映画『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(2019年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』は、
旧東ドイツ時代シュタージに協力していた過去をもつ実在のミュージシャンのストーリー。
普段は炭鉱で働きながらミュージシャンとしても活動したグンダーマン。が、その裏では知人や友人の情報を当局に密告していました。東西統一後、その事実が明るみになりー。
キャスト
・アレクサンダー・シェアー(ゲアハルト・グンダーマン)
シンガーソングライター
・アンナ・ウィンターベルガー(コニー・グンダーマン)
ゲアハルトの妻
・アクセル・プラール
シュタージ幹部
・ミラン・ペシェル(フォルカー)
グンダーマンの同僚
映画『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』の見どころと感想
1992年、シンガーソングライターのゲアハルト・グンダーマンは知人から自身がシュタージの「非公式協力者」であったことを指摘されます。
いずれは明るみになるという不安から、グンダーマンは自ら自分の過去を告白していきます。
が、自分もまた同僚のフォルカーに監視されていたことを知りグンダーマンの心は大きな葛藤を抱えることにー。
評)つかみどころのない態度に映す社会主義体制の影
過去と向き合おうとする1992年のグンダーマンと並行して、シュタージに協力していた当時(1975年~)が描かれています。この両時期が意図的になのか区別しずらくちょっと厄介です。(ザックリいうと、銀縁メガネで髪を結んでいるのが92年、セルフレームが75年です)
ストーリーを捕捉しますと、炭鉱夫として働くグンダーマンは職場環境の改善を求めたり、ミュージシャンとしては反体制的な歌(東欧のボブ・ディランとも言われていた)を歌ったりしていました。
が、当時の東ドイツ社会には希望を持っていたグンダーマン。しかし、軍を除隊させられ、その後の行動で党員も除籍に。それでも社会につながっていようと「非公式協力者」になったという非常に危ういアイデンティティを抱えていたということが、この解りにくい展開の中から見えてきます。
シュタージに協力していたという告白も、ホントに悪いと思ってんのかな? と思えるほどサラッとしていて、「何を(シュタージに)報告したのか覚えていない。そんな重要なことは言ってないはず……」という態度。謝罪を求められても「何に謝るの? 」といった具合です。そしてバンド仲間のことは妻を寝取った(しかも部屋ごと!)ことにも思い悩んでいるようには見えません。
が、これは決してグンダーマンが鈍いアレな人、というのではなく、自分が自分であることにさえズタズタになった自己の中にいるのだと思いました。そうさせたのは当時の東ドイツの監視社会。この現実が重くのしかかってきます。
そしてグンダーマンの心のよりどころであった音楽。主演俳優によるカバーとは思えない名演も見どころの映画『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』 ぜひ。