無名のベンチャー企業が厚生労働大臣を巻き込み、2,500もの保育園の使用済みおむつ持ち帰りを無くすまでにやったこと
BABY JOB株式会社でマーケティング・広報をしている東(@BJ_AZUMA)です!
このnoteを読んでいる人で、BABY JOB株式会社が何をしている会社なのか知っているよ!という人はいますか?🥺🙋♀️✨
…多分知らない人がほとんどですよね。(笑)
私たちの会社は大阪に本社を置く、おむつのサブスク事業をメインで提供しているまだまだ知名度の低いベンチャー企業です。そして私は、3年前に未経験の広報担当として転職してきました。
こんな知名度の低いベンチャー企業に所属する、広報未経験の一担当者が「厚生労働大臣」を巻き込んで国のルールを変えるまでにやったことを全て知れるとしたら...みなさん知りたくないですか?✨
世の中には、国がまだ気づいていない社会問題がたくさん存在します。そうした問題をベンチャー企業のパワーで変えていきたいと考えています。
そこで、私が経験を通じて得たノウハウをみなさんに役立てていただき、より良い社会を築いていければと思い、全て無料で公開することにしました。
長文にはなりますが、ノウハウが満載ですので、これから社会問題の解決に取り組みたいと考えている方には、ぜひ読んでいただきたいです。
ただ私は何か特別なことをした訳ではありません。
このnoteを最後まで読んでもらえれば、どんな企業のマーケ・広報担当者でも実践できることばかりだと、分かってもらえると思います。
私が取り組んだ社会問題は、「国を動かさなければ、この状況は変えられない」と最初から分かっていたため、逆算してコツコツと動いてきました。
今回のnoteでは、私が具体的にどのように考えて、どのような施策を行ったのか?そしてどのような結果に繋がったのか?を書いていきます。
忙しい人向けに結論から
時間がない人のために、結論から簡潔にお伝えします。(笑)
■私たちが国を動かしてでも解決したかった問題は何だったのか?
「保育園から使用済みおむつを持ち帰るルールを無くしたい!」ということです。
■施策前(2022年)の状況
「保護者に使用済みのおむつを持ち帰ってもらう」という謎のルールを適用している公立保育園がある自治体は全国で40%もありました。
■施策後(2024年)の状況
2024年4月時点ではその割合が40%→8%まで減少しています。数でいうと、約2,500の公立保育園がおむつの持ち帰りルールを廃止したことになります。
■なぜここまで改善できたのか?
国から「使用済みおむつは園で処分することを推奨する」という通達を出すことができたからです。
この通達が出された背景には、無名なベンチャー企業の広報担当(未経験)の地道な取り組みがありました。
■国を巻き込むまでの4ステップ
詳しく後述しますが、国を巻き込むまでには大きく4つのステップで進めていきました。
おむつの持ち帰り問題を解決したかった理由
国を巻き込むまでの4ステップについて話す前に、私たちがなぜこの課題を解決したかったのか少しだけ話をさせてください。
この問題を解決したかった理由。
それは保護者、保育士の双方の負担をなくしたい!と思ったからです。
使用済みのおむつを毎日持ち帰る保護者の負担、みなさんは想像がつきますか?
