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映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画タイトル:SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
原題:She Said
製作年:2022年 アメリカ
監督:マリア・シュラーダー
映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』は、
#MeToo運動のきっかけとなった映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる性犯罪の告発の裏側を描く社会派ドラマです。
不条理な契約や示談金によって口を閉ざされた被害者たち。その被害者たちを説得し、支え、妨害工作を乗り越え記事を公開する記者。被害者に対する細かな配慮と誠実さを感じる力作です。
キャスト
・キャリー・マリガン(ミーガン・トゥーイー)
ニューヨーク・タイムズ紙の記者 本件のさなかに妊娠、出産を経験する
・ゾーイ・カザン(ジョディ・カンター)
同記者 子育て中
・パトリシア・クラークソン(レベッカ・コルベット)
ニューヨーク・タイムズ紙 ミーガンとジョディの上司
・アンドレ・ブラウアー(ディーン・バケット)
同
・ジェニファー・イーリー(ローラ・マッデン)
ミラマックス社の元社員 被害者の一人
・サマンサ・モートン(ゼルダ・パーキンス)
ミラマックス社の元社員 被害者の一人
・アシュレイ・ジャッド(本人)
ハリウッド女優 被害者の一人
映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』の見どころと感想
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ニューヨーク・タイムズ紙の女性記者ミーガンとジョディは、大統領選挙中にドナルド・トランプ(当時候補者)から性被害を受けた女性を取材することに。しかし、トランプ側から逆に訴えられることを恐れ口を開かない被害女性。取材は難航し、やがてトランプは大統領に就任します。
その後も企業のハラスメントを取材する2人のもとに映画界の大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラの情報がもたらされます。
情報をともに取材を進める2人は多くの被害女性の存在をつかみます。が、取材に応じても実名で告発することには同意しない被害者たち。被害者は不条理な秘密保持契約と精神的な抑圧によって口を閉ざされていました。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙の取材を嗅ぎつけたワインスタインは執拗な妨害工作をー。
記事の信ぴょう性のためには実名で告発する被害者が必要。そんな中、ある人物が実名での告発を決意し事態は大きく動き始めます。
評)今さら、ポリコレ、大コケ、そんな愚評はどうでもいい真摯な力作
#MeTooが世界中で大きなムーブメントとなったこの事件。事件は記憶にも新しく、告発記事はピューリッツァー賞を受賞。この映画の原作にもなったノンフィクションもベストセラーになりました。
そして大きな注目と期待を受けての映画化。が、公開当時の評判はイマイチ。興行的にも大コケと伝えられました。
告発から5年。その後多くの被害者が声を上げワインスタインは塀の中へ(禁錮23年、後に禁錮16年が上乗せ)。この映画の背景は多くの人が知るところとなり、今さらー、と見られたとも。
さらに映画の作りは実直で映画的な面白さに欠けるとの声も。被害を証言ではなく再現シーンを加えるなどし、もっと映画的な見どころを加えることもできたはず。そしてやはり題材がポリコレ、フェミニズムと見なされたことが、ヘイトやバックラッシュが強まるなか不利に働いたと思われます。
が、そんな評価がなんぼのモンじゃい!です。
ワインスタインのゲスさだけでなく、被害を封じ込める、被害を認めない社会構造に絶望した被害者たちを本当に知っていたのか。そんな被害者の心と口を開かせた記者たちの真摯な姿をエンタメで消費していいのか。煽情的な演出を一切排した”あえて”の映画的な面白さの欠如こそ、この映画の神髄ではないでしょうか。
記者を演じる2人はともに熱演です。キャリー・マリガンの第一声の低音に驚き、ペタンコ靴で走り回るゾーイ・カザンにくぎ付けになります。そして本人役で出演したアシュレイ・ジャッドの強さにも敬意を。
”今さら”だの”ポリコレ”だの”大コケ”だの、そんなことはどうでもいい。私はこの映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』を激推します。ぜひ。
◆原作のレビューもぜひ