映画『ミスター・ロンリー』(2007年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『ミスター・ロンリー』は、
24時間365日マイケル・ジャクソンとして生きる青年が、ある日マリリン・モンローとして生きる女性に出会ったことから人生を見つめ直していくストーリーです。
ディエゴ・ルナのなりきりマイケルがなんとも言えない悲しい気分にさせてくれる1本です。
キャスト
・ディエゴ・ルナ(マイケル)
マイケル・ジャクソンになりきって生きる孤独な男性
・サマンサ・モートン(マリリン)
マリリン・モンローになりきって生きる女性
・ドニ・ラヴァン(チャップリン)
マリリンの夫
・ヴェルナー・ヘルツォーク(神父)
・レオス・カラックス(レナード)
・ジェームズ・フォックス(ローマ法王)
映画『ミスター・ロンリー』の見どころと感想
インパーソネーターと呼ばれるなりきり芸人のマイケル。パリの路上や施設の慰問で生計を立てていますが生活は苦しくなるばかり。そんなある日、マリリン・モンローとして生きる女性と出会います。
マリリンに誘われ同じインパーソネータたちのコミュニティがあるスコットランドの古城に向かうマイケル。そこにはマリリンの夫チャップリンのほか、7歳のシャーリー・テンプル、ジェームズ・ディーン、マドンナ、リンカーン大統領、ローマ法王、エリザベス女王がおり、「地上最大のショー」が計画されています。
マイケルにとってそこは理想郷のように思われたのですがー。
評)誰かになり切って生きる 地上最大の悲しい物語
悲しい。泣かそうとするストーリーではないのに、こんなに悲しい気分にさせられる映画も珍しい。
冒頭、バブルス(本家マイケルがいつも連れていたチンパンジー)のぬいぐるみをつないで小っちゃなバイクで走るマイケル。バックに流れるのはマイケルの曲ではなくボビー・ヴィントンの「ミスター・ロンリー」(日本ではラジオ番組『JET STREAM』でおなじみ)。ただそれだけなのに、これ以上の孤独はないと思わせるシーンです。
インパーソネーターという誰かになりきって生きる人々の空虚な世界。が、そこには「死」だけはハッキリとある。その皮肉とも思える世界は、マイケルのストーリーと並行して描かれるもう一つのストーリー(セスナに乗って布教活動をするシスターたち)にも見て取ることができます。
そしてこの映画、マイケル・ジャクソンの楽曲はいっさい使われておりません。マイケルは無音の中でポーズを決め、ムーンウォークをする。悲しい……。
本作でマイケルを演じるのは、マイケル・ジャクソンには似ても似つかないディエゴ・ルナ。が、その微妙さが現実を生きることができない主人公の虚無感を生み出しています。
そして映画監督のレオス・カラックス(『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』『ポンヌフの恋人』ほか)が胡散臭いプロモーター役で出演。そのカラックスの分身と言われたドニ・ラヴァンがチャンプリン役に。ヒロインのサマンサ・モートンもイイ。
見どころたっぷりの映画『ミスター・ロンリー』は、ぜひ悲しい気持ちになりたいときに。