保護者はうんちやおしっこを含んで重くなったおむつを毎日持ち帰らなければいけません。
1日に使用するおむつは5〜6枚程度なので、バスケットボール1個分ぐらいの大きさになり、重いし、かさばります。もし年子や双子だったら、バスケットボール2個分を持ち帰ることになります。どう考えても大変ですよね。
さらに、このおむつを持ち帰らないといけないルールは保護者だけではなく、保育士にとっても負担になっています。
保護者に使用済みのおむつを持ち帰ってもらうために、子どもごとに袋を準備して分別する必要があります。
保育士はただでさえ忙しい中で、使用済みのおむつを間違えないように分別するのはかなり大変です。
実際に持ち帰った後、中身を見るとおむつ袋の中に別の子のおむつが入っているということも珍しくないようです。
私たちが提供しているおむつのサブスクは、5,000施設以上の保育園で導入されています。
ですが保護者におむつを持ち帰らせている保育園では、サブスクは導入されません。
なぜかというと、おむつのサブスクを利用すると名前の書かれていないおむつを使用することになるので、園としては名前の書かれていない使用済みのおむつを保護者に持ち帰らせることができないからです。(袋に入っているおむつが本当に自分の子のものかどうか、不安になりますよね)
全国的に使用済みおむつを持ち帰らない状況を作ることで、おむつのサブスクを導入できる保育園を増やしたい。
そうすることで、保護者や保育士の負担を軽減できるため、この課題を解決したかったのです。
なぜ国を巻き込む必要があったのか?
おむつの持ち帰りをなくしたいなら、企業がサービス提供してやればいいのに。
なんで国を巻き込む必要があったの?
そう思った人もいると思います。
ですが私は最初から、この問題を解決するには国を巻き込む必要があると感じていました。
なぜなら、全国の保育園でこのルールを変えたかったからです。
そうなると、保育園の大枠の方針を決めている国からどう行動すべきかの方針を出してもらうことが必要不可欠になります。
当時、厚生労働省が出している保育所における感染症対策ガイドラインには、「交換後のおむつは、蓋のついたごみ箱に捨てましょう」としか記載されておらず、その後のおむつの対応については、それぞれの園が正しいと思う方法で進めるしかありませんでした。
したがって、全国の保育園でおむつの持ち帰り問題を解決するためには、国を巻き込み、国から明確な方針を出してもらうことが必要だと考えました。
国を巻き込むまでの4ステップ
でも国を巻き込むって具体的に何をするの?経験もコネもない私がどうしたらいいの?状態でした。
無名のベンチャー企業である私たちが国に対して「おむつの持ち帰りをなくすために方針を出してほしい」と急に訴えても、うまくいかないことは容易に想像ができました。
そこで、国を巻き込むまでのステップを大きく分けて4つ考えました。
それでは、1つずつ説明していきます。
1ステップ目:問題の把握
問題を解決するためには、その問題について深く理解をしている必要があります。
そのためには、この問題に対してどんな人たちがどんな声を上げているのか、そしてこれまで解決されなかった背景には何があるのかを知ることが重要です。
このステップを省いて、「みんなの負担になっているから解決しなければ!」というだけで動いてしまうと、問題を理解していないために協力してくれない人たちが出てきたり、施策の方向性が間違ってしまったりします。
2ステップ目:世論を巻き込み
政治家の方に動いてもらうためには、多くの人から声が上がっていることを明確にすることが大事です。
「これだけ多くの人が悩みを抱えている社会問題なんだ!」と思ってもらえるように、世論を動かす施策を考えました。
3ステップ目:メディアの巻き込み
