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【連作短歌+散文詩】熱帯・性・紀行 #さるのうた

大気圏怪しき流れ雲霞舞う汗ばみ玉のしずくがつたう

雨あられ遠くに征かず猿の声 厭世すれどむなしく響き

浮かされる熱に呼吸は上気してびろうどの毛をやさしく撫でる

殻やぶり温泉たまごかぶりつく薄い皮膜を手こずり剥いて

どんよりの中にラジオを聴いている気圧の底に地軸がゆがむ



睨めつける

身を守る

すすみ寄る

篭もり居る

なぎたおす

寄り掛かる


電気が消える


なだれ込む

留め置く

吹き荒れる

塞きとめる

注ぎこむ

あふれ出す

掻き乱す

あふれ出す


ぬかるんでいる


染みとおる

押し流す

陽が昇る

照りつける

風そよぐ

凪いでいる



柔肉をえぐり取ったる怪魚の歯避けて樹上で仲良くあそぶ

こんなにも小さき鼻と目と口がちょこんと付いた進化の隣人

こんもりと外套を着て湿っ気のなか跳ぶ活気ヒトにもおくれ

ふさふさの耳の毛揺らしうた唄う小首傾げて鈴の音の声

猿の香に熟れた果実の陰鬱さ紅い実の汁咀嚼しすする