清張の創造性講座4 家政婦は、いや、タクシーの運転手は見ていた。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:タクシー運転手という情報通の価値。作品のためにどれだけ貪欲になれるか。
タクシーの運転手に話しかけられるか
松本清張は、タクシー運転手から、土地の情報を得ることを常としていました。
五木寛之との対談で、「顔を知られているから、運転手さんも話すのをためらわるんじゃないか」と突っ込むと、「知ってても話してくれるよ」とさり気なく答えます。
清張は、タクシー運転手から話を聞き出すために、時には食事に誘うというのです。
運転手さんとしては「いいお客さんだな」と、喜んで応じてくれるそうです。
清張作品には、タクシー運転手の地元の情報、それも出版物やネットには出てない情報が散りばめられているのです。
自分から話しかけるというスキル
ドアをノックしないと、返事がないように、こちらから話しかけないと、何も帰ってきません。
現代人はほぼ100%暇さえあればスマホに没入していますから、自分から他者に話しかけるというかつてあった習慣がなくなっています。
結果、情報という宝をみすみす取り逃しています。
僕はスーパーのレジ係の女性、八百屋のおじさん、バスの運転手さんなど、袖振り合うも多生の縁とばかり話しかけます。
ほめると、いい会話ができるようです。
レジの女性の挨拶をほめ、八百屋の品揃えをほめ、バスの運転手の迂回の判断をほめると、様々な付帯情報がついてきます。スーパーの掘り出し物だったり、季節の果物の旬だったり、休日の道路情報だったり。
でもそういう小ネタが雑談や執筆に生きてくるのです。
しかし、清張の場合は、タクシー運転手にご飯をごちそうしてしまうのですから、これはもはや取材活動ですね。
タクシー運転手さんは、様々なドラマをお持ちです。
最近出会った、こんな物語はいかがでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授
地方都市を題材とした作品が多い清張ですが、やはり小説の冒頭は、寂れた田舎町の描写で、読者を引きつけてきました。