僕が読んだ一番刺激的な本は「占いの本」。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:いい本など存在せず、ただいい読者が存在するだけなのかもしれない。万人に名著と呼べる本などなく、あなたが気に入った本は、天才のあなただから引き寄せた書物にすぎない。本がひとを選んでいるのだ、という暴論。
梅花心易とは何か
読者の方から、「どんな本を読んできたか」と質問をいただいたお話はしました。
これから折りに触れ、僕に影響を与えた書物について、書こうと思っています。
皆様におすすめするだとか、そんなだいそれたことではないのですが、本というのは読者を選び、読者が試されているのだとも思うのです。
つまり、それがどんな本であっても、問題意識や多様な観点を持っているものには、大きな福音をもたらしますが、特定の興味を満たすだけの目的の人には、本が期待外れだと10ページ読んでゴミ箱行き、となるのです。
今日、僕が紹介する本はおそらく多くの方にとって、「何だこんな本」と言われるものかもしれません。
でも、僕にとっては一生の宝と言えるものでした。
その本とは、これです。
「梅花心易精義(ばいかしんえき・せいぎ)」
鎗田宗准(やりた・そうじゅん)著
何だぃ、占いの本か、と皆様は呆気にとられ、失望されたかもしれません。
梅花心易(ばいかしんえき)とは、易(えき)占いの一種ですが、とても面白く、占断の結果は、占う事物の現在、過去、未来を、卦(け)という独特の形を持って示されます。
占いとは何か
この占いの要諦はいかにこの「卦(け)」を読み解くかにあります。
この本は、たんなる占いの技術書ではありません。
哲学書とでも言えるもので、著者は本の中で繰り返し、次のようなことを主張しているのです。
この本が教えてくれたもの
この本の僕にとっての教訓は、まさにそういうことで、
「いくらいい情報やデータ、素晴らしい人物や機会に遭遇しても、自分の知識や教養、状況を把握する力、インスピレーションを感じる感性などがなければ、それが持つ本当の価値は得ることができない」ということを教えてもらった、のです。
この梅花心易という占いは、実践することによって、教養や知識をより蓄え、状況を把握し、インスピレーションにどう頼るかを教えてくれます。
そういう意味では、この本は単なる本でなくて、実践の書といえるかもしれません。
ブッダとウバカ
かつて悟りを得られたブッダは、伝道中にウバカという一人の行者に会い、自分が大覚者であることを伝え、その教えの要諦を説いたそうなのです。
ウバカは「そうかもしれませんね」と言って、去っていったと伝えられます。
ブッタの貧しい身なりを見て、誇大妄想狂だと断じ相手にしなかったのです。
「ウバカであってはならない」、僕は思うのです。
つまり、すぐれた書の価値がわからないようではいけない、ということです。
ただ、僕はまだまだウバカでありまして、ブッダを本物の名著とするならば、まだその縁すらいただけてないありさまなのです。
ただ、この梅花心易の本は、名著とは言えないかもしれませんが、知識と教養とカンを磨くことで、本物を見極める力を養えるかもしれないことを教えてくれました。
そして何の変哲もない本からも、偉大なヒントを読み取れる、かもしれないいうことも。
野呂 一郎
清和大学教授