映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、
ベトナム戦争の実態を記録した機密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)の暴露をめぐって、報道の在り方と新聞社の存続に苦悩する女性経営者を描いた映画です。
スピルバーグ監督にメリル・ストリープとトム・ハンクスという最強布陣。歴史と政治背景の予備知識があればなお楽しめる1本です。
キャスト
・メリル・ストリープ(キャサリン・グラハム)
謎の自殺を遂げた夫の後を継いで「ワシントン・ポスト」の発行人となった女性
・トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー)
ワシントン・ポストの編集主幹
・サラ・ポールソン(トニー・ブラッドリー)
ベンの妻
・マシュー・リース(ダニエル・エルスバーグ)
元軍事アナリスト 勤務先から機密文書を持ち出す
・ブルース・グリーンウッド(ロバート・マクナラマ)
アメリカ合衆国国防長官
・ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン)
ワシントンポストの編集局次長
・ジェシー・プレモンス(ロジャー・クラーク)
ワシントン・ポスト上級法律顧問弁護士
映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』の見どころと感想
1971年。ベトナム戦争は泥沼化し、アメリカ国民の間で戦争反対の声が高まっていました。
ベトナム戦争の実態を報告した文書を勤務先から持ち出し、国内最有力誌のニューヨーク・タイムズにリークする軍事アナリストのエルスバーグ。
ニューヨーク・タイムズはこの文書の一部をスクープ記事として掲載しますが、政府から差し止め要求がかかります。後追いで報道しようとする新聞各社が二の足を踏むなか、ワシントン・ポストの編集主幹ベンはチャンスと捉えタイムズ紙が報道しなかった文書の入手を試みます。
ワシントン・ポストの社主(発行人)であるキャサリンは、文書に関与しているマクナラマ国防長官が長年の友人であることから積極的な報道には躊躇します。さらに差し止め命令が下った報道をすれば新聞社そのものの存続もー。
ベンが推し進めるジャーナリズムの信念と、経営者として会社を守らならなけばならないことの板挟みになるキャサリンの決断はー。
評)ケネディ政権下の政治背景を理解しておけばより楽しめる
スピルバーグ監督でメリル・ストリープとトム・ハンクス。これで面白くないはずはない。
唯一問題があるとすれば、見る側(私)の政治的知識ですよ。ケネディ政権のベトナム派兵拡大、その後の暗殺事件、泥沼化する戦況と国内で高まる反戦運動。こうした背景をザックリとしか理解していないことがホントに悔やまれました。
映画はメリルさん演ずる女社長が隠ぺい体質の政府と戦う話というよりも(結果的にはそうなんですが)、その中でいかに難しい立場におかれていたか、で、それをどう乗り越えたか、というところが見どころ。
女社長キャサリンは亡き父が買い取り、亡き夫が守ったワシントン・ポスト社に思い入れがある。はじめはただのセレブ?と思わせるけれど、新聞社としての社会使命も理解しているキャサリン。で、「女がトップだとー、」と首脳陣にわかりやすく嫌味を言われたり苦労するんですよ。
ジャーナリスト魂!のベンはそんなキャサリンの立場をわかってんのか、グイグイ「掲載するぞ!掲載するぞ!」の勢いが止まらない。さあ、どうするキャサリン!
メリルさんとトム・ハンクスの名優2人に加え、私のイチ押し役者が脇で光ります。「(キャサリンの)女の苦労もわかってあげてね」と夫ベンを優しくサポートする妻にサラ・ポールソン。さらにベンらを法的立場からサポートし、緊張感をほどよく緩める弁護士にジェシー・プレモンス。
ラストはワシントン・ポストを敵視しホワイトハウスから締め出そうとするニクソン大統領を描きます。で、ここがそのニクソン大統領の「ウォーターゲート事件」を描いた『大統領の陰謀』(1976年・アラン・J・パクラ監督)の冒頭シーンつながるようにできている!お見事!
まさに隙なしの見事な1本です。