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プロレス&マーケティング第26戦 NWAという権威がプロレスにもたらしたレガシー検証。

 この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:NWAという権威がプロレス界に及ぼした影響を検証する。世界を統一した権威の不在がいま、プロレス界をバラバラにして、つまらなくしているという偏見。権威を逆手に取り、自らのカリスマをデカくしたアントニオ猪木。珍説「本屋大賞=NWF王座」論。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=3AqVQJn

NWAという権威がプロレスを育てた事実

時代が違うと言われればそれまでなんですが、今のプロレスが昔ほど盛り上がらないのは、NWA世界王座がないから、だと思うんですよ。

NWAとはNational Wrestling Alliance (全米レスリング連盟)の頭文字をとったもので、かつて存在した世界一のプロレスのプロモーター(興行主)の団体のことです。

また、NWAが認定する世界王座はプロレスの最高峰であり、権威の象徴でした。
 
すべてのプロレスラーがNWA世界王座を目指していました。

NWAに挑戦すること時代、大変な名誉でしたし、実利でもありました。

挑戦しただけでレスラーの格も一気に上がり、NWAチャンピオンといい試合をすれば、スターの仲間入りが約束されたものです。
 
当時は海外のプロレス雑誌が作るランキングはありましたが、正式なものはありませんでした。

しかし、ファンの中では、レスラーのランキングが確かに存在していたのです。

NWA世界王座があったからです。
 
NWA王者と引き分けた、NWA王者が勝てなかったあのレスラーに勝った、となれば、それだけでファンにとっては実力査定のデータになります。

NWA王者と引き分けた選手に勝った、その選手といい試合をした、みたいなNWA王者との間接的な関わりでも、「やるじゃないか」となるのです。
 
たいていのレスラーが、NWA王者と戦ったことのある選手とは手を合わせていますから、その情報を手繰れば、ファンなかでは、ほとんどのレスラーの格付けが完成するのです。

これは、NWAがプロレス界に残したレガシーと言えるかもしれません。
 

NWAにひれ伏した猪木

最新号の週プロが、アントニオ猪木が現役時代に、猪木の代名詞だったNWF世界王座から、世界の2文字が外された、という事件を振り返っていました。

これはまさに、プロレス界において、いかにNWA世界王座が権威の象徴であったかを如実に物語っています。

プロレス界きっての実力者、猪木をしてNWA王座の価値を認め、それに固執させる価値を持っていたのです。
 
当時、日本のプロレス団体でNWAに加盟していたのは、ジャイアント馬場率いる全日本プロレスだけでした。

アントニオ猪木の新日本プロレスは加盟を認められず、いつまでたってもNWA王座には挑戦できずにいました。

しかし、それが逆に猪木の価値を高めた、ということも事実です。

「本当は挑戦さえすれば勝てる、真の実力者」といった、オーラが猪木周辺に漂うようになっていったのは皮肉でした。
 
いずれにせよ、猪木を含めプロレス界全体がNWAを最高権威とみとめ、あがめ、ときに追従し、ひれ伏すことで、NWAはますますその価値を高めていきました。
 
そのNWAから、

「NWAが認めない限り、世界を冠するタイトルは認めない。NWAに加盟したいなら、新日本プロレスよ、お前たちのもっているNWF世界王座とやらから『世界』を外せ」

当時のNWAの通達内容

と、新日本プロレスに通達が来たのです。

猪木は渋々、NWF世界王座から、世界の二文字を外すことにしました。

権威から実力へ

先程もふれましたが、しかし、NWF王座は世界が外れても、そのブランド価値は落ちませんでした。

アントニオ猪木の実力が、そのベルトの価値になったからです。

猪木はNWF王座の防衛を重ねるうちに、ますます「NWF王座はNWA王座に引けは取らない」との信念を強くしていきました。

ファンにも「権威より実力がプロレス本来の姿」という意識が浸透していったのです。

NWA加盟は、しかし、待てど暮せど実現しませんでした。

そこで猪木が目をつけたのは、世界4大王座の一つWWF(現在のWWE)です。

当時の王者、ボブ・バックランドを破り、WWFの王座についたのです。(しかし、これは米国本部から正式な認定はありませんでした)

右がボブ・バックランド。https://qr.quel.jp/pv.php?b=43Ifail

NWA王者に匹敵する格をもったWWF王座獲得で、アントニオ猪木は名実ともに、世界が認める超一流レスラーの仲間入りをしたと言えるでしょう。

「世界」に見合わないタイトルは要らない

いつまでたっても猪木・新日本を加盟させないNWA。

猪木はそれを逆利用し、「真の世界一を決めるベルトを創る」と宣言、これが最近SANADAが獲得した新日本プロレスの至宝・IWGP王座です。

IWGPはインターナショナル・レスリング・グランプリというとてつもない、壮大なネーミングで、世界中で予選トーナメントを行い、そこで勝ち上がった二人が最終決戦で雌雄を決する、というアイディアでした。

NWAという権威はプロレス界を大いに繁栄させた一方、その反作用として、実力という方向性をも生みました。

いずれにしても、NWAという権威がなかったら、今のプロレス界の繁栄はないでしょう。

各団体、世界王座とかワールド王座とか言っていますけれど、本当に強いものがベルトを巻いているのならば、いいんです。

でもそうじゃないから、しっくりこないのです。

NWAの時代は良かった・・・ああまた懐古趣味昔はよかった病といわれちゃうかも。

今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する

1.あなたの会社も世界王座ISOを獲得せよ

品質の世界標準であるISO(International Organization for Standardization「国際標準化機構)は、言ってみれば工業製品のNWAといえる。

そこに加盟し、認定王座であるISO2000とかのタイトルを取れば、マーケティングは楽になるだろう。

2.「本屋大賞」というNWF王座を新設せよ

本屋大賞は面白さという「実力」で、芥川賞という権威にケンカを売り新しい価値を作っている。

今年度候補作品

これはまさにNWA対NWFという、プロレス的な構図と言えるだろう。

あなたの業界も、権威に対抗する、新しい価値観にもとづくベルトを認定せよ。

実際に本屋大賞は出版業界全体のマーケティングに大きく貢献している。

3.ローカル王座を創設し、ユニークな演出で価値をつけろ

「ちよだ文学賞」なんてのがある。千代田区にゆかりの人物、場所をテーマにした文学賞だそうだ。

いいじゃないか。

まちおこしで、そうしたタイトルをどんどん創ればいい。

ローカルタイトルとばかにするなかれ。

その土地でしか生まれない作品は、まさに唯一無二の価値であり、マーケティングが標榜する差別化の成功にほかならないからだ。

「インディーズバンド・イケメンベーシスト決定戦」なんかやったらどうだろう。

ねこっぱちを中心に準メジャー、メジャー予備軍のバンドの、顔やスタイルがいいベーシストを全国予選で10人選び、決勝戦をファッションショー仕立てで後楽園ホールで行うのだ。

ルッキズム(見てくれで人を差別するという非難)は、この際無視、炎上上等ロック魂を見せつけたい。

音楽の実力は関係なく、審査員の女子高生100人の審美眼で優勝者を選ぶ。

優勝者は、次号のメンズノンノ(まだあるかな)の表紙を飾る。

タイアップはファッション雑誌、音楽雑誌等のマスコミ。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー


 
 
 
 
 
 
 
 

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