映画『散歩する惑星』(2000年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『散歩する惑星』は、
不詳の世界で展開する白塗りの人々の群像劇です。カンヌ国際広告祭で8度の受賞を果たしたCM界の巨匠ロイ・アンダーソン監督による長編映画。さまざまな不条理をシュールにシニカルに「現実世界もこうかも……」と思わせる1本です。
キャスト
・ラース・ノルド(カール)
家具屋 自ら火をつけ店を失う
・シュテファン・ラーソン(シュテファン)
カールの次男
・ルチオ・ブチーナ
マジシャン
映画『散歩する惑星』の見どころと感想
勤続30年、無遅刻無欠席なのにあっさり解雇されてしまう男、人体切断のマジックで失敗してしまうマジシャン、どこまでも続く渋滞ー。
そんな世界の中に保険金目当てに自ら火を放ち店を失ってしまった家具店主のカールが。カールの長男はかつて詩を書いていたものの、今は精神を病み抜け殻のよう。そんな息子を憂うカールはときに声を荒げてしまうー。
ただ穏やかに暮らしたいだけなのにー。
評) シュールでバカバカしくて不条理。これは現実社会そのものかも
いきなりナンですが、ストーリーの書きようがないんですよ 、ホントに。
メインは家具屋のカールですが、そのカールに関係あるようなないような人たちがそれぞれの不幸を嘆いたり抗ったり、というシチュエーションが次々に展開される作品です。
どこの国とも思えない白い世界。登場人物たちの多くは白塗りです(「時代や場所を特定しない、普遍的なキャラクターを表現して欲しかった」と監督 ← どういうこと!?)。
その独特の世界の中には、100歳を超えたナチスの残党や迫害され絞首刑となった青年(首にロープがついたまま)がいたり、「本を読め」と勧められ、信仰の生贄となる少女がいたり(映画『ミッドサマー』に影響を与えたシーンらしい)、キリスト像で一儲けしようとする人がいたり、さらに大量の荷物をカートに積んて空港に集まる人々がー。
これら一つ一つのエピソードは権威や宗教、お金に救いを求めてしまう現代社会を風刺したものでしょう。
繰り返し出てくる「慈しむべきは座らせる者、痛みと恥に悩む者」は、ペルーの詩人、セサル・バジェホ「ふたつの星の間でつまずいて」の一節だと。
普通の人々が、ただ穏やかに暮らしたいだけなのに思い通りにならない。
まさに今の社会を映し出している1本です。
この不思議な世界が、CGを使わずに作られているという点も見どころ。
すべてがセットで撮影されたもので、渋滞も群衆も書き割りやミニチュアというのも驚きです。
映画『散歩する惑星』 ぜひ。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?