「読書」は、悲鳴をあげることなく、静かに事切れるか。
「本はもう書店で買わない
「読書の黄金時代としての20世紀は、
終わりを迎えたのです」。
そう言い放ったのは、
「最後の読書 」の著書もある津野海太郎さん
(先日の『SWITCHインタビュー 達人達(たち)』)。
分水嶺を1997年の新刊本売上減少と言った。
恐らくこのころから囁かれ始めた
「出版不況」という言葉は、
いつか回復するという意味を含むが、
最早その望みは断たれた。
97年当時、出店意欲旺盛だった「ブックオフ」が、
書店で買わない層を生み出し、
世界最大のオンライン書店Amazon.comが
2000年に日本市場に上陸、
いまや月額380円(税抜)で
500誌以上が読み放題(一部ページ除く)の
「楽天マガジン」が何の違和感もなく
雑誌コンテンツを流し続ける。
本はもう読まない
文化庁から2019年に発表された
平成30年度「国語に関する世論調査」では、
「1 か月に大体何冊くらい本を読むか」
という設問に対し、
実に47.3%が、
1か月に1冊も本を「読まない」と回答した。
読書とは、他者の思想を受け入れる行為である。
脳のなかで反論や支持を繰り返しつつも、
他者の思想をいきなり遮断することなく
頭のなかに置いて味わう。
そうした頭脳の動き=読書の凋落と、
他者の意見を咀嚼することなしに非難する
SNSの隆盛は、
下降と上昇の曲線を
くっきりとクロスさせて現代へと続く。
もちろん、刹那的なメッセージのやりとりが生む
文章に対する新たな動きを指摘する声はある。
そして、何よりもSNSを通して、
かつてないほど膨大に市井の作家たちの本が
世に送られていることも確かだ。
そこから、新たな「読書 」なる脳の動きの始まりを願う。
他者を受け入れるという、読書 がもつ行為の輝きを。