政治家の方に動いてもらうためには「最近この問題についてよく見かけるな...」という状況を作ることも大事です。そのために一番効果的なのは、メディア露出。この問題をメディアに取り上げてもらえるように工夫しました。
4ステップ目:国の巻き込み
私たちがこの問題を解決するには、国を巻き込むことが必要不可欠だったので、このステップには特に力を入れました。
国を動かすためには、その問題は本当に国が解決すべき問題なのかを示さないといけません。後述しますが、ここは本当に地道で大変な部分でした。
ここからはこのnoteを読んでいる人もマネしやすいように、4ステップで「なぜそれをやったのか?」「具体的にやったこと」「その結果」について書いていきます。
STEP①【問題の把握】先人に学ぶ&オンライン署名で1.6万人の賛同を集める
A:先人に学ぶ
■なぜこの施策をやったか
取り組もうとしている問題には、先に取り組んでいる「先人」がいると思います。
その人たちがこれまでに実施してきたこと、問題に対する考え、失敗や成功の経験を事前に学ぶことで、スピード感を持ってズレなく施策を進めていくことができると思い実施しました。
■どのように進めたか
使用済みおむつの持ち帰り問題には、ライターの髙崎順子さんという先人がいました。髙崎さんは2017年からこの問題に取り組み、メディアを巻き込んで論争を起こしていました。
髙崎さんとのつながりは全くありませんでしたが、X(旧Twitter)のDMが解放されていたため、失礼を承知で意見交換をお願いする連絡をしました。
急なご連絡にもかかわらず、髙崎さんは1日で返信をくれました。その1か月後には、オンラインで意見交換の時間をいただくことができています。
■結果
おむつの持ち帰りをなくすために、私たちは園や自治体でおむつの廃棄をしてほしいと思ってましたが、そうなると園や自治体にかなりの費用負担が発生すると思っていました。
ですが、髙崎さんと話したことで、おむつを廃棄するのにそこまで費用が掛からないということを教えてもらい、懸念が1つ払しょくされました。
また、高崎さんと話したことで、おむつの持ち帰り問題の全体像が把握できたことで理解が深まり、その後記者さんや議員さんとお話しするときに、具体的な話をすることができ、話が進みやすかったというメリットもありました。
先人に学ぶのは本当に大事なことなのですが、意外と見落とされがちなので必ずやってほしいです!
B:オンライン署名
■なぜこの施策をやったか
この問題が、そもそも多くの保護者の負担になっているのかを証明するためです。
おむつの持ち帰り問題は、保護者にとって負担になるだろうとは思っていたものの、私自身子どもがいないため、使用済みおむつを持ち歩く経験もしたことがありません。
どのくらいの保護者が課題と感じているかも分かりませんでした。
■どのように進めたか
そこでまず実施したのは、SNSでおむつの持ち帰りについてつぶやいている人がいないか調べることです。
調べてみると、2021年当時はおむつの持ち帰りに関するネガティブなつぶやきはほぼありませんでした。
私は正直驚きました。「おむつを持ち帰るのって臭いよね」とか「臭いおむつを持って買い物に行きづらい」という投稿があふれていると思っていたからです。
このような状況だったため、当事者がどのような課題を感じているのか知ることができませんでした。同時に、この問題は表面化しづらい状況にあると危機感を覚えました。
おむつの持ち帰り問題が本当に保護者の負担になっているのか不安になったため、次に実施したのがオンライン署名活動です。
「おむつを持ち帰るのは大変だ!」と思っている人がどれくらいいるのかを数字で知りたかったですし、ニーズがこれだけあると数値で出せればその後、関係者を巻き込みやすくなると思ったからです。
■結果
結果、開始して半年たらずで1万6千人の署名が集まりました!
