最近読んだ本の感想(危機の外交)
岡本 行夫 「危機の外交」
この本は、岡本行夫氏の自伝ですが、日本の歴史の記録を(実名を含み)豊富に扱っています。これまでの日本の外交、湾岸戦争時の努力に対するアメリカの日本に対する不当な扱いを、アメリカの学生たちに知らしめるため、英語で書かれたものの邦訳です。
著者は稚拙な日本外交をできるだけ世界に評価されるように事務方として奔走されました。その活動は日本の首相や海外の要人との話し合いなど多岐にわたります。
また日本という国を誇りに満ちた国にするためどうしたらいいのかを日本の若者に考えてほしいという岡本氏からの熱いメッセージです。非常に残念なことに岡本氏は新型コロナに感染し2020年4月亡くなられてしまった。今起きているウクライナ侵攻についてどうお考えになったでしょうか。
一人でも多くの方がこの本を手にされることを望みます。
本書で知った驚きの事実を記しておきます。
真珠湾攻撃がアメリカから「だまし討ち」の汚名を着せられているのは、ワシントン日本大使館のせいだという議論があるが開戦通告の覚書の内容は下記。
「帝国政府は、ここに合衆国政府の態度に鑑み今後交渉を継続するも妥結に達するを得ずと認むるの外なき旨を合衆国政府に通告するを遺憾とするものなり」
交渉の打ち切り予告に過ぎず、「宣戦布告」とは言えない内容。
名古屋を爆撃したB-29のうち何機かは撃墜され、搭乗員27名がとらえられ、処刑された。東海軍管区司令官岡田中将は処刑の責任者として連合軍裁判所の判決で絞首刑となった。岡田は、処刑は自分が了承したことであり、自分の責任であるとしたうえで、法廷で無差別爆撃の残虐性について訴えた。
日本政府は日本の都市への無差別爆撃を指揮した責任者であるカーティス・ルメイ将軍に、1964年、佐藤内閣の下で「日本の航空自衛隊の育成に協力した」として勲一等旭日大綬章という最高位の勲章を授与した。
日本は1945年7月27日にスイスの日本大使館を通じてポツダム宣言を受け取った。鈴木貫太郎首相は、ポツダム宣言の文章の確認を稼ぐために、「戦争を継続する」と宣言した。その時点でポツダム宣言を受諾していれば、広島、長崎への原爆投下はなかった。首相の責任は重い。戦争継続を主張した陸軍、そして海軍の一部の責任はもっと重い。
有条件降伏で戦前の統治形態と明治憲法が残ったとすれば、現在の日本に自由と民主主義は根付いただろうか。膨大な犠牲者を前に「戦争に負けてよかった」ということはゆるされないが、戦争に徹底的に負けてダグラス・マッカーサーの統治が来たからこそ、日本に民主主義と自由がきた。
湾岸戦争時に資金拠出のみおこない世界に批判された失敗をもとに、イラク戦争時には特措法を急遽成立させ給油艦を派遣できた。しかし、政権交代した民主党は世界に評価されていた給油艦派遣をやめさせ、そのかわりにアフガニスタン警察官の給与の半分を負担するため5000億円の拠出を行うことになった。
日本が中国を侵略したことは事実。ただ日本は600万の中国人を殺傷したが、その後、共産党の大躍進と文化大革命の時代に4000万の犠牲者がでている。このときの記憶を国民から一掃するため、それ以上の規模での蛮行が日本軍によって行われ、共産党がこれを撃退したと、中国共産党は国民を教育する必要があった。
韓国の慰安婦問題。もちろん蛮行であるが、1992年1月に朝日新聞が解説記事のなかで20万人とした。これは日本の工場に徴用された朝鮮人女性の数だった。しかしこれが世界に伝わってしまった。実際には慰安婦の総数は2万人、その半数が日本人、ほぼ同数が朝鮮人女性、残りが沖縄、台湾からの女性だったようだ。また深く関与したのは軍ではなく朝鮮人業者であった。
憲法前文のむなしさ。要は「日本さえ銃をとらなければ、世界の平和が保たれる」という内容は世界情勢をみれば、説得力をもたない。
国際社会からの認識として、危険なところには人をださぬという日本の態度は、「日本人の人命だけは地球より重い、だから危険なところは外の国がやってくれ」という意味になった。
著者は外務省時代、退官後も日本の外交のために力をつくされた。もっと外交がわかっている人が総理をしていたら、日本の役所が(省益優先ではなく)もっと国のために動いてくれていたら、著者があんなに奔走することはなかったように思う。
※外交がわかっていた総理も実名で記載されている。
最後に著者からのメッセージをそのまま記しておこう。この本に書かれている歴史の事実を知ったうえでということにはなるが。
だから、日本の若者にお願いしたい。
君たちはどういう時に日本人であると自覚するだろうか。
君たちの価値観と行動力で、君たちが作ってほしい。
誇りに満ちた国・日本を。
一人でも多くの方がこの本を読まれることをのぞみます。