1.読み手を魅了する為に工夫を凝らした「言葉使い・表現」
1-1.1974年以前のキプロス島を念頭に、二分された社会、その双方にまとわりつく相手側への嫌悪感を Elif Shafak は次の様に描きます。日本語訳を読んでいるのでは、こんな「表現上の工夫」の存在に気付くことが出来るとは思えません。(Lines 22-25 on page 112)
1-2.雪嵐の朝に始まった一日、父と16才の娘の二人住まいのロンドンの家に初めて訪れた、今は亡き母の姉との三人で迎えるこの日の始まりは次のように描かれます。クリスマスを控えた一日の朝の描写は日本人が俳句や短歌で駆使したいと願う言葉の魔術そのものです。(lines 1-4 on page 122)
1-3 家族が背負うことになる、あるいは背負うことになった傷・荷物・トラウマを著わすのに、こんなに重苦しくない表現があるとはと感服です。トラウマに打ち勝つ・トラウマを乗り越えるエネルギーの存在を、私に教えてくれました。(Lines 1-4 on page 128)
2.初めて完読する英語小説として、強くお勧めします。
子供向けでない原書を、初めて、辞書と首っ引きででも読んでみようという方には最適な一冊と信じます。理由は次の通りです。
1)文章はその一つひとつが短いこと。
2)文法構造も明瞭で理解し易いこと。
3)話題の変化・展開が速くて退屈しないこと。
4)扱うテーマが人々の生活・生き方・主義主張に関わる普遍的で重いのですがそれにも拘らず、文章に鬱陶しさがないこと。
5)上に例示した通り、表現がこの上なく美しいのです。
3.Study Notes の無償公開。Part 2 の今回は原書 'The Island of Missing Trees' by Elif Shafak, a Penguin Book の Pages 50-142 をカバー