HSPの彼女: LINE (2/2)
HSPの彼女にとってLINEは、自分が何か失礼なことを言っていないか、相手に誤解させるようなことを言っていないかなど、いろいろと考え込むことが多い連絡手段である。そしてまたLINE特有の問題のひとつに、「スタンプ問題」なるものがある。
LINEの最大の特徴のひとつに、スタンプという機能がる。LINE上でスタンプと呼ばれる画像を購入し(なかには無料のものもある)、相手との会話中にそれを自分のメッセージとして使用できるという機能だ。「こんにちは」や「ありがとう」といったよく使うフレーズから、喜怒哀楽などを示す仕草だけのもの、さらには「よきにはからえ」などといったかなり独特なものまで、その種類は多種多様である。
スタンプ機能の良い部分はもちろん、定型文となりがちな挨拶や相槌などをユニークで楽しいものにするという効果である。メッセージに加えて見覚えのあるキャラクターや味のあるイラストのスタンプが添えられていると、それだけでもなんだか面白く、またLINE上でやり取りをする甲斐があるというものである。
そして手練れのスタンプ使いになると、スタンプの種類や頻度、文章との組み合わせなどによって会話の「空気感」のようなものを創り出すことができる。特に何か言葉が必要でなくともうまいことスタンプが入っていたりすると、その何気ないスタンプの使い方がその人のいわば文体であるかのような、そんな印象を受けて感銘を受けることもある。
LINEスタンプというものはそれだけ多種多様な用途がある便利ツールなのだが、相手に不快な思いをさせていないか常に気にならざるをえないHSPにとっては、これまた悩みの種となるのは想像に難しくない。
まず初めに、スタンプを入れるべきかどうかをメッセージの度に検討する。そのメッセージは文章単体ではどう見えるのか。スタンプでどんな効果が見込めるのか。スタンプを入れた場合と入れない場合でどれだけの違いが生まれるのか。スタンプを入れるということは、LINEの特徴を生かす一方で、下手な使い方をすれば言葉そのものの良さを消してしまうことになりかねない。そんなことを肝に命じながら、スタンプの有無を決める。
スタンプが必要だと判断した場合には、どのスタンプが適切なのか考える。ここが一番の悩みどころである。スタンプが必要だと判断した理由をもとに、検討を重ねながら吟味していく。可愛らしいキャラクターものか、スタイリッシュなイラストものか、独特で個性的なものか。スタンプそのものにもメッセージが欲しくて文字付きのものにするのか、ニュアンスの補佐でジェスチャーの絵が欲しいのか、はたまた間合いを図るためにクッションとしてのスタンプが必要なのか。手持ちのスタンプを一周した後に、「これか、これなのか…!?」となればひとまずこっちのものである。
そしてスタンプを決めた後には、今一度メッセージ履歴を遡り、メッセージ内での全体的なスタンプの頻度と会話のトーンを再度確認する。スタンプの多用とテンションのずれはご法度である。スタンプが多いと自分が返信を考えることを怠っているような、相手を軽くあしらっているような印象になり、失礼を働いているように思える。またスタンプのテンションが会話の流れと微妙にずれているようなら、自分が相手の意思をないがしろにして適当に返信しているようになり、これまた失礼極まりない。
またその一方でスタンプがあまりにも少ないと、せっかくLINEでやり取りしているのにその良さを全く生かさないわけだから、そもそもLINEでやり取りする意味とは、なんてことが気になってきたりもする。スタンプの少ないやり取りは、心なしか相手と自分の間に大きな距離を作ってしまっているようで、どうにも申し訳なくなる。多くもなく、少なくもなく。この微妙な塩梅が常に目指すべきさじ加減ならぬスタンプ加減なのだ。
そうして自分の中で納得できてからはじめて、LINEの返信をすることができる。ものすごく近しい友人や気の知れた親族ならまだしも、仕事関係の人々やたまにしか会わない人間となると、失礼無礼が気になりどうしてもスタンプで悩むことになり、文面と含めてはたから見れば同じようなことを二重で悩むことになる。スタンプがなければなどと思うこともあるが、一方でそれがあることによって会話の中で微妙なバランスのようなものをとることもできるので、一概に「スタンプ問題」は悪だと決めつけることができないのが、LINEの憎いところである。
深い考えのうえに、名スタンプあり。