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阪神に学ぶ「勝利より顧客満足」。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:藤川球児が岡田の後、だってぇ?コーチも経験してないのにぃ?でも堅実野球より、魅せる野球を選択するのは阪神の業=企業文化なので、必然だからしょうがない。でも球児だけじゃない、勝つより魅せることを選択したのは。掛布雅之そして阪神球団そのものだ。

阪神の企業文化構造

先日のスポーツマネジメントのテーマは、阪神の企業文化で、noteでも取り上げました。

さて、それに少し補足をしたいのですが、企業文化とは物語、ヒーロー、儀式、こだわりの言葉の4つからできています

物語とは、その企業を象徴する過去の出来事のことで、阪神ならば1975年4月17日に起こった「バース、掛布、岡田」のバックスクリーン三連発と、戦後最高の奪三振王・江夏豊の「オールスター9者連続三振」です。

ヒーローは、その企業の栄光に貢献した社員のことで、阪神のヒーローとは、村山実、江夏豊、掛布雅之です。

岡田監督の後釜に決まった「炎のストッパー」藤川球児も、賛否あるものの、ギリで入れましょう。

儀式とはその企業の伝統や価値観を表現したセレモニーのことで、阪神球団のそれはファンとの絆の強さを象徴した「甲子園風船飛ばし」がこれに当たるでしょう。

六甲おろし合唱も入れてもいいかも、です。

こだわりの言葉は、「死のロード」としました。

これは阪神の「悲劇性」を表したワードで、昭和時代夏の一番暑い時期にホーム甲子園を高校野球にとられ、ロード(アウェイ)での戦いを余儀なくされ、猛暑でへばり、後半失速する阪神のルーティン悲劇のさだめをあらわしたものです。

野呂大学講義より

勝利より面白さ優先が阪神の文化

前回のnote記事で、阪神の価値観とは、よくも悪くも勝利に強いこだわりを持たないこと、と申し上げました。

何か奥歯に物が挟まったような言い方をしてしまいましたが、もっとはっきり言えば、「阪神という球団は、いつも勝つことより、面白いことを優先する企業だ」ということです。

つまり、勝利よりも顧客満足が阪神の文化なのです。

それは、上の「阪神球団の企業文化構造」にはっきりあらわれているのではないでしょうか。

本拠地の甲子園球場で七回攻撃前にチームカラーの黄色の風船を一斉に飛ばす”儀式”。

コロナや球団のSDGs方針などで継続が危ぶまれていますが、これはファンを喜ばせたい一心なのです。

「死のロード」も、ファンも球団も選手も、「なんで阪神だけがこないな仕打ちを受けなきゃあかんねん」と色をなすと同時に「いつも悲劇のヒーローや」と優越感も、あったのです。

球団としては、優勝できない言い訳として使えますし、悲劇というスパイスは、球団のアイデンティティとしてビジネスでは、得難い資産とさえ言えます。

阪神のヒーローは必ず真っ向勝負

ピッチャーを見てみましょう

昭和の巨人阪神伝統の一戦のハイライトは「長嶋茂雄vs村山実」でした。

村山ときたら、長嶋との対決は伝家の宝刀フォークボールも使いましたが、勝負をかけた場面では必ずストレート勝負、数え切れない長嶋との名場面を演出しました。

江夏豊は、オールスター9連続奪三振や対王貞治から「狙って」奪三振記録を奪った、まさに自分を演出する天才でした。

藤川球児。

終盤いつもピンチのときにしか登板しないことで知られており、村山、江夏同様、際どい勝負になればなるほど、ストレートで真っ向勝負しかしませんでした。

僕らが組織論の観点で考えなきゃならないのは、この3投手の勝負の仕方は、ピッチャーやベンチだけの考えではない、ということです。

球団サイドが後押ししているのです。

親会社の阪神電鉄の意思決定、ってことです。

野球の試合であっても、その内容は企業の業務プロセスにほかならず、阪神電鉄が関与しないわけがないからです。

つまり「勝ち負けを無視して客を喜ばせる」のが阪神の流儀=文化といういうことです。

掛布こそやはりミスタータイガース

阪神歴代の最高のバッターはやはり、掛布雅之でしょう。

掛布雅之は、あの「バックスクリーン三連発」でこんな言葉を吐きました。

「バースがホームラン。でも僕はすぐバットを振るようなことはしませんでしたよ。球場を静かにさせて『僕と槇原くんの勝負の間を作りたかったんです』」。

どうです。

バースがバックスクリーン越えの大ホームランを放って、ざわめきがおさまらないうちに、またホームランを打ったのでは、「絵にならない」と考えたのです。

掛布は「どのタイミングでホームランを打てば、客が最高に喜ぶか」まで考えていたのです。

これも3投手の鉄火場勝負と同じく、阪神球団の「客を喜ばせろ」の価値観が色濃かったのです。

じゃないと、「オレと槇原くんの勝負の間を・・」なんていいませんよね。

掛布は「勝ちゃいいというものではない、本当に客を喜ばせてこそプロ」という点で、阪神の文化を背負っていたのです。

僕のスポーツマネジメント講義のヒーローは、掛布雅之であり、この時の映像をみせると、半世紀も前の出来事なのに、学生は納得してくれますね。

なぜ、その掛布雅之を阪神は一軍監督にしないのだ、と読者の皆さんは僕を責め立てるでしょう。

うーん、そのわけは知ってるんですが、この件はまた後で。

野呂 一郎
清和大学教授


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