これにより「やっぱりおむつの持ち帰りは、保護者にとって負担になっているんだな」と自信が持てるようになりました。
また、この署名活動により想定していなかった副次的な効果もありました。多くの人が署名サイトのURLをSNSでシェアし、この問題についてつぶやいてくれたのです。
多くの署名とコメントを見て、この問題に本格的に取り組む決意をしました。
STEP②【世論の巻き込み】SNSとサイネージ広告で、当事者以外も巻き込む
「おむつを持ち帰るっておかしいよね!」という声が上がりやすい状況を作るために、
A:かるた作成
B:大型サイネージ広告
という2つの施策を実行しました。
A:「持帰りなくすかるた」を作ってX(旧Twitter)で発信
■なぜこの施策をやったか
おむつの持ち帰り問題は、当事者以外の人にしっかり理解をしてもらうのが意外に難しい問題です。
「臭いって言っても飼い主が犬のフンを持ち帰るのと一緒でしょ」
「自分の子どものおむつ持ち帰るぐらい…」
など、重くて臭いおむつを持ち帰ることだけが問題だと思われがちです。
でも実際には、「帰ってから他の子の使用済みおむつが混ざっていることに気付く」「臭いがするおむつを持って買い物をするのはなんだか気になる…」といった、副次的な悩みが多く発生しています。
この状態では、「おむつの持ち帰りをなくそう!」という社会の雰囲気は生まれません。そこで、当事者以外の人にもこの問題を深く理解してもらいたいと思いました。
■どのように進めたか
まずは、当事者以外でもおむつの持ち帰り問題が理解できるように、イラスト付きの「持帰りなくすかるた」を作成しました。
これがXで拡散されれば、当事者じゃない人にも「え、こんな大変なことしてるの?そんな不合理なルールはやめようよ」という雰囲気が生まれると考えたのです。
なんでかるたという形を選択したかというと、私が小学校へ教育実習に行っていたときに防災対策をかるたにした「防災かるた」というものを使用していたのですが、それがとても分かりやすかったという経験があったからです。
そのぐらい誰が見ても分かりやすいものを作りたいと思って、「持帰りなくすかるた」を作ることにしました。(そこまで深い理由ではありません…(笑))
おむつの持ち帰り問題における保護者あるあるを表現した「持帰りなくすかるた」は、新しく作ったおむつの持ち帰りをなくす会公式Xで発信をしました。
■結果
結果として、当時のフォロワーが10人程度だったにも関わらず、多くの人がかるたに共感したり問題意識を持ったりしたことで、4,963インプレッション、約300いいね、200リツイートしてもらうことができました。
B:おむつの持ち帰りが多い4か所で大型サイネージ広告
■なぜこの施策をやったか
おむつを持ち帰っている保護者は「持ち帰るのが当たり前」、持ち帰っていない保護者は「持ち帰らないのが当たり前」と思っているため、おむつの持ち帰り問題は表面化しにくいという特徴があります。
なので、当事者および当事者でない人たちに対して、この問題に触れる機会を作りたいと考えました。
■どのように進めたか
そのために選んだ施策は、多くの人が行き交う場所にある大型サイネージで広告を出すことでした。
資金が潤沢にあるわけではなかったので、クラウドファンディングを活用して広告費用を集めました。
目標金額は737,000円でしたが、結果として目標を上回る786,500円が集まりました。応援してくださったみなさま、本当にありがとうございます!
クラウドファンディングで集まった応援資金を使って、大型サイネージの広告を4か所で出しました。
広告を出した場所は、後述するおむつの持ち帰り状況の調査結果に基づいて、おむつの持ち帰りが多い地域に決めました。
STEP③【メディアの巻き込み】調査結果をフックに100以上のメディアで露出
STEP3は、STEP2の世論の巻き込み施策と同時に準備を進めていました。
おむつの持ち帰り問題を多くのメディアで露出させるために、おむつの持ち帰り状況を調査し、その結果を活用して地方メディアに向けたアプローチを実施しました。
■なぜこの施策をやったか
多くのメディアでおむつの持ち帰り問題を取り上げてもらい、「最近よくこの話題を見るな...」という状況をつくるためです。
いろいろなメディアがありますが、まずは「地方メディア」に取り上げてもらえるように動きました。
理由は、下記の3つの傾向があるためです。
