映画『ロンドン、人生はじめます』(2017年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『ロンドン、人生はじめます』は、
ロンドンのハムステッドを舞台に、人間関係に疲れた未亡人と自然に囲まれて暮らす男との出会いを描くヒューマンドラマです。
2007年の実際の出来事を基にしたこの映画。自分らしく生きることをダイアン・キートンがお洒落に指南してくれます。
キャスト
・ダイアン・キートン(エミリー・ウォルターズ)
高級マンションに暮らす未亡人 夫を亡くした後、さまざまな問題が発覚
・ブレンダン・グリーソン(ドナルド・ホーナー)
広大な自然公園ハムステッド・ヒースで自給自足の生活を送る男性
・ジェームズ・ノートン(フィリップ)
エミリーの息子
・レスリー・マンヴィル(フィオナ)
エミリーと同じマンションに住む友人
映画『ロンドン、人生はじめます』の見どころと感想
高級マンションに暮らす未亡人のエミリー。夫の死後発覚した多額の借金や浮気、さらには老朽化したマンションの修繕費の負担と奥様同士の人間関係にウンザリした日々を過ごしています。
ある日、夫の遺品の中からアンティークの双眼鏡を見つけたエミリー。屋根裏部屋からふと外を眺めていると、公園に建てられた手作りの小屋を発見します。小屋には一人の男性が。その男性のことが気になるエミリーはその後も観察を続け、ついに直接男性を訪ねてみることに。
男性の名はドナルド。17年前からここに住んでいて退去するよう嫌がらせを受けていると。はじめは互いに警戒し合うエミリーとドナルドですが、庭でのディナーや読書、散歩などで心を通わせていきます。
そんなある日、ドナルドの小屋が破壊。不法占拠を理由にドナルドは立ち退きを迫られることに。エミリーは裁判に打って出ることを決意しー。
評)強く、温かく、そして美しく生きようと思わされる1本
実話に基づいた映画ですが、不法占拠も年数が経てばー、という見方をしてはいけないのでしょう。
裁判で相手方弁護士に税金を払っていないことを指摘され、ドナルドは「自給自足の生活で誰にも迷惑はかけていない。ごみ処理に必要なお金も使っていない」と反論。これには、税金を払っている身としては、ん? と思わなくはないのですが、そうよね、そういう視点で世の中を見ることも必要なのかな、と思わされました。
ドナルドがなぜこうした生活を送っているのか、その経緯にグッとくるし、そんなドナルドに惹かれるうちに、自分のこれまでの上っ面だけの生き方を恥じるエミリーの気づきにもハッとさせられるし、なにより「自由に生きる権利」を認めるイギリスの文化がいい。大人。もし、日本にこんなオジサンがいたら、近所迷惑だ、行政でなんとかしろ、退去だ、撤去だ、と毎日ワイドショーを賑わすだけでしょう。
で、なんといってもお洒落。ダイアン・キートンのシニアファッションがこの映画でも堪能できます。ベレー帽、黒ぶち眼鏡、首元を隠すおなじみのスタイルが、ロンドンの街並みにも、ハムステッド・ヒースの緑にも映えます。手作りの小屋だの、借金まみれだのといいながら、ちゃんと手をかけた生活は美しいのです。
強く、温かく、そして美しく生きよう。そう思わされる1本です。