映画『たかが世界の終わり』(2016年)のザックリとしたあらすじと見どころ
映画『たかが世界の終わり』は、
疎遠にしていた家族に、自身の余命が僅かであると伝えに来た劇作家でゲイの次男とその家族を描くヒューマンドラマ。全編感情的で緊張感が絶えない作品です。家族とはわかりあえるものなのかー。
キャスト
・ギャスパー・ウリエル(ルイ)
劇作家
・ナタリー・バイ(マルティーヌ)
ルイの母
・ヴァンサン・カッセル(アントワーヌ)
ルイの兄
・マリオン・コティヤール(カトリーヌ)
アントワーヌの妻
・レア・セドゥ(シュザンヌ)
ルイの妹
映画『たかが世界の終わり』の見どころと感想
12年ぶりに帰郷し家族と再会するルイ。ルイは劇作家として成功したものの余命僅かと診断されています。
家族との溝を埋めようとするルイ。しかし、母は一方的な愛を押し付けるだけで現実を見ようとせず、兄アントワーヌはルイのすべてを否定し取り付く島もない。そんなアントワーヌに露骨に反発する末妹のシュザンヌは、家を出たルイとの思い出がほとんどありません。アントワーヌの妻カトリーヌとも初対面。
ぎくしゃくしたまま食事をとる5人。
そしてルイはそれぞれにあてた手紙を書いて家を去ろうとしますがー。
評)家族というつながりを一旦全否定して、それでもつながることを肯定
普通に見ればルイが気の毒に思える話。ルイはゲイで、おそらく病気はエイズでしょう。
冒頭に流れる曲のタイトルが「Home is where it Hurts(家とは傷つく場所)」で、歌詞にも ”家は救いの港じゃない” とあって、「ははん、このルイは帰ってみたものの家族とはうまくいかないのだろうな」と予測というか覚悟をしてこの先を見るわけです。
が、帰り着くや否やなんやかんやあるなかで、母と妹が踊り始める。その曲が「恋のマイアヒ」(原題:Dragostea Din Tei)なもんだから、このあとずーっとマイアヒが脳内を駆け巡る。
が、映画はどんどんシリアスさを増していき、「なぜ帰ってきた?」「実はオレ……」を直接口にすることなくその周辺のどうでもいいことで感情をぶつけ合う家族。12年前にルイが家を出た理由もわかり、不自然に明るい母やブチ切れる兄、とそれにキレる妹の心の内もなんとなく見えてくるのです。で、全部をお見通しなのに何も言えない兄の妻の気持ちもわかる。
家族というつながりを一旦全否定して、それでも人は何かしらの表現でつながろうとすることを肯定する。そんな映画です。それは「戸惑い」かもしれないし、「怒り」かもしれないし、「黙っていること」なのかもしれない。マイアヒさえなかったら……。