エッセイ 衣食足りて礼節を知る
経済学の父と言われるアダム・スミスは、経済学者である前に倫理学者でした。有名な『国富論』を書く前に『道徳情操論』という倫理学の本を書いています。その倫理学者であったアダム・スミスがなぜ経済学の研究を始めたかというと、道徳を普及させるには、その前に経済を発展させて、貧困をなくす必要があると考えたからでした。まさに「衣食足りて礼節を知る」ということです。
アメリカの次期大統領がトランプ氏に決まりました。支持者には白人労働者が多いそうです。大金持ちのトランプ氏が労働者のために働くというのは、どこか矛盾を感じないでもありません。本来そういうことを考えるのは民主党ではないのか、と考えてしまいますが、それだけ、超大国アメリカにも格差というか、貧困が多いのだろうなと心配になってしまいます。
これだけ地球を疲弊させるほど、経済開発を進めてきて、それでもまだ、庶民が豊かになれないというのは、どういうことなんだ、そんなに富の偏在が進んでいるのか、と考えざるを得ません。一生かかっても使い切れないほどのお金を稼ぐ人間がいる一方で、わずかなお金欲しさに、簡単に犯罪に手を染めてしまう人間がいます。大金持ちからお金を盗むというならまだしも、盗みやすい年寄りや弱い家庭から、しかも残虐な方法で盗むというのは尋常ではありません。
「自分ファースト」、「自分が食っていくのが一番大事」という論理を破るためには、まず「衣食が足りる」状態を作ることが肝要なのかもしれません。仕事がないわけではないでしょう。その仕事が難しいとか、きついとか、儲からないという理由で、人が集まらないのかもしれません。労働力の需要と供給のミスマッチが起きているようです。
2050年には1人世帯(独居老人と未婚の独身者)が40%になるという試算も出ているようです。将来に希望を見出せない若者が刹那主義に走っているようにも感じられます。このままでは悪循環に陥りそうです。悪い循環を断ち切るB型の経済の大天才よ、出でよ!令和の高橋是清はどこかにいないものか。