見出し画像

【耳をすませば】 〜詩写真集「いのちのうた」より〜

今回から、詩写真集「いのちのうた」に収録した詩を、順番にご紹介していきます。後半では、この詩にまつわるエピソードなどを書いていきますが、まずはゆっくりと、詩を味わっていただければうれしいです。

耳をすませば


耳をすませば
きこえてくる きこえてくる
鳥の声 風の音 いのちの気配

雑踏を離れ
静かな野に ひとり立ち
空間に 身を預ける

少しずつ 少しずつ
頭が静まり 心が静まっていく

すると 目の前には いつの間にか 
全く別の世界が現れている

見慣れた風景から 見たこともない風景へ
今まで まるで気づかなかった
こんなにも あふれていたなんて

ずっと そこにあったのに
見えなかった きこえなかった
何も 変わってはいない
変わったのは 私のチャネル
開いたのは 私のハート

静かだけど さびしくはない
一人だけど すべてがある
そんな世界へは 誰でも行ける
ただ じっと こころの耳をすませば・・・

Episode : お気に入りの場所でモードを切り替える

この詩は、私がよく行く近所のお寺の裏にある森で感じたことを書いたものです。我が家から徒歩20分ほどで行ける別世界です。

上の写真の場所がそうなんですが、もともとお寺の敷地だったところで、今は市民の森として一般開放されています。都市部では今どき珍しいだだっ広い原っぱと、こぢんまりとした裏山に囲まれた気持ちのいい空間です。

「いのちのうた」の表紙の写真も、この場所です。

とにかく大好きな場所で、もう数え切れないほど訪れ、写真も数限りなく撮っています。今住んでいる場所に越してきて良かったと心から思えるのは、海がすぐそばにあることと(東京湾だけど)、歩いて行ける範囲にこの場所があったことだと言えるくらいです。

この場所のいいところは言い出せばキリがないのですが、とにかく空間が広くて、目の前にあるのは草原と裏山の緑と、その上にあるでっかい空の青、ただただそれだけなことです。視界の先に高い建物などの人工物は一切見えないし、飛行機などが通らなければ、人工的な音もほとんど聞こえてきません。

なので、ここに来てまずやるのは、目の前の自然を思い切り全身で感じることです。広い空間を感じ、目の前の裏山の木々を感じ、それらの気配を一身に浴びるようにします。鳥の声や虫の声に耳を傾け、木々を揺らす風の音を聴き、裏山の奥にいる生き物たちの存在を感じます。そうして自分を目の前の自然に溶け込ませるようにしていくのです。

この裏山を全身で感じます。

そうしていると、いつの間にか自分の中のモードが切り替わって来ます。普段の生活ではどうしても頭や思考ばかりが優位になってしまいますが、そんな頭でっかちな「考える」モードから「感じる」モードに、切り替えることができるのです。ざわざわした頭が静まり、心と身体が目の前の自然へと開かれていきます。

すると不思議なことに、目に見えて来るものが変わってきます。今まで見えていなかった花や虫たちが、どんどん見つかるようになってきます。そして写真を撮っても、そこに写るものが明らかに違うものになってきます(当然、そちらの方がいい写真が撮れます)。

さらに、そんな状態で夢中で写真を撮っていてふと気がつくと、不思議な感覚に襲われることがあります。自分が今いる場所が、何かいつもと違う場所のように感じられるのです。「あれ?ここ、どこだ?」とか「えっ?どこの国に来ちゃったんだ?」などと思うこともありました。とにかく、さっきまでいた場所と同じところとは思えないという感覚になるのです。

あれ?オレ、今どこにいるんだっけ…?

もちろん、私はどこにも行ってはいないし、いつもと同じ場所なんですが、私のモードだったりチャンネルが変化したことで、見える景色も変わるし、撮れてくる写真も変わってくるのです。これはなんとも不思議で面白いことだな〜と思います。

このように、この場所へ来るたびにモードの切り替えをやっていると、だんだん、普段の生活の場でも同じようなことができるようになってきます。例えば、家の近所を散歩している時でも、道端の小さな花々に気がつくようになったり、ありふれた小さな公園で木を撮っても、まるで森の中のような写真が撮れたりするのです。

私も、この「考える」から「感じる」モードの切り替えをいつでも自由自在にできる訳ではないです。ただ何度も練習していくうちに、だんだんと出来るようになってきている気がします。

もし、こんな風に頭で考えるモードから、身体で感じるモードに切り替えてみたいと思ったのであれば、是非お近くのちょっとした自然のある場所、例えば大きな木があったり花が咲いている場所などで、植物やそこに集まってくる生き物たちの気配を感じるようにしてみてください(もちろん、本格的な自然環境に行ければ、それに越したことはありません)。

すぐには上手くできなくても、何度かやっているうちに少しずつコツがつかめてきます。感覚としては、目に見えているものの奥にある気配を、頭ではなく身体(やハートなど)で感じようとしてみること。まさに目の前にあるものの「いのちのうた」に耳をすますような感じです。だまされたと思って、一度試してみてはいかがでしょうか?

「考えるモード」から「感じるモード」へ切り替わり、「いのちのうた」が聴こえるようになってくると、今までは見えていなかった全く別の世界が立ち現れてきます。それは今まで味わったことのない、でも一方では何故かとても懐かしいような、不思議で素敵な世界です。私はその感覚をもっと多くの人が味わえるようになり、もっと多くの人たちと分かち合えるようになるといいな〜と思っています。

よかったら是非一度、どこかで静かに耳をすませてみてください!

この時は、まるで絵本の中の世界にいるみたいでした。

いいなと思ったら応援しよう!