242.ゼンリン地図無断複製、提訴 企業同士が裁判で争うのは初めて!
1.中国特許庁相手にホンダが逆転勝訴
ホンダの意匠権は無効と宣言
2003年(平成15年)5月30日。中国の国家知識産権局 (特許庁)がホンダのスクーターの意匠権を取り消したのは違法として、ホンダが同局を相手取って起こした「無効審決取り消し」訴訟の控訴審で、北京市高級人民法院は「無効審決を取り消す」との判決を下し、ホンダが逆転勝訴した。
中国の知的財産権訴訟は二審制のため、これでホンダのスクーターの中国での意匠権は有効となった。
ホンダは1997年以来、「中国メーカーのスクーターがホンダの意匠権を侵害している」として、中国三社を意匠権侵害で訴えていた。
これに対して、三社は「ホンダのスクーターはホンダよりも先に意匠権を登録していた台湾メーカーのスクーターにそっくりで、ホンダの意匠権は無効請求を提出していた。
同局は審査の結果、「ホンダの意匠権は無効」と宣言していたため、ホンダは同局を相手取り、無効審決の取り消しを求める裁判を提起していた。
しかし、2002年11月、北京第一中級人民法院が「無効審決は妥当」との判決を下していたため、ホンダはこれを不服として上告していたが、中国の特許庁相手に逆転勝訴した。
2.ゼンリン地図無断複製、提訴
企業同士が裁判で争うのは初めて
住宅地図を無断利用したカーナビゲーション用の地図ソフトなどで著作権を侵害されたとして、住宅地図会社ゼンリン ( 北九州市 ) は、2003年5月19日、電気機器会社パイオニアの子会社「インクリメント・ピー」( 東京)に損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こす方針を明らかにした。
このような地図ソフトの無断複製をめぐっての企業同士が裁判で争うのは初めてのこと。
この損害賠償の請求額は数億円となる見込みで販売差し止め請求も検討し、著作権情報サエラの本号発行頃には提訴が終わっているかもしれない。
ゼンリンによると、インクリメント・ピー社は、パイオニアのカーナビ「カロッツェリア」の地図ソフトやインターネット用地図ソフト制作。
盛岡市にある地図データベース制作の拠点で、ゼンリンが発行する住宅地図とパソコン用地図ソフトを無断でコピーし、イ社地図ソフトの作業用シートとして無断使用していたという。
また無断使用の根拠としては、イ社の地図ソフトの施設名表示が、二ΟΟΟ年度版ゼンリン住宅地図と同じまちがいがあった。五月初旬に、盛岡地裁の裁判官が立合って証拠保全が行われ、盛岡市のイ社でゼンリンの住宅地図が大量にコピーされているのが確認されたという。
3.公証人役場って知ってる?
公証人役場ってご存知だろうか。公証人役場には公文書を作成する公務員の「公証人」がいる。
公証人とは、30年以上の実務経験を持つ法律実務家のうち、法務大臣が任命する公務員のことをいう。
つまり、検察官や裁判官を退任した人がほとんど。
各都道府県の「公証人役場」には約550人の公証人が所属している。
公証人は会社の定款を認証し、「公正証書」を作成するのが仕事。
公正証書は、金銭貸借契約書や建物などの賃貸借契約のほか、遺言や離婚に伴う慰謝料・養育費の支払いなどを対象にしている。
このように公文書であるため、高い証明力があるのが特徴といえる。
公正証書のメリットは大きく二つあり、一つは、公正証書を作るという行為自体が、債務者である取引先に約束を守らなければならないと思わせる心理的な効果がある。
もう一つは、実際に強制執行がしやすいという点。
これは公正証書を作成しておくことにより、裁判をする手間や費用、日数等に時間がかかりすぎることを大幅に縮小できるという利点もある。
また、特許等の工業所有権に関しても、この公証人役場の「事実実験公正証書」を作成することにより、特許裁判で勝った例もある。
これは、特許権や実用新案権を出願しても取得するまでにかなりの時間がかかってしまうために、あらかじめ公正証書を作成していたためにその会社は裁判で勝訴することができた。
この会社はある大手医薬品会社から特許権侵害で訴えられていた。
しかし裁判ではこの事実実験証明によって「先使用権」が認められた。
この会社が公正証書作成にかけた費用は5万円弱だという。
これは、公正証書の手数料と、公証人の実費などが含まれている。
しかしこの会社が公正証書を作っていなかったら、裁判は負け、多額の費用を支払わねばならなかったはずだ。
公証人役場は、一般の人はほとんど知らない、また利用する機会はめったにない。この公証制度は、不動産業、賃貸業、金融業等では知られているが、あまり利用されていないのも現実。この公証制度のルーツはギリシャ・ローマ時代にさかのぼる、雑多な民族が様々な取引をする場合が多かった。
そこで「契約」の重要性が社会的に認知されてきたことが、欧米で公証制度がはぐくまれてきた理由だという。
日本はいまだに取引においての契約にうといといわれている民族だが、この公証制度を上手に使えば、少ないコストでトラブルを未然に防ぐことができる。ちなみに確定日付スタンプは一組、700円とかなり安い。
一度著作権の証明に利用してはいかがでしょうか。
※注 この著作権noteは1999年からの事件を取り上げ、2000年、2001年と取り上げ続け、現在は2002年に突入。今後はさらに2003年から2020年~2022年に向けて膨大な作業を続けています。その理由は、すべての事件やトラブルは過去の事実、過去の判例を元に裁判が行われているからです。そのため、過去の事件と現在を同時進行しながら比較していただければ幸いでございます。時代はどんどんとネットの普及と同時に様変わりしていますが、著作権や肖像権、プライバシー権、個人情報なども基本的なことは変わらないまでも判例を元に少しずつ変化していることがわかります。
これらがnoteのクリエイターさんたちの何かしらの参考資料になればと願いつつまとめ続けているものです。また、同時に全国の都道府県、市町村の広報機関、各種関係団体、ボランティア、NPО団体等にお役に立つことも著作権協会の使命としてまとめ続けているものです。ぜひ、ご理解と応援をよろしくお願い申し上げます。
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