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【神田カレースタンプラリー(31)】トプカ 神田本店

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2024年11月初旬

今日は午前中に派遣社員だけが集められた。
9月の終わりに責任者が急に降職させられてから、宙に浮いていた組織の新編成案が定まったという通達のためだった。

新編成により、私の直属の上司が隣の席の社員さん(天使)になった。これはありがたい。
自席に戻ってから改めてご挨拶し、嬉しいです、と正直な感想を添えたところ、「ごめんね、言わせてるよね」と、卑屈な返しでヒリつかせてくるあたり、やはり天使だなと思う。

気になる元責任者はというと、たった一人で特定の案件の窓口担当に任じられていた。
彼は今どういうモチベーションで働いているのかがすごく気になるが、派遣社員が興味を持ってはいけない領域っぽいので誰にも聞けない。

まだ毎朝ミーティングで顔を合わせていた頃に、元責任者がおすすめしてくれたカレー屋さんに今日は行くことにした。


トプカ神田本店」は神田須田町にある有名店。
コック帽をかぶったおじさんの人形が目印。
(野性爆弾のくっきーに似てる。)
人形の佇まいから、このお店の長い歴史が伝わってくる。

店の前に写真つきのメニュー看板が置かれていた。
一番最初に書いてあるのが「ムルギカリー」、次が「ポークカリー」、その隣に「キマカリー」。
キマカリーだけ見た目がかなり違う。水分の少ないカレーのようだ。
すごく美味しそうだけど、このお店の推しはやっぱり汁っぽいカレーなのかな…

悩んでいると、ガラス越しに視線を感じた。
魔女のような店員さんが、中で待ち構えている。
なぜか自分に非がある気がした私は慌ててドアを開け、「すみません」と中に入った。
すると強い「いらっしゃいませ」からの、強い「食券制です」。
入り口で先に注文するということだと理解した。
店員さんの前にはレジスターとアルファベットの書かれた紙が並んでいる。これが食券か。

ダークな色の木の板に白い毛筆でメニュー名が書かれている。
さっき外でおいしそうだと思ったやつはどれなのだろう。メニューの形式が大分違う。
私が不慣れな客だと分かると、店員さんが「インドカレーは辛いです。バターチキン以外。欧風は辛くないです」と説明してくれた。
欧風というのもあるのか…迷う。選べない。
鋭い眼差しで注文を待っている店員さん。決めなければ。
私は一番上に書いてある「ムルギカレー」と試しに唱えた。
「1050円です」と店員さん。問題なく注文できたことにほっとする私。
私がお金を出している間に奥の厨房に向かって「ムルギね〜」と店員さんは言った。
この魔女っぽい店員さんが店の空気を支配している。強い。

お金を払い、食券を受け取るのかと思ったらそうではないらしい。
「あちらどうぞ」と示されたカウンター席には湯気が立ち上る熱々の卵スープとお水が、魔法のようにいつの間にかセットされていた。
自分の思っていた「食券制」との差異を感じつつ席に着く。

湯気見えるかな

たまごスープは熱くて猫舌の私は全然飲めない。
スプーンを探すが卓上には無いので、カップに直接口をつけて飲めということだ。
諦めてちょっと置いておくことにしたら、早速「ムルギカリー」が運ばれてきた。早い。

ムルギカリー

まずはしゃばしゃばの汁を一口、口に入れて感動。
なんだこの超絶にうまい汁は!
確かにしっかりと辛い。でもその辛さイコールうまさ。多彩なスパイス感と、ちょっと魚介のような風味も感じる。あと多分ガーリック。
これがトップ・クオリティ・オブ・カリー(トプカ)なのか。
すごい。辛いの大丈夫な人にはもれなくおすすめしたいカレーだと思った。

ムルギカリーの具は大きな鶏肉、ジャガイモ、玉ねぎ、ナス、ピーマンなど。
(「ムルギー」とはヒンディー語で「鶏肉」の意味らしい。)
食べ進めていくと、10センチくらいの長いにんじんが現れた。「でかっ」と思った。
しかも、スプーンでは切れない。
ひとかじりしてみると、最低限加熱しただけのワイルドな歯応え。
まぁにんじんは生でも食べれるから、と思ってもう一口かじっていると、奥からさっきの女性店員さんの怒号。
「こんなにでかいのうちではつかいません!にんじんでかすぎ!これも!これもでかすぎ!」
なるほど、今日にんじんを切ったのは新人さんだったようだ。がんばれ、新人さん。大きいにんじん、私はアリだよ。

怒鳴る人を久々に見た私は急に、降職となった元責任者がどの程度のパワハラをしたのか考えていた。
みんなの前で誰かを怒鳴った、とかなら他の誰かがフォローできただろう。
たとえ言い方がキツくても、にんじんのサイズが間違っているから店の基準に合わせろ、みたいな「指導」だったら、受け手も傷つくまではいかなかっただろう。
きっとそういう類のものではなかったということだろうな。

にんじんが少し大きいというハプニングはあったが、それを差し引いても感動の美味しさだった。また来たい。
飲みやすい温度になった卵スープもぐびっと飲み干し、席を立つと真っ先に先ほどの女性店員さんが気づいてくれて、強めに「ありがとうございましたー!」と声をかけてくれた。
私も負けじと強めに「ごちそうさまでしたー!」と言って、午後の仕事に戻った。
なんだか緊張した。

そして仕事を終えて家に着いてから気づいた。
今日スタンプもらってない!!!
いつか絶対やると思っていたが、まさかあんな手強そうな店員さんがいる店でやらかすとは。
せめて帰ってくる前に気付けていたら、仕事終わりにもう一度行って「昼に来たんですが!」でいけたかもしれないのに。
次の出勤の日に考えよう…



この日ランチしたお店

トプカ 神田本店

📍Google Map

🍛神田カレーグランプリ トプカ神田本店

【いただいたメニュー】
ムルギカリー 1050円

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