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ヨーロッパ文化と日本文化(ルイス・フロイス)

 著者のルイス・フロイス(Luis Frois:1532~97)は、ポルトガル(リスボン)出身のイエズス会の宣教師です。1563年(永禄6)に来日し、織田信長と面会、その絶大な保護を得ました。その後、3年間日本をはなれた以外は、30余年間を日本での布教活動に捧げ長崎で没しました。
 大の日本通で文筆の才に富み、本書以外でも大作「日本史」の著者として有名です。

 この本は、ヨーロッパと安土桃山時代の日本の風俗を、サクサクとした「対比」で明らかにしています。「われわれは・・・、日本では・・・」という短文の集合で「相違」を列挙していきます。(中には、相違を際立たせようとするあまり例外的なものを誇張していると思われるものもありますが・・・)

 ものごとを理解するうえでは、何かと比較するというのは非常に有効な方法です。比較して「相似」と「相違」を抽出するのです。特に、その比較も相違が際立つとさらに効果的です。

 この場合、「相違」に「気づく」ことが肝になります。そこで「気づく」ための工夫ですが、私は以前別のBlogで、「視点」「視野」「視座」を変えることをお勧めしました。

 この本は、「ヨーロッパ人の宣教師の『視座』」から見た日本の風俗を、「相違」という表現で炙り出しています。その対象物の広がりは、衣食住関係はもとより、家畜(馬)・武器・船・書物・演劇・歌謡等極めて多方面に及びます。
 中でも僧侶と宣教師の対比や子どものしつけ・教育に係る部分は、いろいろな意味で興味深いものでした。

 また、比較という意味では、「ヨーロッパと日本」(空間的比較)と「安土桃山時代と現代の日本」(時間的比較)が楽しめます。
 特に、時間的比較という点では、「相違」というよりも「相似」(昔からそうだった)の点が気になりました。そのいくつかを紹介します。

日本人的「笑い」

(p186より引用) われわれの間では偽りの笑いは不真面目だと考えられている。日本では品格のある高尚なこととされている。
(p191より引用) われわれの間では礼節はおちついた、厳粛な顔でおこなわれる。日本人はいつも間違いなく偽りの微笑でおこなう。

日本人的「表現」

(p188より引用) ヨーロッパでは言語の明瞭であることを求め、曖昧な言葉を避ける。日本では曖昧な言葉が一番優れた言葉で、もっとも重んぜられている。
(p194より引用) われわれは怒りの感情を大いに表わすし、また短慮をあまり抑制しない。彼らは特異の方法でそれを抑える。そしてきわめて中庸を得、思慮深い。



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