菜根譚 (洪 自誠)
本書は、今から400年ほど前、明代の洪自誠による書物です。
中国よりもむしろ江戸時代から現代までの日本で多く読まれているとのこと。儒教・仏教・道教の三つの教えを融合した処世の実践書です。
ともかく、中国古来の王道の教えから代表的な処世訓を抽出した “究極のHow Toもの” ですので、近現代の日本の安直な風潮にjust fitしたのでしょうか。
ただ、中には物事に対する基本的姿勢を説くに、なるほどという箴言があります。
(p110より引用) 天、我を薄くするに福を以てせば、吾、吾が徳を厚くして以てこれを迎えん。天、我を労するに形を以てせば、吾、吾が心を逸にして以てこれを補わん。天、我を阨するに遇を以てせば、吾、吾が道に亨らしめて以てこれを通ぜん。天且つ我を奈何せんや。
「天が我にわが福を薄くするなら、我はわが徳を厚くして対抗しよう。天が我にわが肉体を苦しめるようにしむけるなら、我はわが精神を楽にして補うようにしよう。天が我にわが境遇を行きづまらせるようにしむけるなら、我はわが道をつらぬき通すようにしよう。かくすれば、天といえども、我をどうすることもできないであろう。」
「・・・するのがよい」「・・・すべきだ」「・・・してはいけない」という調子の訓話よりも、「私は・・・しよう」という意思のこもった言い振りの方が、共感を呼びますし圧倒的に説得力がありますね。
(p210より引用) 世人は心の肯う処を以て楽と為し、却って楽心に引かれて苦処に在り。達士は心の払る処を以て楽と為し、終に苦心の為に楽を換え得来たる。
「世俗の人は、心が満足することを楽しみとするので、かえって、その楽しみを求める心のために苦しみに引きこまれる。(これに反し、)道に達した人は、苦しみにうち勝つことを楽しみとするので、結局、苦しみのおかげで楽しみを手に入れる。」
菜根譚は、前集・後集に分かれていますが、後集は退隠閑居の楽しみを説いていて、こちらの方が教訓臭くなくて素直に耳に入ってきます。
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