スイカを安く買ってわかった「ネットで買い物する時代」の終わり
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:きょうスーパーでスイカを買って気づいたこと、それは「ネットでモノを買う時代の終焉」だ。ネットじゃなく、人と人が絡んだ売り方が復活しつつある、というトンデモ仮説。でもあながち間違いとは言えないのでは。
スーパーでの出来事
ネットでしか買い物をしない現代って、売る方も買う方も効率的なように見えて、いや、両方損をしているんじゃないかと思うんですよ。
「えっ?いきなり何をいうんだ」と、皆さんはおっしゃると思うんですけれど、僕もネットでいいんじゃね、と思っていたんですよ。
でも、さっき、スーパーで期せずして起こった出来事で、「我々はネットでものを買うことで、大きなものを失ってきた」ことを思い知ったのです。
ちょっとめんどくさい話なのですが、おつきあいください。
話の舞台は、僕が住む東京・杉並区のスーパーです。
そこは大きなスイカが名物で、なかなかおいしいんです。
今年の夏はもう5つくらいそこで買って食べてたんですが、もうなくなったんで、もう一つ買おうと思ったんです。
でも、もう9月、さすがにスイカはないかもしれないと思いつつ、スーパーに電話して「スイカまだ売ってますか?」と聞いたんですよ。
そしたら本社にかかってしまって、店から折り返し電話させます、とのことで、すぐその杉並区のスーパーから電話があり、「ある」とのこと。
仕事の帰りに寄ってみると、担当者のシバタさんが、そのスイカを見せてくれました。
大きい、大きすぎる、こんなのがまだあったんだ、驚きつつ、値段を訊くと「4770円です」とのこと。
さすがに高いので、もう一つサイズの小さいスイカを見せてもらい、2500円のそれを買うことにしたのです。
シバタさんは、でも、僕の大きなスイカへの執着が消えてないことを見逃さなかったんです。
こんなふうに振ってきました。
「お客さん、でも、さっきの大きなスイカ買ってくれるなら、ちょっと安くしますよ」。
僕は内心の「やった!」をおさえつけながら、「えっ?いくらにしてくれるの?」と訊いたら、「3000円でどうです?」。
僕は「買うよ、買う!」と興奮し、シバタさんもそそくさと「じゃあ、レジに行きましょ!」と交渉成立です。
人と人とのやり取りの重要性
ネットで買うなら、またスーパーで買うのだって、値段が決まっていますから、値切ったりはできないですよね。
でも、こうやってお店の人と相対してモノを買うと、やりとりの中から、結果として安い買い物ができるのです。
なぜ、シバタさんは値切ってくれたのか。
それは、さっきも申し上げたように、彼の観察眼です。
「ふん、こいつは最初のおっきいスイカがやっぱりほしいんだな、なんとか買わせてやろう」僕を見てそう思ったのです。
もうひとつは、僕のことを気に入ったのです。
スイカを比べながら僕は、盛んにこんなことを言ってました。
「この夏はね、オタクのスイカに助けられたんだよ、安くて大きくて甘いスイカで元気出たって。今日でこの夏6つ目だよ、ありがとう!」。
シバタさんは、「まじっすか?」と、にんまりして、二人の間には初対面ながら「ラポールrapport(心理的な親密さ) 」が生まれ始めていました。
もちろん商売は駆け引きですから、もうシーズンが終わり売れ残るよりも、安くして売ったほうがいい、そういうシバタさんの思惑もあったかもしれません。
でも僕は、二人の間に期せずして発生した「ラポール」で、シバタさんが「こいつ気に入ったから安く売ってやるか」と態度を変えたのだと直感したのです。
人と絡むことの重要性
ネットでモノを買うなとはいいません、スーパーで買い物をするな、とはいいません。
でも、ガチで店員さんのいる店で、買い物をするのもいいですよ。
僕が今日スイカを安く買えたのを、勝手にサクセスストーリーとすると、こんな仮説が立てられるかもしれません。
1.売り手に「欲しい熱意」を伝えよ
スイカが好きで、秋になっても食べたい様子を伝えた
2.売り手に「感謝」を伝えよ
あんたのとこの美味しいスイカで、この夏を乗り切れた、と謝意を述べた
3.売り手に「迷っている」様子を伝えよ
明らかに大きいスイカに未練があることが、見え見えだった
4.「ラポール」を創れ
ラポールとはフランス語の心理学用語で、経営学でもよく使われる、「友愛」というニュアンスのことば。
初めて出会う二人だが、電話のやりとりの時点で「気が合う」感じがあり、実際にあってしゃべるとそれがラポールに変わった
コミュ障の僕にしては、初対面の人とラポールは大げさですが、なんとなくいい感じになった、それがサクセスストーリー(笑)を呼び込んだのかも、です。
僕は、これに味をしめて、高めのものを買うときにこの仮説を実験してみようと思っています。
例えば宝石とか。
相手がいればいいんですが(笑)
ネット販売の時代は終わった
どうでしょうか、企業もお店も、訳アリで売れ残ってるもの、売りたいものを対面で売る試みは?
題して「ラポールを創って売ろう作戦」。
お客から、声をかけやすい雰囲気を作り、僕の「スイカ状態」に持ち込むのです。
期限切れ寸前の商品は、お客と「ラポール」を創ることで必ず売れますよ。
いや、いっそのこと、もうネットで売るのもやめて、値札も全部とっぱらっちゃって、「店舗丸ごとラポール大作戦」にしちゃったらどうでしょう。
ネットの時代は、終わりつつあるんですってば。
野呂 一郎
清和大学教授