Tea break11 臨機応変さと柔軟性
6月になりました。
6月になると思い出すエピソードがあります。
ある年、雨が多く一日中雨だったり、本当にバケツをひっくり返したような大雨が降ったりしていました。
その年、私は統廃合のため5歳児しかいない園で担任をしていました。
以前お話ししたように、就学前施設の教育課程は学校教育の教育課程のように教材が固定されていたり、学習の過程、ゴールが決まっているものではなく、自由度が高いのでこのエピソードはその自由度を担任がどう臨機応変に変えていくかのお話です。
1. あれ?冷たい!?
絵画活動をしている時でした。雨が続き、子ども達も私もちょっとうんざりしている雰囲気も漂っている時でした。
「あれ? 冷たい!?」と子どもの少しびっくりした声が上がりました。
「ええ?雨??」「え?雨が降ってる?お部屋の中なのに?」と
周りの子どもも天井を見上げ始めました。
「ほんとだ!雨がお部屋の中に降ってきた」
2. これがあまもり!!!
現代の子どもは「雨漏り」なんて見たことも経験したこともなく、絵本の中で聞いたことがあるかどうか・・・。くらいの認知です。
統廃合が決まっていたために施設修理は見送られていて、なんとか今年度持てばいいな、という判断でしたが、とうとう雨漏りが始まってしまったのです。
「わぁ・・・ほんとだ。ほら見てごらん、これが雨漏りっていうんだよ」
と、私が言うと
「わぁ!!あまもりあまもり!」と子ども達は大喜びです。雨にうんざりしていた重い雰囲気はこの一件でどこかへ吹っ飛んでしまいました。
3. この時間のねらいは?
絵画制作の活動のねらいはもちろん『絵を描くこと』で、この時間は前日に遊んだザリガニの絵を描いているところでした。
ですが子どもの気持ちは雨漏りにトキメキ、少し気持ちがそれ始めていました。
そこで私は「ザリガニさんにも雨を降らせてあげようよ」と声を掛けました。
「いいね!ザリガニは、水が大好きだから喜ぶね」「ポツンポツン」「ほらザリガニさんにも雨漏りー」と赤や茶のクレパスでザリガニを描いていた子どもが水や青のクレパスを持ち描いたザリガニに水玉を降らせ始めました。
4. 子どものトキメキを逃さず捉え、臨機応変に対応する
もしこの時に担任が「ほら、絵が濡れちゃうから早く仕上げちゃお」や「そんなの気にしないで早く描いてしまおうよ」等の声掛けをしたらどうなったでしょうか?
絵は仕上がるかもしれませんが、子どものトキメキは置いてきぼりになってしまうのではないでしょうか。トキメいて大人に伝えてもそれに応えてもらえない経験の積み上げになってしまい、子どもは徐々にトキメキを伝えなくなるのではないでしょうか。
保育者にとってこの臨機応変さや柔軟性は保育の質の向上につながる大切な力だと思います。
5. まとめ
保育者は誰もが日々の保育の中でねらいに向けて日案をたてるまではしなくても、頭の中で保育を組み立てていると思います。
そこに自分が予期せぬことが起きた時にどう臨機応変に対応するか柔軟性をもって保育を組み立てなおせるか、は正直場数を踏むしかないのかな、と思うところです。ここでも子どもの「表情・仕草・つぶやき」を丁寧に捉え、
『子どものトキメキ』を捉え、それを活かそう、と柔軟な気持で保育をすることが大切なのだと思います。
私はこの後、室内で傘をさして通常の保育では経験できない経験をしました。
「ザリガニさんに雨が降らないように傘をさしてあげよう」「ポットンって雨の音がするね」など子どもならではの楽しい発想や発見が数多く生まれていました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
明日も楽しい保育でありますように♡