もちろん最初から全国メディアにアプローチする方法もあると思いますが、全国メディアは企業からの情報提供が多いため、その中でいきなり無名の企業が取り上げてもらうのは難しいと考えています。
もともと、いろんな保育園と話をする中で、園ごとに持ち帰りのばらつきがあることは知っていました。
また、首都圏よりも関西圏の方がおむつの持ち帰りが多いだろうという感覚もあったので、その地域差をフックに、「うちの地域は遅れている…まずい、問題提起しないと」と記者の方に思ってもらい、取り上げてもらおうと考えました。
地方メディアで多く取り上げてもらうことができれば、「各地域で話題になっている問題がある」と全国メディアからの取材にもつながっていきます。
■どのように進めたか
おむつの持ち帰りの地域差を明確にするために、ヒアリングをすることにしました。
関西圏の4県と首都圏の4県の361の自治体を対象に、「公立保育園でおむつの持ち帰りをさせているか」調査しました。方法はなかなかアナログで、361自治体の1つ1つに電話をかけて状況を確認するものでした。
正直これはめちゃめちゃ大変でした。ただ、振り返ってみるとこれが最も重要な施策だったと思います。
おむつの持ち帰り状況を調査した結果、東京23区ではおむつを持ち帰らせている自治体はゼロなのに対し、京都府では88%の自治体がおむつの持ち帰りをしていることが分かりました。
自治体ごとのバラつきがあることはもちろん知っていましたが、下図のように可視化すると、問題の解像度がより一層上がります。
おむつの持ち帰りをしている自治体を赤色で塗ると、2021年調査時の京都府はほぼ真っ赤…。
この調査結果を基にプレスリリースを作成し、大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・東京都の記者クラブへ投げ込みをしました。
■結果
結果として、NHKやMBS「よんちゃんTV」、毎日新聞、朝日新聞など、通算100以上のメディアに取り上げてもらうことができました。
多くの記者さんが「こんなにも自治体で差があるのか、一緒に子育て環境を良くしたい!」と問題に共感し、記事にしてくれました。これだけ取り上げてもらったことで、おむつの持ち帰り問題の認知度と理解度が一気に上がったと感じます。
多くのメディアに取り上げられたことで、地方議員が自分の自治体のおむつ持ち帰りをなくすために活動するケースが増えました。
また、弊社には議員から「データを提供してほしい」「他の自治体の事例を教えてほしい」といった問い合わせが増えていきました。
議員たちが問題意識を持って各地で活動してくれたことも、この問題の解決が進んだ大きな1つの理由だったと思います。
STEP④【国の巻き込み】議員と連携し、厚生労働大臣に要望書を提出
すべての保育園でおむつの持ち帰り問題を解決するためには、保育園を管轄している厚生労働省(令和6年4月以降はこども家庭庁の管轄へ変更)に対して「おむつの持ち帰りルールに対する方針を示してほしい」という要望書を提出する必要があります。
そしてこの問題をスピード感持って進めたかったので、厚生労働省の担当ではなく、大臣に直接要望書を提出したいと考えていました。
しかし、突然厚生労働省の門を叩いて「大臣に会わせてください!」というのは、大手企業の受付で「社長に会わせてください!」と言うのと同じぐらい常識のない行動だと思います。(普通は、社長に会わせるべき内容かどうかを社内の人間が一度確認してから繋ぎますよね?笑)
そのため、この問題に共感し、大臣に繋いでくれる議員とのつながりが必要でした。
ここでは、要望書を提出するまでに実施した下記の4つについて書いていきます。
A:議員とのコネクション作り
B:議員から施策に助言をもらう
C:国を動かすための全国調査
D:厚生労働大臣に要望書を提出
A:議員とのコネクション作り
多くのメディアに取り上げられたことで、社会全体が「おむつの持ち帰りは謎なルールだからなくしていこう!」という雰囲気にだんだんと盛り上がってきました。
国を巻き込むにはベストのタイミングでしたが、実際に巻き込むのは簡単ではありません。
厚生労働大臣に要望書を提出するには、議員と協力するのがベストだと思いましたが、私たちにそのつながりはまったくありませんでした。(多くの企業がそうだと思います。)
そこで私は、おむつの持ち帰り問題に共感して一緒に活動してくれている人たちに、厚生労働省につないでくれそうな議員がいないか聞き回りました。
