映画『ある過去の行方』(2013年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『ある過去の行方』は、
離婚、再婚問題をめぐる見応えたっぷりの愛憎劇です。
互いに子持ち同士の再婚、反発する思春期の長女、元妻の自殺未遂ー。狭い世間の中で巻き込まれる子どもたちをよそに、大人たちが臆面もなく愛憎を見せつける、とっても生々しい1本です。
キャスト
・ベレニス・ベジョ(マリー)
薬剤師 2児の母
・タハール・ラヒム(サミール)
マリーの恋人 クリーニング店経営 1児の父
・アリ・モサファ(アフマド)
マリーの夫 離婚手続き中 イラン人男性
映画『ある過去の行方』の見どころと感想
マリーとアフマドは4年前から別居状態の夫婦。正式な離婚手続きのためにマリーの暮らすパリを訪れたアフマドは、長女リシューとマリーの再婚相手ですでに同居中のサミールとが不仲であることを知ります。
サミールの元妻(こちらもまだ正式には離婚が成立していない)セリーヌは洗剤を飲んで自殺未遂の末、植物状態で入院中。サミールとマリーは鬱病が原因と思っていましたが、リシューは2人の不倫関係が原因で、そのことをセリーヌに伝えたのは自分だとアフマドに告白します。
アフマドからそのことを聞かされたマリーは激怒。リシューを激しく罵ります。
が、このことを知ったサミールは、リシューが電話でセリーヌ自身からメールアドレスを聞いたという経緯に疑問を抱きます。
セリーヌの自殺未遂の真相が明らかになるに従い、マリーとサミールの関係にも亀裂がー。
評)大人たちが臆面もなく見せる生々しい愛憎劇
もう、あらすじには書ききれないほど複雑な家庭事情なんです。捕捉しますとマリーの二人の子はアフマドの実子ではありません。マリーはアフマドの前にも結婚歴があり、二人はその夫との子ども。リシューは10代後半で次女はまだ幼児ということから、もしかすると二人の父親も違うのかもしれません。
一方、サミールの子どももまだ幼い。前述のとおりサミールの妻は植物状態で入院中。なのに、マリーとの再婚を考えすでに同居、しかもすでに妊娠中とは穏やかではありませんな。
そんなゴタゴタの状況に正式な離婚手続きのためにパリに呼び戻されたアフマド。この”正式なー”というのもどうやら口実のよう。離婚の原因もマリーにあるようでー。
よくある愛憎劇ではあるものの、この生々しさはどこから来るのでしょう。
生活感しかないマリーの家。大人の大ゲンカにおびえる子どもたち。クリーニング店とか薬局という設定も生活感がありすぎて妙に生々しいのです。
このドロドロの事態を招いたのは恋多き女マリーなんですが、どうやらマリーの本心は複雑でー。そのマリーを演じるベレニス・ベジョは本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。熱演です。
とにかく子どもがめちゃくちゃ可哀想なんですが、そこをストーリー的にフォローすることもなく、とことん大人たちの愛憎を見せつけられる映画『ある過去の行方』 気力、体力のあるときにどうぞ。