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図書館に行かないと知性が弱る
高校生の皆さん 元気ですか。
ビジネススクールという原体験
さて、さっき別の大人向きの連載で、アメリカのビジネス教育の話をした。
アメリカのビジネス教育の中心は、ビジネススクールと呼ばれる大学院だ。
日本は大学を出ると大学院に行くよね。そして、修士課程それが終わると博士課程に進む。ビジネススクールとは、日本の修士課程にあたる。ビジネス専攻の修士課程だ。
しかし、やるのは研究としてのビジネスじゃない。
実践としてのビジネスだ。どうやればうまく会社を経営できるか、どうやれば製品やサービスをたくさん売れるか、どうしたら売れる商品を開発できるか、どうやったら従業員が会社を気に入り、永く働いてくれるか、会社経営の作戦はどう創ったらいいか、などなどの実践を勉強する。
勿論授業もあり、理論も学ぶが、実際に店舗を見学し、経営者に話を聞いてレポートをまとめたり、グループワークでディスカッションして、発表したりする。
そういった従来の受動的な座学とは全く違う、能動的なワーク(作業)がたくさん組み込まれたカリキュラムで、学生は実戦的なビジネスの勘所をつかんでいく仕組みだ。
僕もアメリカでビジネススクールに学んだ。
日本語を教えながらのビジネススクール学生生活だったので、2年半毎日必死でやった。小室さんじゃないけれど、1日10時間以上はやっただろう。考えてみれば幸せなことだった。
学校側が全てお金を出してくれた。寮費、生活費、授業料まで。日本語を教える対価として払ってくれたのだ。今では、こうした教育交換留学プログラムなどない。アメリカがイスラムに敵意を剥き出しにするきっかけを作った9.11もなく、外国人差別は感じなかった。留学の環境としては恵まれていた。
さて、そこで学んだことは、自分の手と足と目で、そして五感を使って経験することの重要性だった。
観察することの重要性
例えば、ウォルマートという世界最大のスーパーマーケットチェーンがある。これについてグループワークをやって今のウォルマートの問題点と解決策を1週間でまとめてこい、などという課題が出される。
そうするとグループワークというのが出てくる。グループを組んで、作業の役割分担をするのだ。
ここでディスカッションするから、まずコミニケーションが鍛えられる。僕の役割は店を実際に見て観察してなにか問題点を発見することと、店長にインタビューすることだった。
観察ということをはじめてやった。いろいろな発見があった。店長にはインタビューできなかったが、店員に話が聞けた。この成果を英語でまとめる。嫌でもライティングが上達する。
人と話すことの重要性
もちろん、こうしたグループワークだけではなく、ビジネススクールは個人の課題もある。その時も取材、という能動的な行為を求められることが多かった。
僕はあるとき、アメリカの花王についてレポートを書くことを課された。そのとき、Kao Americaに電話して取材を申し込んだことがあるんだ。その電話に出たのは、なんと社長だった。
社長はビジネススクールの学生でこういうわけで取材したいと申し出ると、快くOKしてくれた。何を話したか忘れたが、感激したことは今もって忘れない。
アメリカってすごい国だな、電話一本で勉強、研究する学生に話をしてくるのか、という感動だった。
図書館で調べることの重要性
そんなことで、ビジネススクールでの勉強は本や雑誌を図書館で調べ、店や会社を尋ねて観察し、人とあって話をし、グループワークをし、発表し、ディスカッションする、こうした能動的なものだった。
僕は今の高校生、大学生に足りないのは、図書館で調べることだと思う。
全ての情報がインターネットにあるわけではない。インターネットの情報は編集を通した本と違い、その信頼性ははっきりいって低い。論文も研究も全て引用文献がネットはありえない。紙の文献を調べないで、平気でスマホで調べる、そういう習慣では正しい真実にたどり着けないことを危惧している。
五感を刺激することの重要性
新しい時代の新しい教育、そして教師の役割を高校生の皆さんと考えているのだが、僕の教育の原点はこのアメリカでのビジネススクールでの体験にある。一言で言えば、 “五感からの刺激をふんだんに受けた”教育だ。
インターネットなんてなくてよかった。
図書館で紙の本を、雑誌を探してコピーして読む。ネット検索すればすぐだよ、とみんなは言うだろう。しかし、図書カードを調べ、番号の棚をめがけて歩いて情報を探すというアクションは、なにか身体で情報を得るという大事な感覚が身についた気がする。
YouTubeで動画を見るのではなく、実際にそこに行って観察する。動画とまったく違った発見がある。
個人が大事な今の時代、グループワークなんてやりたい君たちはいないだろうが、無理矢理にグループでなにかやらされると、気まずさ、コミニケーションの難しさなどチャレンジから学ぶものはたくさんある。
そういう意味で、今のネットが完備した教育環境は果たして、みんなのポテンシャルを伸ばしてくれるのだろうか、老婆心ながら考える。
ビジネススクール関係の記事を書きながら、高校生のことを考えたの巻でした。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
また明日会えるのを楽しみにしている。
野呂 一郎