XやFacebookのDMから議員に直接アプローチする手もあると思いますが、返信がもらえるかはわかりませんでしたので一旦実施しませんでした。
ありがたいことに、一緒に活動していた人たちから何人か議員を紹介してもらうことができました。
ただ次は、誰と一緒に進めるのがベストなのか?という新しい悩みが出てきました。議員の考えと私たちの会社の考えがずれてしまうと、絶対にうまくいかないと思ったからです。
そんな誰と一緒に進めるべきかを悩んでいた中、この問題に一緒に取り組んでいた髙崎順子さんから、子育て支援に積極的に取り組む寺田静参議院議員を紹介してもらいました。
信頼できる髙崎さんの紹介ということもありましたし、寺田議員のウェブサイトで子どもや保護者のために活動されている姿を見て、「私たちの会社ビジョンに近い!ぜひこの人と一緒に社会を変えていきたい!」と思いました。
B:議員から施策に助言をもらう
寺田議員にお時間をもらって、
・保育園で出た使用済みおむつを持ち帰らせることが保護者や保育士にとって負担になっていること
・この問題は地域によってばらつきがあり子育て格差が生じていること
を説明しました。
そして、この問題を解決するためには、厚生労働大臣に要望書を提出し、国からの方針を示してもらうことが重要なんだということも伝えました。
寺田議員は私の拙い説明に対して、「うんうん。」と静かに聞いてくれました。
そして「ママパパ議連の伊藤孝恵さんともこの問題について話をしたのですが、厚生労働大臣に要望書を持っていくには関西圏と首都圏のデータだけでなく、全国のデータがあったほうがいいんじゃないかな?」という助言をいただきました。
確かに全国的なデータがなければ国が判断するのは難しいかもしれないと気付き、全国調査に向けて動き出しました。
C:国を動かすための全国調査
助言通り、全国で「おむつの持ち帰り状況」の調査を実施することに。
みなさん、全国の自治体って何個あるか知っていますか?実は1700もあるんです...
前半で書きましたが、300自治体の調査で既にとても大変でした。あれだけ大変だったのに、次は全国1700自治体への調査は約6倍...!
正直気が遠くなりましたが、これは子育て格差をなくすためだ!!!と気合いを入れて調査を始めました(笑)
全国調査を実施した結果、全国の自治体のうち約40%がおむつを持ち帰らせていることがわかりました。
日本地図の上で色分けした結果を見ていただくとわかると思いますが、地域による格差がこれだけあることに驚きですよね…。
この結果を見て、「これは早急に解決しなければ」と強く感じました。
またこの全国調査の結果を厚生労働大臣に持って行けば、問題に感じてくれるのではないか?という自信にもつながりました。
D:厚生労働大臣に要望書を提出
この結果をもとに、厚生労働大臣に要望書を提出!
と、いきたいところですが、そんなにスムーズにはいきません。厚生労働大臣との面会の日程調整を進めていたのですが、大臣の多忙さから、直前まで決まりませんでした。
企業のトップですら日程調整が難しいので、官庁のトップとなると日程調整はかなり難航しました。
「明日か明後日、もしかしたら大臣に時間を取ってもらえるかも」
もしかしたら会えないかもしれないという不確定な状況ではありましたが、会える可能性がわずかでもあるならば!と大阪から東京まで急遽移動をしました。
そしてついに待ち望んでいた時が来ました!
2022年9月、要望書・全国調査の結果・1万6千人の署名を加藤元厚生労働大臣に無事提出することができました。(寺田議員のご協力のおかげです。本当にありがとうございました!)
この機会を心待ちにしていた反面、この問題を説明しても「はい、分かりましたよ」と言われるだけかもしれない...と不安も抱いていました。
ずっと抱えていたその不安は、いい意味でぶち壊されました。
加藤元大臣自身も娘さんのおむつ持ち帰りを経験されていたようで、「私も持ち帰っていたから分かるよ。臭いよね。(私が子育てしていた)岡山県は車だからまあいいけど、東京の人はどうやってやってるんだろと思ってた。(体調確認と言っても)おむつ開けてみる人いないよね、中にはいるのかもしれないけど」と、すでにこの問題に対して深い理解と強い意識を持っていらっしゃいました。
最後には、「厚生労働省で実態調査を実施します」と前向きな回答をいただくことができました。
そして...ついに!!!
