『レクイエム』(ジョナス・メカス、2019)
ポンピドゥーがポエトリー・デイを日本でも開催してくれたので見られた。Merci.
ヴェルディの同題曲へ捧げられた掌編であり、広義の雇われ仕事といえる本作。大枠はやはりエッセイ映画といえそうだが、①断片的に切り取られた草木や小動物に空模様などの自然②中間字幕的に挿入される「レクイエム」英語詞のテキスト③飢餓・貧困・死をモティーフとする写真群(「ハゲワシと少女」)やTVのニュース映像(火事や津波)、の水準に腑分けできる。
ほとんど〈退屈〉といってもいいほど牧歌的な①が、ホン・サンス『小説家の映画』で終盤突然画面に供される映画内映画のような①が全篇の9割を占めるなか、不意に②、③が差し込まれるためこちらはドキリとする。これには音楽も煽情的なのも影響している。
核となる人物がーー撮影者のメカス本人でさえーー不在であり、かつ宗教的な音楽が常に鳴り響くため、この映画はもはや神が撮ってしまったのではないかという印象ももたらす。ただ、同じく〈遺作〉でありながらナレーションの有無においてJLG『イメージの本』と本作は分かれる点に注意したい。
さらに見続けると、ここで花には単なる美しさ以上の意味が付与されているように思えてきて、ブルース・ベイリー『All My Life』も思い出された。