ほどける鶏肉から溢れる芳醇な旨味。とんかつ屋さんのチキンカツ。＃レトリカル食レポ

カリリと立つ衣を、
前歯でつぶすときの
サクリとした刹那、
続けて奥歯でズカッとした
噛み心地を感じたら、
ほろりと割られた鶏肉から、
二重三重に肉味汁が溢れ出す。
じゅわりとした鶏肉の潤いを
たっぷりと舌と頬裏で
受けとめると、
思わず目を見開くほど
柔らかくほぐれる
鶏肉のボディが、
なめらかに滑り込み、
マーブルのように
深みある旨味を巻き込む。
気づけばその芳醇な渦は
鼻先にまで届いた。

次に、摺り尽くした胡麻を入れた
ソースを衣にかけて口に運べば、
胡麻の香ばしさをまとった
優しく繊細な酸味が、
重なり合うチキンカツの
濃味のアクセントとなって、
やがて鶏肉の旨味に
濃いコクをしみ込ませる。

小田急線「中央林間」駅前、北口商店会、
オフィスに向かう道沿いに
端正に佇む「おかむら」。
店主と女将の二人の関係も、
カツの味に深みを与える。

今日も、ご近所の味で。