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『平安文学、いとをかし ―国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ』 @静嘉堂文庫美術館

大河ドラマ『光る君へ』の放送もあって、今年は特に平安時代がアツい1年でしたが、それを締めくくるような展覧会。
テーマは「平安文学」で、源氏物語が中心となっていました。

静嘉堂文庫美術館 エントランス

第1章では平安時代から読み継がれてきた有名作品の写本を展示。
簡単に「読み継がれてきた」と言ってしまいますが、よくよく考えると1000年かけて何人も、何人も、何人もの人に愛されては書き写されてきたことがとんでもないことだと思う。
平安時代の人の感性を室町時代の人も江戸時代の人も、みんな学びたいと思っていたということ。
第1章は、平安文学が今もなお読み継がれていることについて想いを馳せる内容でした。

私が第1章で一番興味を惹かれたのは『無明草子』という、鎌倉時代に成立した日本最古の批評文学の写し。
鎌倉時代の女性が『源氏物語』や『枕草子』についてどう思ったのかをフランクに書いているもので、令和に生きる私たちよりも生きた時代が近い女性が抱く感想がなかなかに面白かった。
『狭衣物語』について「言葉遣いはどことなく優美でとても上品ですが、取り立ててある場面が心に染み入るほど感動的だということもありません」などの辛口批評もあって、現代と変わらないなぁと思ったり。
作品が読み継がれるというのは、こういった批評家たちの力もまた必要だったのではないでしょうか。
だって、辛口批評された作品って気になるじゃないですか。

「無名草子」


第3章で『源氏物語』関連をたくさん。

「紫式部図」土佐光起

とりわけ目を引くのは2種類の屏風でしたが、個人的に印象的だったのは全く違っていて、『源氏物語古系図』がとても気に入りました。
内容は『源氏物語』を理解するために登場人物の人となりを書いたもの。
物語ってあまりにも登場人物が多いと分からなくなってしまうんですよね。
作品理解のためにメモっておくことは現代でもやること。
平安時代末期から行われてきた手法だったんですね。
『源氏物語古系図』は、古の人とオタク心を分かり合って握手したくなる作品でした。

「源氏物語古系図」伝 二条為親写

展覧会ラストは国宝『倭漢朗詠抄 太田切』。
藤原公任が撰出した『倭漢朗詠集』の写しといえども、こちらも平安時代から継承されてきた作品で、使われている紙も贅沢なもの。
美しい紙に美しい文字で綴られていて、うっとりです。

「倭漢朗詠抄 太田切」


エントランスにはフォトスポットということで、国宝『源氏物語関屋澪標図屏風』の高精細複製が置かれていて、記念に写真を撮ることもできます。
高精細複製ということでガラスケース越しではなく直接作品を間近で見ることができるのですが、かなり細密に再現されていてすごかったです。


最後に本展の図録に関しても触れさせてほしい。

最初はなんの変哲もない書籍かと思ったらとんでもない。
平安文学がテーマの展覧会ということで図録も一工夫されていて、和綴本風の装丁です。
しかも180度綺麗に開くし。
何冊もの薄い本を糸でかがってまとめて背に糊をつけている製本で「コデックス装」というものらしいです。
しかも糸が水色。
私主催2024 BEST図録装丁ナンバーワンです。
もう最高。
考えた人、天才。


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きんじょう めぐ
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