔と今の様子を見比べることが出来ます。
さて、受付を終えた参加者の方々には、ライフジャケットを装着していただき乗船です。運航ルートは水堀を西に北上したのち角を東に曲がり進み、天守閣の辺りでUターンして船着き場まで帰ってくる、約30分の周遊です。船内では船頭さんがみどころをガイドしてくれます。社会実験スタートです!
4.水堀で体験する新たな名古屋城の魅力
大名たちが刻んだ刻印の数々
辰之口を出発した舟は月見櫓跡を過ぎ、石垣に沿って水堀を北上します。名古屋城の築城を命じたのは徳川家康。築城には全国の大名が参加し、それぞれの担当エリアごとに作業が行われました。そのため、石垣には自分たちの担当であることを示すための家紋やマークなどの刻印があちこちにあります。舟の上からはこれらの刻印を間近で見ることが出来ました。
舟からしか見られない櫓の姿
舟が東に曲がる角には西北隅櫓(清洲櫓とも)が建っています。この櫓は清須城から移築されたとも伝わっており、小さなお城の天守ほどの規模です。舟から見上げる櫓は大迫力!敵を攻撃するために櫓の下に造られた小窓のような「石落し」もはっきり見えます。これは、舟からしか見られない光景。参加者も珍しい光景を興味深そうに眺めていました。
舟上から天守閣を眺める
その後も崩れた石垣が積み直された部分や落石が放置されている部分などを、ガイドを聴きながら巡ります。そして、Uターン地点から見えるのは天守閣。このアングルから天守閣を見た人はなかなかいないのではないでしょうか。参加者も貴重な撮影スポットということで、思い思いに舟の上から天守閣を撮影していました。
軽妙なガイドトークで歴史を学ぶ
ここからの帰り路では、水堀に庄内川の水が引き入れられた話や、現在水堀の水を排水している樋門について、船頭さんからガイドしてもらいながら船着き場へと戻ります。刻印や石垣に水路の話など、船頭さんのガイドに参加者も興味深そうに聞き入っていました。
船着き場到着直前には、鵜の首から水堀と石垣と天守(春には桜も)がすべて見える絶景スポットをご紹介してもらい、社会実験の舟運は終わりです。
5.舟運事業の実現に向けて
舟を降りた後は参加者の方々にアンケートで、水堀を周遊した感想や要望など、舟運事業をより良いものにするための意見をいただきました。
何人かの参加者の方からお話を聞くと、「いつもとは違う名古屋城を見ることが出来てよかった」「船頭さんのガイドが面白かった」など、今回の社会実験を楽しんでいただけたようでした。
名古屋市は、社会実験で収集した意見もふまえて舟運事業計画を検討し、2026年までの運航開始を目指しているとのこと。名古屋城観光の新たな目玉となるか、期待が膨らみます。