映画『ハッピーエンド』(2017年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『ハッピーエンド』は、
フランス、カレーに住むブルジョア一家の物語です。
鬼才ミヒャエル・ハネケ監督が描くのは、孤独や裏切り、無関心に彩られた「家族の崩壊」です。この映画のラストは「ハッピーエンド」なのでしょうか。
キャスト
・イザベル・ユペール(アンヌ・ロラン)
ジョルジュの娘 家業を引き継いでいる
・ジャン=ルイ・トランティニャン(ジョルジュ・ロラン)
建築業で一財を築いたロラン家の家長
・マチュー・カソヴィッツ(トマ・ロラン)
アンヌの弟 医師 再婚の妻あり
・フランツ・ロゴフスキ(ピエール・ロラン)
アンヌの息子 家族や仕事に対し反抗的
・ファンティーヌ・アルデュアン(エヴ)
トマの前妻の娘
・ ローラ・ファーリンデン(アナイス)
トマの現在の妻
・オレリア・プティ(ナタリー)
チェロ奏者
・トビー・ジョーンズ(ローレンス)
アンヌの恋人
映画『ハッピーエンド』の見どころと感想
フランス、カレーに暮らすロラン一家。
高齢で引退したジョルジュのあとを継いで建築会社を取り仕切るアンヌは、建築現場で起きた崩落事故に奔走中。息子のピエールはビジネスマンとしてはまだまだ未熟、弟のトマは前妻(ヤク中で死亡)との間の娘エヴを引き取ることにー。
そんな中、ジョルジュが行方不明になりー。
評)他人に向けられる無責任な想像や詮索、決めつけといった”不快な”関心
裕福だけど訳ありなロラン一家。
もうちょっとネタバレすると、弟のトマはSNSで不倫中なんですね。それを娘エヴは気づいてしまう。で、このエヴ自身もものすごい闇を抱えていて、そこが祖父ジョルジュと不思議な共鳴をしていくー、このジジイと孫娘2人のシーンは、ただならぬ緊張感があります。
誰ともつながることのできないエヴとジョルジュ。
家族を裏切っているトマ。
家族に疎外感を感じているピエール。
そしてそのことに気づかないアンヌ。
SNSで自分に「都合よく」誰かと繋がれるようになった今の社会において、家族というのは、もっとも「都合よく」いかない小社会です。
この映画に対し、ミヒャエル・ハネケ監督自身はこうコメントしています。
”不快”な映画がなぜ必要なのか。
この映画には、遠くからのショットで表情も見えない、セリフも聞き取れない(ので字幕も出ない)シーンがいくつかあります。
車いすで街に出たジョルジュが、黒人青年らに何かを話しかけるけど応じてはもらえない。とあるアパートを訪ねたピエールが、入り口で一方的に殴られている。「何が起こっているんだろう」想像するしかないシーンです。
ここで見る側が味わうのは「傍観」という無責任な関心です。
ネット社会で他人に向けられる無責任な想像や詮索、決めつけといった”不快な”関心に似た気持ちではないでしょうか。ラストのエヴの行動が、その無責任な関心が他人ではなく「家族」に向けられたものだとしたらー。
このラストが『ハッピーエンド』なのかー、は、ぜひ映画でおたしかめください。
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