2022年9月に要望書を提出してからわずか4か月後...
2023年1月、厚生労働省から各自治体に向けて「使用済みおむつは園で処分することを推奨する」という通達が出されました!
国から正式に「使用済みのおむつはどのように廃棄すればいいのか」の方針が示されたことになります!
この通達が出されたことを知った瞬間、「こんなに早く出してもらえるの!?」と本当に驚きました。だってまだ、要望書を出してから4か月しか経ってなかったんですから…。
「見間違いじゃないよね?」と通達を何度も読み直したことを覚えています(笑)喜びがこみあげてきたのは、上司に報告して冷静になってからでした。笑
通達が出てすぐにメディアの人たちに連絡し、喜びを共有しました!沢山の方が一緒に喜んでくださり、返信もいただきました!
また、プレスリリースも早めのほうが良いと思い、その日のうちに出しました!
国を動かし、たった2年で2,500園のおむつの持ち帰りを無くすことに成功
さて、気になるのは国を巻き込んでどこまで数値が改善したのか?という点ですよね。
この通達が出される前、2022年4月時点では、40%もの自治体が公立保育園で使用済みおむつを保護者に持ち帰らせていました。
そこから2年が経過し、通達が出された後の2024年4月に実施した全国調査では、おむつ持ち帰りをさせている自治体が40%から8%まで改善する結果となりました!👏
これは自治体の数でいうと、450以上にもなり、保育園の数でいうと2,500園以上が園内での廃棄へ変更しているということになります。
やはり国からの通達の効果はすごいですよね。一企業だけでは2年間で2,500園のおむつの持ち帰りをなくすことはできなかったと思います。
近い将来おむつを持ち帰るルールはなくなり、都市伝説になっているのではないでしょうか。
国と連携し、スピード感を持って子育て環境を良くしていきたい
これだけ大幅におむつの持ち帰り問題が改善されたことについて、2024年4月に加藤元大臣に報告しました。
加藤元大臣からは「合理化できるところは合理化していければ良いと思う」とのお言葉をいただき、私たちの活動に対する励ましとなりました。
ここまで無名のベンチャー企業と私の取り組みについてnoteに書いてきましたが、私たちの取り組みはきっかけにすぎず、ルールを変えられたのは弊社だけの成果ではありません。
今までこの問題に取り組んできてくれた人たちがいたからこそ、ここまでやり遂げることができたんです。この問題と向き合っていて改めて感じましたが、一企業ができることなんて限られています。
だからこそ、これからも子育て環境を良くしたい!という同じ想いを持った人たちと一緒に、1つ1つの問題に取り組んでいきたいと思っています。
現在、誰でも保育園に通うことができる「こども誰でも通園制度」の実証実験が始まっていたり、煩雑になっている保活をDX化させるために国が動いていたりなど、子育てを取り巻く環境が大きく変わろうとしています。
この機会を逃さずに、私たちは国や多くの人たちと連携をし、スピード感を持って「すべての人が子育てを楽しいと思える社会」の実現を目指していきたいと思います。
ここまで読んでくださった方へ
このnoteを読んで、良いなと思っていただいた方はぜひSNSでシェアをしていただけると大変うれしいです。
普段はX(@BJ_AZUMA)でも広報未経験向けのお役立ち情報や子育てに関する情報・ニュースを発信しています!もっとおむつの持ち帰り問題について詳しく知りたい方は、ぜひDMまでお願いします!
また、この件に関して登壇依頼もぜひお待ちしております✨
・手ぶら登園サービスサイト
・えんさがそっ♪サービスサイト
・取材依頼はこちらまでお願いします
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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