映画『グランド・ブダペスト・ホテル』(2013年)の ザックリとしたあらすじと見どころ
映画『グランド・ブダペスト・ホテル』は、
1930年代のヨーロッパを舞台に、伝説のコンシェルジュとホテルボーイが繰り広げるコメディタッチの群像ミステリーです。
全編にわたる美しい映像と豪華キャストの作品ですが、それだけではない深いメッセージが込められている映画です。
キャスト
・レイフ・ファインズ(ムッシュ・グスタヴ・H)
伝説のコンシェルジュ オーナー不在の「グランド・ブダペスト・ホテル」を仕切っている
・トニー・レヴォロリ(ゼロ・ムスタファ)
グスタヴが信頼を置くホテルボーイ
・ティルダ・スウィントン(マダム・D)
グランド・ブダペスト・ホテルの常連客
・エイドリアン・ブロディ(ドミトリー)
マダム・Dの息子 グスタヴの存在を快く思っていない
・ウィレム・デフォー(ジョプリング)
エイドリアンが雇った殺し屋
・シアーシャ・ローナン(アガサ)
ゼロと恋仲になる菓子職人
このほか、ハーヴェイ・カイテル、ジュード・ロウ、エドワード・ノートン、ビル・マーレイなど豪華なキャストです。
映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の見どころと感想
舞台は1930年代のヨーロッパの架空の国ズブロッカ共和国にある『グランド・ブダペスト・ホテル』
このホテルには世界一と言われるコンシェルジュ、グスタヴがおり、彼を目当てに世界中からセレブマダムがやってきます。「裕福だが年老いており、不安げで虚栄心が強く軽薄で(性的に)飢えている金髪」を相手に夜のおもてなしをするグスタヴ。御年84歳のマダム・D(ティルダが驚きの老け役です)も常連客の一人でした。
が、このマダム・Dが自宅で謎の突然死を遂げます。「『少年と林檎』という絵をグスタヴに贈る―」という遺言のもと、1枚の絵がグスタヴの手に渡ります。
その後マダム・Dの死因は毒殺と判明。その疑いがかけられたグスタヴは逮捕、収監。しかし、ロビーボーイのゼロに脱獄のための道具を差し入れさせ、同房の仲間とともにグスタヴは脱獄します。
マダム・Dの息子が差し向けた殺し屋に追われながらも、コンシェルジュの謎のネットワークに助けられ、どうにか逃げ延びるグスタヴはー。
評)ポップでオシャレな笑いの裏にある「戦争がある世界」の影
この映画、ちょっと構造的にややこしいことと、映画の最後にある『この映画は、シュテファン・ツヴァイクの著作と生涯にインスパイアされた』がポイントです。
1930年代の上記のストーリーと、1960年代の閑散としたグランド・ブダペスト・ホテルでこの話をオーナー(晩年のゼロ)から聞く作家の話、さらにはその作家の残した著書を墓前で読む女性(現在)の3段階の入れ子構造になっており、スクリーンサイズが変化します。
シュテファン・ツヴァイクというのは1930-40年代に注目を集めていたオーストリアの作家です。ナチス政権下の反ユダヤ主義によって作家活動ができなくなり、他国へ亡命。失意のまま自殺してしまい、近年は忘れられた存在となった人物。
ウェス・アンダーソン監督は、このシュテファン・ツヴァイクへのオマージュとしてこの映画を作ったのです。
シーンのすべてが菓子細工のように美しく、セリフもポップでオシャレな笑いあり。主演のレイフ・ファインズ以下、豪華なキャストの映画ですが、その裏側には「戦争がある世界」の影を感じる作品です。